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異世界でスローライフを目指してたら魔王にされてた件。  作者: 中崎実


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雪解けはお仕事とともに。

 積もっていた雪が徐々に減っていき、沢の流れがはっきり見えるようになってくると、春の準備が忙しくなる。種()きに向けて種子の選定を始めたり、農機具の使用前点検をしたり、なんだかんだやる事が多い。


 そして農園内の見回りから上がってくる情報も増える。


 雪解けのはじまりと同時に、あっちの砂防(さぼう)堰堤(えんてい)が溢れたり、こっちで地滑りが起きたり、という報告が色々入るからねえ。特に川の下流に向かう方面、つまり人間の国に向いた方向は雪解けが早いから、そっち方面の仕事は先に増えてくる。


「矢ノ沢は異常なし、と」


 一昨年に小さな滝が崩れた矢ノ沢は、去年の護岸工事のおかげで異常なしとの事。

 いつもは小さな沢なんだけど、雪解け時期にはそれなりに増水するんだよね。だから確認しておく必要があったりする。


「ああ、やっぱりあそこは地滑りしたかあ」


 そして農園の中を通って人間の国に向かって流れる川沿いの、去年の冬の初めに確認に行った斜面が、やっぱり崩れたという報告がありました。


「人的被害は?」

「ございません」


 俺が見に行った時点で、地下水圧が上昇してるのは判ってたからねえ。いつ地滑りするか判らない要警戒地点ということで、巻き込まれないように細心の注意を払っていたそうな。


「斜面下にありました狩猟小屋には、すでに生存者がおりませんでしたので、地滑りによる死者はゼロと考えられます。なお崩れた土砂が川をせき止めておりましたが、先日、この堰止(せきとめ)()が自然決壊したようです」

「下流に影響は?」

「鉄砲水による河川氾濫が二か所。耕作地を含む村が3つ、被害を受けております」

「ありがとう」


 俺が面倒見なきゃいけない相手はあの斜面より下流にはいないので、被害を受けた村というのは人間の村です。情報だけは集めるけど、人間の国が鉄砲水で被害を出しても俺は手を出さないことにしてます。


 好意でどうにか出来る範囲を超えてるからね。

 俺が優先すべきはあくまでも農園内だから、住民に害をなす相手に対して、住民の分の資源を減らして手を差し伸べる事はしません。


「対岸の鋭敏粘土(クイッククレイ)はどうなった?」

「まだ動いていませんが、含水量を考えるとそろそろ危ないかと」


 地滑りの振動で動き出すかと思ったけど、そこは大丈夫だったらしい。

 まだ雪解けが始まったばかりだから、全然油断はできないけどね。


「地滑りあとの整備についてですが」


 そういいながら営繕のリカルスが広げた地図は、監視拠点と地滑り現場を含む一部のもの。

 正確な地形を描いた現代的な地図で、村内機密の扱いにしてるやつです。

 人間の国の地図とはもちろん、山向こうの国の地図とも正確さが全然違う。防災工事に必要な情報も集めてるから、うちの地図はどうしても詳しくなるんだよね。そうはいっても、こちらには航空写真も衛星写真もないから、どうしても精度が出し切れない点はあるかな。日本で手に入った地図よりは劣るけど、こればかりは仕方ないといったところ。


 なお人間の国の地図は距離の正確さなんか期待できない絵地図でしかなく、山向こうの国はそこそこ使える地図を作ってます。ここらは技術の差が隠しようもなく出るよね。


「予想よりも下流を含む地域で地滑りが発生しましたので、道路整備計画を少し拡張できるかと」


 雪の前にはもう少し上流での被害を想定していたから、下から辿(たど)り着いた人間が通りやすい道にならないように、幅も狭い登山道のような巡回路を予定してたんだよね。

 とはいえヒト二人がすれ違える程度の道でも、山の中の道としては割と整備されている方で、ここらではそれなりに使いようのある道になるんだけどね。


「こちらの、崖崩れで生じた崩落部をそのまま、障害に使えるかと考えました」

「あ、堀切(ほりきり)みたいになってるね」


 巡回路の整備で重要なのは、うちのスタッフが使いやすく、人間の国からは入って来にくいようにすること。正規の街道以外に設けるこうしたルートは、下から登って来ると突然あらわれる急斜面に遮られて、交通困難な場所に見えるように細工してたりもする。


 今回は新たな巡回路の設置を予定しているんだけど、当初考えていたよりも下流に天然の障害物が出現してくれたから、巡回範囲を広げてもよさそうな感じ。

 これ、対外的には領土拡張って呼ばれるんですけどね。まあどうせ人間の国は実効支配してない土地だから、うちで管理してしまおうというわけ。


 これで誰か居付いてたら問題になったんだけど、去年の秋以降に入り込んできた人間は全員、冬を越せずに死んでいる。耕さず、収穫せず、冬も越していない土地であれば、そこは占有したとみなされないのが人間の国のルールだから、あちらのルール上も人間の国の支配地には該当しない。

 まあバレたらそれなりにトラブルにはなるんだろうけど、実質的に管理下に置いてしまえば問題はない。さっさと整備しておくに限ります。


「森の整備は、来年以降になるな」


 ここでは、森は資源の宝庫だからね。確保しておいて悪い事は何もない。

 とはいえ開発を急ぐ必要はどこにもないので、ぼちぼちやりますかね。

魔王(しまだ)「うちはぼちぼち忙しくなりますねー」

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