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異世界でスローライフを目指してたら魔王にされてた件。  作者: 中崎実


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春の仕事も増殖中。

 いらん客が来てた間、俺は農作業をできなかったわけですが、俺以外のメンバーはいつも通り作業を始めててくれたわけで。

 おかげで畑の状態は整っていて、予定通りに種イモの植え付けが出来ます。


「機械使うんだ」


 小島がしげしげとのぞき込んでいるのは、植え付け用のアタッチメント。

 上部に取り付けた逆四角錘型のホッパーに種芋を入れて、ホッパーの下で円盤状受け皿に取り付けたカップに落とし込み、そのカップから車輪についたカムに連結させた穴掘りパイプの中に一つずつ入れていく仕組みだ。やや先細りの穴掘りパイプが土に突き刺さった後、土から抜けるタイミングで種芋が穴の中に残るようになってます。


 日本でも使われてる物を、俺のうろ覚えの記憶から再現したんだけど、完成させるのに結構手間を食いました。それでもまだ、北海道出身の同期の実家で見せてもらった機械ほどには、洗練されてないと思う。


 これももちろん、農業器具メーカーに製造委託しております。なにしろ俺一人で何でもかんでも作るわけにいかなかったからね。最初に試作品を作って使える事を確認したら、製造販売と、ついでに機器の改良も丸投げして、俺はロイヤルティだけ貰ってる状態。あ、あと改良した機械のモニタも引き受けてる。新型機具を優先的に使わせてもらってるとも言うけど。

 なお、今使ってる機械は一昨年正式に発売された新型です。山向こうの国では農業の機械化が始まってると言っても、毎年改良型が出るほどの需要は無いので。


「土地のわりに人手が少ないからね」


 手動の穴掘り棒なんか使ってたら終わりません。


「ここの人間との文明レベルの差が激しいよな」

「あっちは遅れてるからねえ」


 新しい技術を取り入れる工夫はしないんだよね。

 文化的なものなんだろうと思うけど、とにかく『昔ながらの』やり方に(こだわ)りたがる。というより、なにかを変えることを極端に嫌うと言った方が良いのかな。


「馬用の道具さえ受け入れてないんだから、自動化なんかまだまだ先だろうね」

「あいつらも馬に乗ってるよな?」

「馬車は見たことある?」

「あ、……無いわ」


 人間の国で荷運びに使われるのは、牛です。少なくとも牛に見える動物で、馬に見える動物とはちょっと首周りの構造が違うんだよね。

 日本のある世界だと、(くびき)が改良されるまで馬の運搬能力が上がらなかったという歴史があるけど、それはこちらでも同じ。もともと牛用の道具が先に作られたらしいんだけど、それが改良されてないもんだから、馬に同じ道具を使うと力が発揮できないという結果になっている。


「ちょっと改良しないと、馬の首が締まっちゃうんだよね」

「なにそれ馬鹿じゃね?」


 正直な感想ですね、はい。


「俺らは答えを知ってるから簡単に見えるけど、なかなか思いつかないんだろうなあ。他種族が改良した道具は理由なく嫌ってるから、受け入れないし」

「真似して作んないわけ?」

「宗教上の理由でやらないらしいよ」


 実際には神様が禁じてるわけでもないらしいんだけど、他種族の真似をするなどけしからんと思ってる()()がいて、神様を口実に技術の輸入を禁止してる状態なんだそうな。

 このへんの情報ソースは智女神さん。『べつに、禁止してません~』と気抜けするような口調で言ってくれました。管理者氏も特に禁止はしてないそうな。関心もないそうだけど。


「宗教かあ。でも神様が言ってないのにそれって、変じゃね?」

「俺らのところなんか、神様なんにも言わないのに色々宗教とルールがあるよ。神様が何も言ってなくても別にいいんじゃないか?」

「それもそうか」

「それに、変に人間至上主義に凝り固まった上に技術的にもすごかったら、やり難くて仕方ないよ」


 人間の国に技術力が無いからこそ、俺は色々助かってますんでね。


──────────


 種芋植え付け用アタッチメントは完全自動化までいってなくて、アタッチメントに座席が一つくっついてて、種芋投入用カップにうまく芋が入らなかったり、二つ以上入っちゃったりしたしたのを、座席に座ってる人が手作業で取り除いたり足したりする必要がある。

 トラクター一台につき必要なのは運転手一名、種芋管理に一名の計2名。それでも10日かからずに植え付けが全部終わるんで、十分役に立ってます。


 野菜の苗の植え付けは、もうちょっと先。今は苗の植え付け用アタッチメントに合わせて作った育苗トレイに種を植えて、温室で育苗中。


 本業はこんな感じで色々作業が入ってるわけなんで、、今の時期は邪魔されたくないんだよねえ。

 とはいえ、来ちゃった邪魔な人を追い返すのは重要な仕事のわけでして。


「捨てた御一行様は無事に帰着、と」


 盗みを企んでたので眠らせてから放り出した神官御一行、ちゃんと帰り付いたとの報告がありました。


「掠奪隊を組織するようです」

「まあやるだろうねー」


 それを見越して、眠らせた後の集団は、村に直接つながらない街道に捨ててきました。


 人間の国から『魔王城』に向かうルート、その途中で分岐して山のほうに行ってる道ですな。先日、鋭敏粘土(クイッククレイ)が崩れた川がある方の道になります。


「で、誘導はうまく行ってそうな感じ?」

「はい、掠奪目的地は魔王城とその近辺の村となっておりますので」

「部隊派遣もただじゃないだろうに」


 人間の国は去年の不作のせいで、物資の余剰が無い。必要な食料にすら事欠く現在、食糧調達も含めての略奪隊の編成なんだろうけど、こちらとしてはただひたすら迷惑なわけですからねえ。


「必要な費用の計算もあまり得意ではないようですね」

「赤字はもっと増やしてやらないとね」


 さて、どう対策しますかね。



魔王(しまだ)「余計な仕事ばっかり増やされるの、迷惑なんだよねー」

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