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異世界でスローライフを目指してたら魔王にされてた件。  作者: 中崎実


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魔王様は農場主。

短め。

魔王とは名ばかりの農場主。

 幸いなことに、今回逃げ込んできた二人は性格にも問題はなく、割とここに馴染めそうな少年たちだった。


「今度お越しになった方々は紳士的で、よろしゅうございましたわ」


 このコメントはリーシャ嬢。


「あ~、うん、ひどいのいたもんね」


 俺としてはこれ以外に言いようがない。


 これまで助けた中には、性格に難のある人間もいたからね。人間以外の種族に対する差別意識丸出しの人もいたし、被害者であることを振りかざして特別扱いを求め続けた人なんかもいた。後者は悲劇のヒロイン気取りで、かわいそうな私のためにみんなが何でも聞き入れて当たり前、私に尽くして当たり前、てタイプ。自分の世界に浸ってる微妙な奴ともいうけど。


 さすがにああいうのは置いとけないので、療養も切り上げて早々に帰ってもらった。


 ここで暮らすなら、定住した難民のほうが優先順位は上です。

 攫われてきた人を元の世界に還す仕事はたしかに有るけど、彼らをどのタイミングで帰すかは俺に任されてるし。俺としては、ここ以外に行き場のない人たちに不愉快な思いをさせるくらいなら、帰れる場所がある人をさっさと帰すことにしてるんだよね。


「わたくしの故国の者と同類としか思えない方も、いらっしゃいましたものねえ」


 リーシャ嬢の出身国は『世界の管理人』氏が特に贔屓(ひいき)してるだけあって、まあいろいろとひどいからねえ。


「そういえばすっごいウエメセの人、いましたよね」

「いたねえ」


 滞在時間最短記録を作った彼は、たしか風呂に入れて着替えだけさせてからさっさと帰したんだった。

 いやね、風呂に入らせた時だけでもかなりひどかったんですよ。上から目線の命令口調で石鹸もっと持ってこいだの誰か俺の髪を洗えだの言い続けるし、給湯システムの説明に行った耳長族の女性に性器を手で洗えと要求し始めて、当然だけど断られたらタライを投げつけてみたり。

 自分より小柄な女性には高飛車な奴だと判断したので、途中から女性は白牙族のみ、それ以外の種族は男性で対応することにしたくらいだから。


 そして奴は置いといたら何をしでかすか判らなかったので、とっとと叩き返しました。

 いきなり性的サービスしろとか言い始める奴に、ろくなのはいないと思う。


「そういえばあの人、どうなったんでしょうね」

「帰ってから、やっぱりメンタルやられてたねえ」

「あ、あの人も観察してたんですか」

「そりゃあ、帰した後どうなるか見るのも俺の仕事だし」


 手出しはしないしけど、『世界の管理人』氏の評価につながるので結果は観察しています。

 確認するのも仕事のうちだから仕方ない。

 俺が確認する事は、管理人氏も了承してるし。


 管理人氏としてはメンタルやられて潰れる被害者を見せることで、俺にフォローする気を出させたいんだろうけどね。俺なりに基準を決めて送り返してるので、ルール通りに処理してるだけだから手は出しません。療養のための時間を自ら削るような真似をした人間に、それ以上手は貸さない。


「島田さん忙しいですよねー」


 うん、忙しいと思う。


「身勝手な奴に構ってる暇はないくらいには、忙しいかなあ。というわけで、お仕事の話しようか」

「かしこまりました。今期の輸出の件からでよろしゅうございますか?」


 リーシャ嬢、あいかわらず優秀でした。


 うちは基本的に農場なので、外に売るのは農作物。標高の高い所では畜産もやってるから、そこから乳製品も出している。

 佐奈ちゃんがいるのは、冷蔵で出荷できる果物の話をするため。

 冷蔵車も魔法で動くんだけどね、これのおかげでかなり収益が上がってます。ちなみにお客は人間の国以外です。

 人間の国はとにかくケチで、街道の整備すらろくにしてないからなあ。輸送車両の改修が必要になるから、彼らが買おうと言い出した価格ではとてもじゃないけどペイしない。論外です。

 今期の輸出で冷蔵車を導入してみた結果については、販売部門や財務部門からも意見が上がってきている。


農園(うち)の中は道路も問題ないか」

「ラーネ、エレガー、ドゥエンの三国も現状では通行に差し支えありません」

「エレガーの東地域は良く売れてるよね。案外遠いのに」

「住民に赤鱗族が多いせいでしょう。今回、最も大量に購入したのは赤鱗族でしたから」


 売りに出したのはリンゴっぽい果物なんだけどね。ちょっと酸っぱい小さめで固い品種が、恐竜っぽい種族に大うけしました。

 なお近縁種の黒鱗族や青鱗族にはそこまで受けなかった模様。


「定期的に売っていくのによさそうだね」

「あの品種は涼しい所じゃないと作れないから、うちの特産にできると思いますよー」


 佐奈ちゃんがへらっと言った。


「北部地域から仕入れたものよりも新鮮、という点が売れた理由の一つだそうですから」

「いけそうだね」

「よっしゃ~」


 佐奈ちゃんにはガッツポーズがあんまり似合いませんでした。

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