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異世界でスローライフを目指してたら魔王にされてた件。  作者: 中崎実


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本業も忙しい、かもしれない。

ちょっと短めです。

 帰路は俺だけじゃなく、運搬してる物品にも魔術的補強をかけておく。


 補強しとかないと、振動で笹が折れたりするんだよね。どんだけ派手にGがかかってるかって話なんだけど、計測したことないんで分かりません。

 ちゃっかりドラゴンはGが大きくなるような走り方が大好きだから、楽しんでます。一人で走るよりは誰かを乗せてやりたがるし、かといって身体強化が出来ない人を乗せるわけにもいかない。付き合える人が少ないから、どうしても全力疾走できる機会は減るんだよね。

 村に戻った時とは別ルートで拠点に戻ると、ターク先生は子供たちの診察を終えて、斎藤さんの診断書まで書き終えてました。


「戻ってすぐで済まないが、翻訳してくれないか」

「あ、はいはい」


 しまった、誰か翻訳要員を連れてくればよかった。と思ったけど、そういう仕事のできる佐奈ちゃんはバットグアノ採りに行ってるから、どのみち連れてこられないんでした。まあ仕方ない。

 というわけで慣れない用語ばかりの文書を翻訳。日本で医者が使う用語が良く判らないので、正確に書けてるかどうかはいつも不安なんだけどね。もっともターク先生に言わせると、ターク先生が使っている言葉と日本の医者が使ってる言葉が同じでも、意味するものが一緒かどうかは全く分からないから、どのみち事細かく説明が必要なんだとか。


 定義のすり合わせをしないといけないって事で、解説のために文章の量が増えてます。


 この解説が無かったらたぶん、俺も佐奈ちゃんもお手上げだったと思うんで、ちょうど良いけどね。専門用語らしき単語は、翔君の国語辞書を借りて該当しそうな日本語を探したけど、自信ないです。なお英語だと更に自信がなくなります。


 翻訳だけで2~3時間はかかってしまうので、その間に出来る準備は頼んでおく。拠点から離れた場所での場の設置と、斎藤さんの移送は開始してもらえば良いからね。

 拠点に管理者氏を呼び寄せると、万が一の情報漏れが心配なので、送還陣を設置する場所は森の中になります。

 管理者氏が周りを見られないような陣は組んでるけど、用心に越したことは無いからね。管理者氏の頭の出来では周りの情報を拾って場所を推定するのも難しいとは思うけど、あんなのでも一応は神様のわけだし。管理者氏から人間の国に情報が流れない、と思うのは難しい。


「こんなもんかな」


 翻訳終了すると、日が落ちかかってました。


 冬至が近いから日没も早いし、仕方がない。

 翻訳を終えた文書を封筒に突っ込んでから、ちゃっかりドラゴンを呼んで、ほどほどのスピードで送還陣設置場所に移動。

 俺が到着したときにはすでに、場の準備は整ってました。

 ちょっと開けたところの中央に、笹っぽい植物を四隅に立てて縄を巡らせた結界と、その前にある送還陣を描いた布、布の上に斎藤さん。毛布も掛けられた斎藤さんは静かに寝てるっぽいです。そして斎藤さんのそばにターク先生。


「お待たせしました、始めます」

「今のところ、安定しているよ」

「ありがとうございます」


 寝ている斎藤さんに掛けられてる毛布をまくると、袋に入れた何かが腹の上に置かれていた。


「なんですか、これ?」

「あちらとは薬品が異なるのだろう?一本持たせる事にしたよ。こちらで使ったものを知りたいだろうからね」


 あ、薬品のサンプルね。


「この分も俺に請求してください」


 安くは無いからね。診療所の予算から出させるのは忍びないです。


「ありがとう」


 袋の下に封筒を入れ、毛布を掛けなおす。

 俺以外の全員が管理者氏の視線を遮る別の結界の中に入ったのを確認。

 それからスタッフが用意してくれた水盤で手と口を清めて。


千別(ちわき)山守(やまもり)末裔(すえ)に、荒ぶる神をば()(はら)へと()さし(とお)御祖(みおや)の神、御照覧あれ」


 いつも通りに呼びかけを開始した。


「ちょっと来いや」


 そして管理者氏召喚。今は会話する気にもならないので、呼んだその場で重圧をかけて地面に押し付ける。

 ぐぉとかなんとか怪音がするけど、音がする限り生きてる証拠だから気にしない。

 そして地面にめり込みかけてる管理者氏の上に、もう一つの気配。あ、いらっしゃいましたね。この気配は直属上司(氏神さま)です。見えないようにしとくけど。


「拐かしし者、其の者は掃うべし、其の力は(ほど)かるるべし。解かるる力、界を(へだ)てし淵の、渡し船たるべし」


 これは管理者氏の力を俺に従わせるための宣言。

 高校生二人の送還が控えてる今回は、出来るだけ俺の力を節約したいので、丁寧に管理者氏の力を搾り取ります。


「我、山守の末裔たる島田優紀が祖神に伏して願い奉る。同胞(はらから)の子、名を斎藤拓海(たくみ)、異界より(つつが)なく還らせたまえ」


 山は異界とされてきた場所。そして氏神様は山の姫神だ。異界から人を追い払う事にもなれてらっしゃいます。


 管理者氏がまた何か声を上げ、管理者氏の上にいる方の存在感が増す。俺が掲げた両手に流れ込んでくる力はちょっと冷たく感じる、管理者氏のものだ。

 その力を凝集させ、俺の力を少し混ぜ込んで変質させたところに、ふわりと暖かな力が加わる。これは姫神様のお力。

 そして、変質した力で斎藤さんを覆い。


「我が名にて命ずる。()く、還せ」


 送還陣が光り、斎藤さんの姿が消えた。


「帰って良いぞ」


 管理者氏は適当に叩き返します。

 なんか直属上司がふわりと笑ったようだけど。俺が丁寧に頭を下げると、氏神様もくすくす笑ってから消えました。

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