表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/95

害獣対策は万全。

森の中の農場ですから。

 俺の普段の日課は、農作業と書類仕事がメインである。

 魔王城の操作はオプション。

 侵入者の排除は、農園やってれば害獣駆除があるから、それの延長かな。


 収穫が終わった畑でトラクター(ただし魔力で動く)を動かしながらそんな話をしていたら、


「勇者が害獣扱い……」


 と、(かける)君が微妙な顔になっていた。


 翔君は佐奈ちゃんの次に逃げてきた子で、今のところ日本に戻らないことを選んでいる保留組。

 未成年だったから、親御さんに通信をして了解を得ての残留だけど。

 どうも翔君、学校に良い思い出が無いみたいなんだよねえ。翔君の親御さんからは、落ち着くまでこちらに置いてやってほしいと言われてます。そろそろ受験生のはずなんだけど、良いのかね。


「害獣より悪い。イノシシやシカなら食えるけど、勇者は食えない」

「まさかの肉以下ですか」

「だってさあ、俺、自給自足のスローライフがしたかっただけなんだよ?」


 最初は一人で開拓を始めて、その後、成り行きで少数の耳長族を受け入れて、共同生活を始めただけだったんだよなあ。

 こんなに避難民が増えると思ってなかったんだよ。

 頭数が増えたから開拓する範囲を広げて、大人数になったからトラブルが無いように決まりを作って、なんてしてるうちに、ここまで大きくなっちゃっただけ。


「自給自足の農園主にとって、畑を荒らす奴は害獣だし、肉にもならん害獣は価値が無いの当たり前でしょ」


 電気柵や落とし穴を駆使して大型害獣(モンスター)からも農地を守っているんだが、厄介なのが人間。

 あいつら、容赦なく設備をぶっ壊すからね。


「電気柵……あれを電気柵と言いますか……」


 そこ、微妙な顔をしない。


「しょうがないでしょ、こっちには日本で売ってる電気柵みたいなの、ないんだし」


 ただし魔法技術は存在する(世界の管理者氏に教えてもらった)ので、それで代用してます。


「雷撃魔法のトラップと、魔術砲台で固めた防衛線が、電気柵替わり……」

「効率的だと思うけどなあ。日本みたいな法律無いから、飛び道具で仕掛けしといても怒られないし」

「きっちり堀もできてますよね、外側……」

「落とし穴作っておかないと、入って来ちゃうのがいるし」


 イノシシなら電気柵だけなんだけどね。そうもいかないワイルドな環境が整ってるので、守りは万全です。

 害獣死すべし、そしてお肉になって我々の腹を満たすが良い。うはははは。


「なんか庶民的な魔王様ですよね……」

「魔王様なんて人はいませんよ?」


 そんな話をしてたら、敷地を囲む土手に着地しようとするツヨアシトビウサギが見えた。

 あいつらジャンプ力あるから、堀をギリギリで飛び越せることもあるんだよね。

 畑をほじくり返すし野菜を食いつくすから、農家の敵なんですよ。ま、土手の外周に仕込んだ雷撃魔法でバチっとやられるけど。


「あ、落ちた」


 バチっとやられて落ちた先は当然、土手の外。群で動くウサギどもだから、3匹ほど落っこちるのが見えた。

 そして懲りずにジャンプした奴が見える。ふむん。


「夕食のローストにしよう。風弾(エアショット)浮遊(レビテーション)


 跳び上がった奴を撃ち落とし、堀に落ちた3匹といっしょにこちら側にもってくる。電気柵は直接接触しない限り何もしないし、飛び道具は俺の力を認識すれば攻撃してこないからね。

 あいつら4匹となるとけっこう重いから、土手のこちら側にいったん落とす。エネルギー効率の良くない浮遊(レビテーション)を使い続けたくないし。


「翔君、悪いけどトラクター頼める?俺はあれの血抜きしちゃうから」

「あ、はい」


 翔君に運転席を譲って、ウサギの回収に向かう。ちょっと距離もあるし畑の中を歩きたくないから、短距離転移(テレポート)

 大型犬くらいのサイズがあるウサギに軽量化の術をかけて、また短距離転移。

 水路のところに持って行って、ウサギの頸動脈を切って小川にドボンと付けたら、またトラクターに戻る。


「もう終わったんですか」

「うんにゃ、今は血抜きが終わるの待ってるだけ。流水で冷却しながらのほうが、肉が傷みにくくて良いからね」


 鹿やイノシシとちがって、半日あれば血抜きが終わるのもあいつらの良いところです。

 農作業が終わるころには、いい具合に血抜きも終了してました。


━━━━━━━━━━


 家に戻ったら庭先で超大型ウサギを解体して、毛皮はいつもの職人のところに持って行ってもらい、肉は調理当番に渡して、内臓は犬にやる。

 以前に生肉食べさせたせいで病気になった犬がいたので、うちの犬には茹でたものをやってます。

 外の犬用大鍋で茹で上がるのを待つ間に、そわそわ待ってる犬はモッフモフで可愛い。でかいけど。


「犬じゃなくてオオカミだと思うんですけど」

「似たようなもん」


 俺には逆らわないし、俺がダメだと言えば攻撃しない。利口なわんこの群だと思っておこうよ。

 ボス争いを挑んでくる奴を、きっちり倒す必要はあるけどね。


「狼じゃなくて、魔狼です」


 翔君に説明してるのは、犬の管理を手伝ってくれてる白牙族のデーンだ。


 白牙族はその名前の通り、下あごの犬歯が大きく成長するヒト型の種族。身長は男性で2mくらいになり、一見すると太って見えるけどかなり筋肉質な身体の持ち主だから、犬と取っ組み合っても勝ち目がある。

 彼らに限らず、こっちの諸種族はたいてい本当に大きいんだよなあ。


「なおさら危なくないですか」

「魔王様には絶対服従ですよ、この子たちは」

「だから魔王なんて名乗った覚えはないんですが」

「諦めてくださいよ」


 あっさりスルーされました。うぐぐ。


 火を通した内臓を出してやると、犬たちは冷めるのを待つ間にパタパタ尻尾を振っていた。

 『まて』がちゃんとできるうちの犬はやっぱり頭がいい。最高。


「よし、食べて良いぞ」


 程よく冷めたころに声をかけると、いっせいに餌に飛びついた。


 狩ったウサギの内臓だけではもちろん足りないので、他のエサも一緒に出してるけど、やっぱり新鮮な内蔵が好みのようだ。ガフガフと声をあげてたいへんワイルドですが、そこもまた可愛い。

 犬の相手をしたいところだけど、家の中でも仕事があるのであきらめた。

魔王「農場を荒らす奴は全部害獣、無問題」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ