オーパーツ?いえ、ただの私物です。
休憩中と言っても、全員が気を抜いて良い環境じゃないので、俺が警戒してるわけですが。
魔法も併用してるので、割とのんびりやってます。
「こっちの世界、銃もあるんですね……」
俺が持ってる銃をしげしげ見てた斎藤さんが、なんか残念そうに言った。
「え、これ俺が作っただけなんで。一般的じゃないですよ」
しかもこれ、見た目は小銃に似てるけど、中身は魔道銃です。そもそも弾が必要ありません。
似せた理由はもちろん、俺が取り回しやすいからなんだけどね。
「その服も、自作ですか?」
「いや、これは専門の人に頼みました。全部こっちで作ってますよ」
「そう、ですか……なんか、雰囲気が自衛隊の人に似てたから」
「あ~、この服のモデルが自衛隊の迷彩服ですから、そのせいかも?」
こちらの世界に持ち込んだ私物はさすがにもう着られないけど、型紙を取るのには十分ということで、縫製工場が複製してくれました。
さすがに迷彩柄じゃなくて、OD一色だけどね。
彼らにしてみたら、技術的にもいろいろ面白かったらしい。俺としては複製が出来ればそれで良かったんで、好きに分解して良いよと言ったんだけど、分解したものをちゃんと直して戻してくれました。
「それで、この後はどこに向かう予定だったんですか」
一応確認しておこう。
「目的地は、森の中で……キャンプできそうな場所があったから、まずそこに行こうと、思ってました」
あ、やっぱり。森の中で野営して、野獣に襲われて終わるパターンですこれ。
「そういう事なら、少し距離はありますがご案内できる場所がありますけど、どうします?」
「大翔君と結衣ちゃんが付いてこられて、安全な場所なら、お願いしたいところです」
「判りました。じゃ、休憩が終わったら移動しましょう」
「何日くらいかかりますか」
「あ、歩かせるつもりはないですよ。手配するんで、とりあえずスープ飲んでてください」
ここから歩いて拠点に向かうのは、現実的じゃない。子供二人は体力の限界だし、斎藤さんだって調子は良くない。小島を連れていくにも遠いし。
斎藤さんが用心ぶかくカップに口を付けたところで、俺は携帯用通信魔法板を起動。
「ゴールドより青リーダー、感あるか。どうぞ」
『青リーダーよりゴールド、感よし、どうぞ』
妨害される要素が無いから、実にクリアに聞こえます。
コードはゴールドが俺で、青リーダーが拠点にいるガーヴ。
「ゴールドより、こちらで回収対象4名に接触。移動準備にかかる。どうぞ」
『青リーダーよりゴールド、支援の竜馬3を送る、どうぞ』
「ゴールドより青リーダーへ、竜馬3による支援、了解。待機座標を送る。どうぞ」
座標は俺達が独自で作った地図で決めてる数値だから、万が一傍受されても大丈夫な代物だ。
ま、人間の国に傍受する技術無いんだけどね。用心はしておく方が良い。
『青リーダーよりゴールド、待機座標を確認した。30分で到着する、どうぞ』
「ゴールドより青リーダー、到着予定時刻は30分後、了解。受け入れ準備しておいてくれ、以上」
『青リーダーよりゴールド、受け入れ準備開始、了解しました。お気をつけて。通信終わり』
用が済んだので通信魔法板を片付けようとして、三人が目を丸くしているのに気が付いた。
「どうかしました?」
「スマホあるんですか!?」
大翔君、びっくりしてます。
「これ?スマホじゃなくて、ただの通信機だよ」
どっちかっていうと無線に近いよね。傍受される可能性があるし。
「スマホが使えるわけじゃ、ないんですね……」
なんかしょんぼりしちゃったが、すまぬ。あっちのスマホは当然使えないし、ただの通信機にスマホのような機能は持たせてません。
「こっちにアンテナ立ってないから、さすがにスマホは無理だねえ。家に帰ってから好きなだけ使えばいいんじゃないかな?」
「……え?」
「家に、帰れるんですか?」
「帰せるよ。というわけで、まずはここから頑張って移動しようか」
三人とも、しばらく何も言わなかった。
「帰れ、る……そっか……」
「ママに会える……?」
「今日すぐにとはいかないけど、準備が整ったら、帰せるよ。あ、もうちょっと水分とっておこうか」
温かいお茶を勧めておきましょうかね。
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耳長族が『冬の飲み物』と呼ぶ、白牙族が『森の恵み』と呼んでる針葉樹の葉で淹れたお茶はかなり酸っぱくて、子供むきじゃない。
というわけで砂糖を少し入れてあげたら、ものすごく喜んでました。
「砂糖だ!」
「うわ、久しぶりに見た」
「はい、どうぞ。ちょっと酸っぱいよ」
味からするとたぶん、ビタミンCかなんかなんだよね、これ。
これを飲んでると冬も歯ぐきから血が出ないそうだし。
俺たちとこちらの人たちが同じ物質を食べられる生き物なのが不思議なんだけど、ビタミンなんかも同じように効くようなんで、難しいことは置いといて、ものすごく助かってます。
「あの、砂糖って高いと聞いてるのですが」
斎藤さん、少し遠慮がちです。
「うちの農園で作ってるんで、気にしなくていいですよ」
「砂糖が作れるんですか……」
「うちは甘いものに困らないですねー」
「あの、お菓子とかもあるんですか?」
シェラカップを両手で持ったまま、結衣ちゃんが目を輝かせていた。
「あるよ。そろそろ新年だから、新年のお菓子も作ってるし。あとで用意しようか」
小中学生なんて、まだまだおやつもしっかり食べたい年だもんなあ。
とはいえこれだけ痩せちゃってると、いきなり普通サイズは食べさせられないし。あとでターク先生と相談です。
「っと、やっぱいるなあ」
警戒線に野獣が引っ掛かったので、そちらに向けて発砲。ギャン、と叫んで去っていったのは狼っぽい、魔力を感知すると逃げる肉食獣だった。
ペレーはこのへんに住んでないから、まだ良かったと言うべきなのかな。あいつらは簡単に逃げ出さないからめんどくさいんだよね。
「え、何かいるんですか」
「いますけど、気にしなくていいですよ」
この三人が慌てたって、どうにもならないからね。
魔王「見たことある服装してるほうが、安心できるからねー」





