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異世界でスローライフを目指してたら魔王にされてた件。  作者: 中崎実


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春の学外実習(1)

 さて、遠足本番のわけですが。


「靴の確認してねー」


 全員に装備点検をさせた後、最後に靴のチェックしなおし。


 目的地は子供の足で二時間の、尾根上にあるちいさな広場。山林管理のために小屋があるだけで、特にそれ以外の開発はしてません。それだけ手も入っていない場所なので、実習目的地に選んだわけだけど。


 村のある盆地の近くに突き出した小さな山を登る所から、山道が始まる。低いところはそれなりに道も整ってたりするので、子供らも遊び半分になってたりする。

 稜線(りょうせん)目指して道を上っていくにつれて、山道もだんだん細くなっていき、周りの(やぶ)も深くなるけど。


「よそ見しない、足元も見て歩けよ」


 子供同士ではしゃぎながら歩けるほど、山道は安全じゃないからね。

 ここの一帯は間伐が終わり、それなりに明るく開けた場所ではあるけど、山道以外はやっぱり藪で足元は見えにくい。じゃれあってる子供らがうっかり踏み込んだ先に地面があるとは限らない、そんな斜面もところどころにある。


「このあたりは道のあるところに布で目印があるから、時々上も確認して歩くように」


 先生役のファルさんは歩きながら説明。

 目的地に着くまでの間は、主に山道の歩き方の復習だ。村の子供たちも山の上の方まで遊びに行くことはあんまり無いし、そもそも親が街の出身だったりすると親にも山を歩くノウハウは無いから、親が連れ出すこともない。

 こうやって学校の行事として山に連れていくことで、経験の少ない子にも知識を持ってもらう、というのが野外実習の目的の一つ。


「周りの風景はちゃんと見ておくんだよ。遠くの山の見え方も、確認してね」


 これはリィアン君。


「道に迷ったかどうかわからない時には、足を止めて、周りをよく見ること。山の形が違ってたりしたら、迷ったって分かるから」


 この世界でも詳細な地形図は軍事機密に入るので、村の詳細地形図の使用許可を出しているひとは限られている。村の周辺や農地のあたりはさすがに、精度の低い地図を住民に開放しているけどね。なんにしろ子供たちにはまだ、今いる場所の地形図を使わせてはやれない。外部との接触は少ないとはいえ、情報収集を企む外部勢力がいないわけじゃないし、子供たちがポロっと漏らす情報も人的諜報(ヒューミント)の対象にされている。


 村の安全を考えるなら、子供たちから漏れる情報も統制せざるをえないので、地図を渡すのはまだ無理だ。


 その代わりにこうやって、子供のうちから少しずつ、山の中での行動を教えていくわけですが。

 万がいち山の中で迷った時でも、小さい子は生きて救助を待てるように。大きい子なら、自力で下山までできるように。それが目標になってます。

 子供たちの親は、人間に追われ逃げる時に山中で身内を失っているひとも少なくない。あの時、山の中で行動できる能力があれば、と悔やんでいるひともいないわけじゃないから、せめて自分の子供たちにはサバイバル能力を身に付けさせたい、という希望も出てるんだよね。で、こうして教えてるわけですな。


 山登りのペース配分、間違いやすい獣道の見つけ方、沢筋への迷い込みの怖さ、先生役の二人がそんな話をしながら山道を登っていき、予定通りに小さな斜面に到着。

 尾根筋の下にあるなだらかな南向き斜面の隅っこに、小さな山小屋があるだけの場所です。


「ここに来るまでに、水場は確認したね。次は、荷物を置いておく場所を作るよ」


 仕事でここに来る人は山小屋を使うけど、今回は子供たちの実習を兼ねてます。食べ物の入った荷物を放置したら動物にやられてしまうので、まずは動物に荒らされないように小さなシェルターを作る。

 棟木代わりの長い棒一本と、それの片端を支える支柱二本を地面に刺して横倒しになった三角錐の形を作って、棟木に葉っぱの付いたままの枝を壁代わりに刺していくだけ。材料はそこらに落ちているものを使う。荷物だけ入れれば良いサイズなので、大人が寝泊まりできるサイズにはなっていない。


 子供たちがキャッキャしながら枝を集め、あまり器用じゃないなりに組み合わせて、案の定途中でぺしゃっと潰れると楽しそうなキャーっという声が響いている。


 そういう失敗はもちろん、織り込み済みです。

 今回は上手く作ることが目的じゃなくて、どうやったらシェルターを作れるかを覚えておいてもらうためだからね。

 何も持たない状態で山で迷ったとしても一晩か二晩は頑張れるように、不格好でもなんでもいいから雨風をしのげる方法を覚えてもらうのが、実習の目的だからねえ。


 わいわい言いながら小さなシェルターを作り上げたところで、昼ごはんの準備にしか使わない荷物を中に仕舞わせる。子供らが採取してる間は俺がここで見張り番を務めるから、実際に害が出る事は無いんだけどね。どうせ、すぐに食べられる食品は携行させているからシェルターには仕舞わせないし。


「じゃ、持ち物の再確認するよー」


 これから斜面での観察実習兼山菜取りに移る子供たちに、ファルさんが声をかけてる。


「ここから先は、絶対に一人にならないように。最初に決めた三人一組で動いてね」


 ペアじゃないのは一人が怪我をした時に、一人が付き添い、一人が救助を呼べるようにするためです。

 四人一組にするには、子供が少なかったというのもあるけどね。


「それじゃ魔王様、よろしくお願いします」


 俺はここの荷物の見張り番兼、魔法での見守り役です。


「行ってらっしゃい」


 あと、魔王なんて人はいませんからね?

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