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勇者(笑)歓迎は仕事のついで。

「第二波、偉そうな割に大したことないなー」


 勇者(笑)どもの録画を見ながら思わず言ったら、ランベスが頷いていた。


 今回、ランベスは一番後方で取りまとめる役。警備担当グループは耳長族・黒鱗族・赤牛族の3つがあるんだけど、状況によって臨機応変に立場を入れ替えているのがすごい。お互いの能力が判ってて信頼してなきゃ、こんな風に柔軟に動かないよね。


「第一波のほうが優秀と言えるでしょうな」

「正確に言うと、この魔術師と斥候だね」


 4人組のうち、妙におどおどしてる神官見習いと、他のメンバーに全く興味がありませんと言った雰囲気の剣士については、お世辞にも有能とは言えない。

 神官見習いは事あるごとにお付きの兵士に何か泣き言を言ってるし、剣士は他のメンバーに構わず進もうとして歩兵に(たしな)められている。

 残る二人、魔術師と斥候はお互いに情報交換しあいながら、しっかりカバーしあっているようだ。お付きの兵士とも距離をとっており、主導権を握られるような真似もしていない。

 そしてなにより、斥候君はこちらのカメラに気が付いた。


 それに引き換え、第二波のほうはオレサマ揃い。我の強い勇者と剣士が衝突し、魔法使いがそれを煽って、神官見習いが全員を見下すという構図になっている。騎兵が時々4人を掌握しようとしてるが、上手く行ってる様子なし。


「今後の予定としては、どんな感じ?」

「第二波については、仲間同士の仲たがいを狙います。勇者と剣士は手柄を争っているようですから」

「勇者君は暴走癖もあるみたいだし、うまく餌で釣っておびき出せると良いね」


 一人で突出して暴れて、他のメンバーにドヤって見せている。

 カメラは『根性いれて付いてこい』『遅れるなんて、おまえら努力がたんねーんだよ!』などの音声も拾ってるし、彼は根性論大好きな脳筋だと見た。

 というか……おまえら地球人なのになんでカメラに気が付かないんだ、とツッコミ入れたいです。

 あからさまに地球と縁がありそうなデザインにしたカメラをチラッと見せることで、脱走を促してもいるんだけどねえ。


「お任せください。なお神官見習いは戦闘能力が低いですから、こちらも分断の予定です」

「やり方は任せるよ」


 神殿の神官や神官見習いは、いわゆる浄化魔法の使い手だ。

 こちらには回復魔術というものもあるはずなんだが、神官見習いたちが怪我人の手当てに魔術を使っているところは見たことが無い。彼らはあまり意味のない浄化魔法をぶっ放してるだけの、謎の人々と化している。


 いてもいなくても役に立たないだろうし、さっさと分断して神殿のトラブルの種になってもらうのが良いんだろう。


 そして頃合いを見て帰還させれば良い。『魔王城』はあくまでも攻撃目標として用意したダミーだから、あそこに(こだわ)らなくても帰還させることはできるんだよね。俺がある程度接近してなきゃ、帰還陣が発動しないけど。


「第一波の二名が逃亡したら、その時は保護してやって」

「では、いつもの通りですね」

「うん。逃げ出さない奴は、そのままでいいや」


 ちゃっちゃと『魔王城』に行ってもらって、そのまま叩き返そう。一番恥ずかしい形で帰ってくれ。


「かしこまりました」


 ランベスがそう言ってくれたので、あとは任せればいいだろう。

 俺にこのへんの才能ないし。


 それに俺にとっては、肉にもならない害獣こと勇者(笑)よりも、あいつらが動くことで刺激される大型害獣(モンスター)が心配だったりする。


 これまでの侵入者の中には、むやみに野生動物を刺激して、大型害獣が暴れまわる事態を招いた奴もいるからね。そんな事態になって、農場にまで害獣が暴走してきたら困る。電気柵だって絶対防壁ってわけじゃないし。


「その点につきましては、肉以下の存在(ユーシャ)どもを誘導する方向で考えましょう。大型害獣の生息域に向かわせないようにいたします」

「よろしく」


 うちの警備担当グループは有能だった。

魔王「生きて帰せばいいんだよね、俺なにも間違ってないよ?」


次話は2019/10/04 22時頃に公開の予定です。

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