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第一話「決意」

ー北海道札幌市 3月某日

私の名前は『ほのか』、今年大学を卒業し来月から東京での仕事が決まり、今は引越の準備をしています。


「こどもの頃、アンティークショップで買ってもらってから、ずっと一緒だった人形の『メリー』も古くなったし、もう人形って年齢でもないから捨てるか…ごめんね」


ー引越当日

引越の準備を済まし不要な物をゴミ捨て場へ持って行った後、荷物の運ぶため引越屋のトラックを外で待っていたが、やっぱりメリーの事が気になりゴミ捨て場に戻ったがすでにゴミは回収されていて、そこにはメリーの姿がなかった。私は少し悲しい気持ちになりながらもその場を後にし、引越屋のトラックに荷物を載せてもらった後、飛行機と電車で東京の新しい家へ向かった。


ーその晩、私の携帯へ非通知の電話が掛かったきた。

「誰だろ?」不信に思いながらも電話へ出ると小さい女の子と想われる声で…「私メリーさん、今ゴミ捨て場にいるの」と抑揚のない声でメリーと名乗った女の子はそう言った後、電話を一方的に切った。

しばらくした後、また非通知で電話が掛かってきた。

「私メリーさん、今『セイコーマート〇〇店』にいるの」メリーは再び抑揚のない声でそう言った後、電話を切った。

『セイコーマート』とは北海道を中心にしたコンビニであり、埼玉県や茨城県にも店舗はあり、道民にとっては切っても離せない存在、それが『セイコーマート』だと私は思っている。〇〇店とは、私が北海道に住んでいた時の家の近くにあった店舗で頻繁に利用していたお店である。

それから間もなく、先程まで同様にメリーから非通知で電話が掛かってきた。メリーでやっぱり抑揚のない声で「私メリーさん、今あなたの家の前にいるの」との事。私は戦慄した。なぜなら…


「メリー?」

「なに?」

「私、今日引越してその家にはいないのだけど…」

「嘘!? マジ? 今、何処におるんや?」

 メリーは関西弁で驚いた後、ほのかの場所を確認する。

「今、東京で来週から仕事だよ…それより、なんでメリーは関西弁なの?」

「実はうちな、京都の人形店で作られてん、そやから関西弁やねん。ほのかは、うちの外見がフランス人の女の子と思って、うちの事を『メリー』と名付けたみたいやけど、残念、生まれは京都、育ちは北海道や」

 先程まで抑揚のない声だったメリーだったが、関西弁なってから急に声に抑揚がつき、親しい友達と話をしているみたいな口調に対し、私は少し戸惑ってしまう。


「そうなんだ…」

「それより東京って、どうやって行ったらええんや?」

「私は、飛行機と電車で移動したよ、たぶん一般的に移動方法だと思うけど…」

「そないか…うち一人で外行った事がないから、ようわからへんなー」

 一人での行動に自信がないのだろう…メリーの声には抑揚が感じられなかった。

「ところで、メリーって携帯は持ってるの?」

「『けいたい』ってなんや?」

「『スマホ』っていって四角い電話の事だよ…私に電話してきてるのだから持ってるのでしょ?」

「おぉー! 『すまほ』は持っとるで、電話するのに必要やったから買ったわ」

「買えたんだ…買えた事もすごいけど、お金はどうしたの?」

「近くに親戚の人形がおったから、お金は立替てもらって、契約してもらったんや」

「そう…そんな人形もいるのね…」

「マネキンショップで働いているんや、ほのかも機会があったら行ったらどうや?」

 そんな店もあるんだ、どんな人が行くのだろ? 正直、内心怖いから「私は大丈夫だよ」と返事をする。

「そないか?」と、メリーは納得する。ここで、タイミングを逃して聞けなかった事を聞く。

「メリーって人形だよね?」恐る恐る質問する私に対しメリーは

「そないやで」と特に私の質問を疑問に感じていない様子。

「人形ってメリーみたいに話せたり動けるの?」

「そうやで、なに当たり前の事聞いてるんや」

 当たり前の事…? 当たり前の事なの? 困惑している私に言葉を続けるメリー。


「一昔前は、近所の家で電話を借りて、家に電話できてたんやけどなー…今じゃ、知らん人形は家に上げてくれへんし電話も貸してくれへん…ほんま世知辛い世の中になったもんやで」

「もしかして、それって都市伝説の『メリーさんの電話』の事?」

「そうやで、なんやほのか知ってたんかいな」

 あの都市伝説は本当だったんだ…いや、それより驚いたのは、何処でどうやって電話しているのか不思議だったけど、まさか、普通に他所で電話を借りていたなんて、なんて怖い話なんだろ。


「けど、最後の『私メリーさん、今あなたの後ろにいるの』の時は、どうやって電話してるの?」疑問に感じている事をメリーに質問する。

「そんなん簡単な事やで、近所の住民の協力を得て、時間指定して家に電話してもらった後にカセットテープで音声を流してもらってんや」それが、当たり前のように説明するメリー。

「ちなみに、家の中に入るために猫が勝手に部屋に入れるような扉を作ってるから、そこから入るんやで」

「もしかして、北海道の家にもその扉は作ってたの?」

「そうやで、そんなん当たり前やん」

「それも当たり前なんだ」と思いながらもメリーに次の質問をしてもみる。

「メリーはなんで私の所に来るの? もしかして捨てた事怒ってるの?」

「ちゃうちゃう、そりゃ怒ってないって言ったら嘘やけど、うち住む所がないか困ってるんや」

「そうなんだ…ごめんね」

「ええよええよ、うちも一回はこのメリーさんの電話ごっこ遊びしたかったんや、このごっこ遊びはな捨てられた人形のメリーさん以外はしたらあかん決まりなんや」

「へぇー、そんな決まりもあるんだ」ってあれはごっこ遊びだったんだ。

「そやから、ほのかの後ろを取れるように頑張るで」と意気込むメリー。

「そう頑張ってね…それと、どれくらいでこちらに来れそう?」

「うちな一文無しやからな、とりあえず『ふぇりー』っていう乗り物までは徒歩で移動する事にするわ」

「だいぶ距離あるよ…それにフェリーに乗るのもお金が掛かるよ…さっき話してた親戚の人形にお金は借りれないの?」

「あの親戚なうちの事ごっつやらしい目で見るからイヤやねん『すまほ』のお金を借りるのもイヤやったんやで」とメリーの嫌悪感を含む言い方。

「そうなんだ…人形も大変なんだね」

「とりあえず、バイトしながら徒歩で東京まで行くから待っててな」と友達と会う約束をするかのように楽しそうに話すメリーに対し私も嬉しくなりメリーと同じような気持ちになり「うん、待ってるね」と返事をする。

「ほな、おやみやで」

「ふふ『メリーさんの電話』か…怖い話かと思ったら、楽しい話だったんだ」

「私はこの後、あんな恐ろしい体験をするとは思いもしなかった…」

「ちょっとメリー、変なナレーションを入れるのやめてよ」

「あはは、ほな今度こそおやすみやで」

「おやすみ」と私は返事をした後、電話を切りベッドで休む事にする。


 第一話「決意」終わり

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