春になったら出てくる奴。
畑の植え付けが終わると、やって来るのが奴らです。
冬を越えた今の時期、野生動物たちはすっかり痩せてるし、山には食べられるものもそう豊富にあるわけじゃない。だから畑に植え付けられた栄養豊富な芋を狙って、畑を掘り返す動物が出るのは毎度のことではあるんだけど、今年の被害はちょっと大きくなりました。
「堀外の畑に被害発生か」
上の村は俺が作った農園の他にも、耕作地が点在している。
で、そんな俺が管理してるわけじゃない場所だと、雷撃魔術柵が未設置だったりするんだよね。
「マダラオオキバイノシシの仔連れの雌個体?去年も出なかったっけ」
「おそらく、去年のものと同一個体です」
「ああ、捕獲できなかった奴」
日本でもイノシシは厄介者だったけど、ここでも害獣の一種です。
ここらには2種類のイノシシがいるんだけど、そのうち大人になってもウリボウの斑点が残ってる、大型のイノシシがまた厄介なんだよねえ。
「植え付けたばかりの芋が掘り返されたそうで。ジロルのところでは山際の畑の半分がやられたと」
「被害甚大だなあ」
「デンキサク設置も費用が掛かりますからなあ」
そう渋い顔をしたのは白牙族のダインさん。
ダインさんは『堀外』と呼ばれる点在耕作地を最初に作ったひとで、俺が大まかな整備だけ済ませた土地に入植してくれた、いわば村発展の祖になってくれたリーダーだ。今は堀外の取りまとめ役の一人でもあり、地域の猟友会の世話役もやってくれている。
「あれは運用費が意外に高いのが問題だよねえ」
実は魔石代が意外にかかるんだよね。
『堀外』に対しては俺は土地を貸してるだけの立場なので、費用を俺が全額出すわけにもいかない。堀外の自治にも関わる問題だから、俺がなんでもかんでも手を出してしまうと、ダインさんたちの面目にも関わるし。
「猟師には頼んでありますが、今年は罠だけじゃ間に合いませんな」
害獣対策の基本は日本と同じで、まず山の整備が必要。ひとの手が入った山に出てくる獣はそれほど多くないから、害獣が出てこない環境を作るのが第一。それから獣の通り道を割り出して罠の設置。というわけで山や畑の周囲の整備はすすめているんだけど、罠に引っかかってくれなきゃ捕獲できないからねえ。
今回のターゲットみたいな恐れ知らずの個体や、体格が良くて農民なんか脅威じゃないと思ってるような連中は、整備済みの環境を恐れることなく、罠にも引っかからずに畑の種芋を荒らしに出てきます。
「去年は捕獲できませんでしたから、今年こそは」
「うちからも人を出すよ」
猟友会のほかに本職の猟師がいるんだけど、人手のかかる巻き狩りには勢子が必要になる。
「あと、犬を何匹かお借りできないかと」
「いいよ」
うちのでっかいワンコも、時々協力しております。
犬だけじゃなくて、ハンドラー役も一緒に貸し出してるけど。
犬のリーダーになってくれるひとが一緒にいなければ、犬もちゃんと働けないからね。
魔王「春先だと、肉の質は良くないんだよねえ」





