お姉様が大好きな妹と家族が大嫌いな姉
お姉様が大好きな妹と家族が大嫌いな姉
「お姉様!お久しぶりです!お元気でしたか!?」
「あら、エズメ。馴れ馴れしく話しかけないでくださいませ。というか、近寄らないでくださる?」
「そんな…っ!お姉様、やっぱりお爺様に洗脳されていますのね!可哀想なお姉様!私が助けて差し上げますわ!」
「…エレーヌ、パトリス、ナタン、なんとかしてくださいまし」
「言われなくても」
「あのさぁ、今俺とエリメーヌは婚約者とその友人同士で水入らずの時間を過ごしてんの。邪魔な妹は寄ってこないでくれない?」
「大体なんでエリメーヌが家にいた頃はあれだけ邪険にしておいて今更擦り寄ってくるわけ?邪魔なんだけど」
「なっ…私、お姉様を邪険になんて!」
「ええ、たしかに貴女はそうかも知れませんわね。でも、エリメーヌがご両親に邪険にされていても何もなさらなかったなら、同罪ですわ」
「そんな、私達は仲良し家族でしたわ!それをお爺様が引き裂いただけですわ!」
「引き裂いたねぇ…虐待を受けて心身ともにぼろぼろだったエリメーヌを保護しただけなのにね」
「これだからお花畑の方は嫌ですわ」
「なっ…なっ…!お姉様、なんとか言ってくださいまし!」
「やっぱりエレーヌとパトリスとナタンは私の唯一気が置けないお友達ですわ」
「お姉様!」
「さ、そろそろ空気も悪くなってきたし、帰ろうぜ」
「四人で二次会と行くかー」
「いいですわね!そうしましょう!」
「エズメの居ないところならどこでも喜んで」
はじめまして、ご機嫌よう。私、エリメーヌ・コンヴェルサシオンと申しますわ。公爵令嬢ですの。最初からお見苦しいところを見せてしまって申し訳ないですわ。
さっきからしつこいのは双子の妹のエズメ・コンヴェルサシオン。さっきもちょっと話に出たと思いますが、エズメは所謂愛玩子。私は搾取子ですわ。私は虐待を受け、エズメは可愛がられて育ちましたの。そしてエズメは、何故か私の虐待の事実を認めず、仲良し家族という理想を押し付けてきますの。…まったく、面倒な方。
でも、そんな私にも味方はいますわ。お爺様とエレーヌとパトリスとナタンですわ。お爺様は最愛の妻、お婆様にとてもよく似た私をとても可愛がってくださいますの。エレーヌとナタンは私とパトリスの友人。お二人は婚約者同士ですの。パトリスは私の婚約者ですわ。私を誰よりも愛して、尽くしてくれる自慢の婚約者ですわ。
まあ、妹とは一緒に暮らしてはいないので普段は害はないのですけれど、こういったパーティーの席ではどうしても…ね。困ったものですわ。
でもそれも今日で終わり。今日、私達は学園を卒業しましたの。明日からは婚約者のパトリス。パトリス・ド・ブルボンと結婚して、隣国へ嫁ぎますの。パトリスはこう見えても第二王子ですのよ。甲斐性のある、優しくてかっこいい、強くて素敵な婚約者ですわ。私、パトリスに嫁いだら絶対に幸せになりますわ。そうしてあたたかい家庭を築きたいんですの。エレーヌとナタンは元々隣国の方ですから、嫁いでからもずっと一緒ですわ。お爺様と会えなくなるのは寂しいですが、折にふれ会いに行くつもりですわ。
…妹の婚約者?私の元婚約者ですわ。ポールという、侯爵令息でしたわ。まあ、私がいながら容姿のまったく似ていない私の双子の妹にうつつを抜かして、子供をこさえてしまったので妹の婚約者に鞍替えしましたわ。ただ、お爺様経由で慰謝料請求をしてたっぷりとふんだくり、宮廷に仕えるという話も取り消させていただきましたけれども。ご実家からも勘当され、妹の婿に入ることが決まっていますわ。妹は今安定期に入っているみたいですけれど、正直性に奔放な妹のことですから本当にポール様の子かは謎ですわ。
妹は妊娠によって密かに通じていたこの国の王太子殿下に見捨てられて、それはそれは悲劇のヒロインを気取っているみたいですわ。元々色々な男性を食い散らかした自分が悪いんでしょうに。
まあそんなわけで、大嫌いな妹の零落れぶりを見れて、大嫌いな両親の慌てふためく姿を見れてスカッとしたところで隣国へ嫁ぎますわ。
ー…ざまぁみろ、ですわ。
嫌われてもめげないその根性はすごい