表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でスローライフを目指してたら魔王にされてた件。  作者: 中崎実


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/95

冬の村のアルバイト。

 雪が積もる時期になれば、野外作業が出来ない代わりに、仕事が一つ増えるわけで。


「雪かき?」

「普段は土木作業してる人達がやるんだけどね」


 営繕と契約した作業員の冬場のお仕事です。

 主要な道路はトラクターの()に除雪ユニットを付けた除雪車で作業し、各宿舎の屋根は個別作業になります。ここは魔法が使えるから、転落しそうな場所は魔法併用で安全確保です。

 といっても、屋根からなだれ落ちる雪に対して注意の足りない奴もいるわけで。


「ド阿呆、そこにぼさっと突っ立ってんじゃねぇ!」


 怒鳴られてる奴が出るのは毎年の事です。


「軒から雪が降ってくるだろうがよ!けっこう飛ぶんだから軒下からつつけ!」


 軒で雪庇(せっぴ)になってた雪の塊は、軒下に隠れたところから突っついて落とさないといけないんだよね。でないと自分の上に降ってきます。身を守れるように、作業員には魔道具も含めて色々貸与してるんだけど、雪の塊を自分の上に落とさないのが事故らないための一番良い方法だからねえ。そりゃ親方も怒鳴ってでも指導するというもんです。

 腹に響く轟音とともに落ちる雪、は巻き込まれたら怪我するし、埋まったら死ねるので、雪が落ちそうな通り道に屋根を付けたりしてるけど。このへんは上越高田に行った時に見た、雁木(がんぎ)づくりを参考にしてたりする。


 初期は融雪・消雪設備も試したんだけどね。屋根裏の配管が凍り付いたり、屋根の上で氷塊が出来ただけだったりしたので、今はあるていどの雪が積もったら、滑って落ちる設計を採用しました。ああ、あとパイプを敷設(ふせつ)してみたら家に湿気がこもって大変だった、てのもあったか。スチームの全施設敷設前に試して正解でした。


「なぁ、あの落っこちた雪、片づけるの大変じゃね?」


 役場の表に盛大に落っこちた雪の山を見て、小島が微妙に顔を引きつらせてました。


「お、雪かき経験あるんだ?」

「年一回くらいだからあんま無いけど、十センチ以上積もるだけでも大変だし」

「ああ、東京あたりだと雪も重いもんな」


 べっちょり水を含んでる雪って、重いからねえ。


「すっげぇ量の雪だし、重労働になりそうなんだけど」

「楽じゃないけど、あれの運搬も仕事にすれば給料払えるからね」


 あと、浮遊(レビテーション)で重量軽減するための道具は貸し出してます。


「雪下ろしと雪かき、雪捨ては冬だけの契約仕事で入ってもらってるんだよ」

「その人ら、夏はどうしてんの?」

「土木作業や輸送の仕事してるね。今の時期はどうしても仕事が減っちゃうから、ここで働いてもらうんだよ」


 特に山向こうの国に輸送してる人達の場合、主要ルートのひとつが閉鎖になるから暇になる。雪捨ては短い距離を何度も往復するだけの仕事だけど、打診したら引き受けてくれることになったんで、俺の作業が減りました。

 俺は仕事を外注できるし、輸送業の人は村の中で仕事が出来る。儲けの点では夏ほど稼ぎ放題ってわけじゃないけど、出稼ぎに行く必要は無いのが良いらしい。


「俺もバイトした方が良いかな」


 なんか、小島がそわそわしてますが。


「健康診断の結果次第だねー」


 今のところ、痩せすぎなんでドクターストップかかってるんだよなあ。

 どう見てもまともに食ってなかったし。


 あと本人は顔に出してないけど、あちこち怪我したのが放置されてて、若いのに膝とか腰とか悪かったし。これはターク先生じゃなくて、診療所でも怪我の治療が得意なベセド先生が診てくれている。

 日本でも、金が無いから医者にかかれないって人はいる。小島の場合、親に仮病だと言われ続けて金も出して貰えず、高校の頃からあんまり病院に行ってなかったらしいです。


 ……報告を受けた時は、どれだけ放置(ネグレクト)されてたんだ、と俺もターク先生も頭が痛かったんだよねえ。ベセド先生の治療魔法でどうにかなりそうだから良かったけど、それでも治すのに半年以上かかりそうだと報告が来てる。


「バイトだめかー」

「肉体労働はまだ無理だろ、ベセド先生が良いって言わないと思うよ」

「あー、やっぱり?」

「怒られたかったら、聞いてみても良いけど」

「……やめとく。あのひと怒ると怖ぇし」


 ベセド先生も大声出したりはしないんだけど、言葉少なく怒るとすごい迫力あるんだよね。白牙族でもともと体格も良いから、たいていの奴は大人しく言う事を聞いてます。


「それに、ここでも作業補助バイトしてるだろ」


 こっちの文字の読み書きはまだまだだけど、物品のチェック作業なんかさせると手際よく正確なんで、補給部の連中から歓迎されてます。健康状態がまともになったら、そっちにリクルートされそうな予感がする。


「なんか優遇されすぎな気がしてさ」

「そうでもないぞ?」


 時給でバイト代出してるだけで、衣食住は支給品だけだからなあ。贅沢はさせてやっていない。


「金の心配しなくてもメシ食えるって、すげえ優遇されてると思うんだけど」

「うちは農園だからね、食べる心配はしなくていいよ」


 とりあえず、今はそれだけしか言わないことにした。

魔王(しまだ)「ちょっとだけスキーしに行った経験が役に立った気がする」


──────────

雁木づくりの街は、筆者も関山に行くときに高田で見ただけだったりしますが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ