またやってきた要らん奴。
ええ、例によって例のごとく、酒のついでの馬鹿話がきっかけです。
「また侵入して来たって?」
これで24回目になる報告を受けて、俺は飲みかけていたお茶をそっとテーブルに下ろした。
「どうなさいます?」
いかにもお義理です、という雰囲気を隠しもせずに聞いてきたのは耳長族のトゥワンで、お茶のカップを下ろしもしなかった。
「どうもこうも、追っ払うしかなくないか?」
「それもそーですね」
「どこらへんで追い返しますか」
これは赤牛族のランベス。ちなみに赤牛とは彼の種族の守護神のことであって、本人はヒト型をしている。
「そうだなあ、こっちに入れないのは当然として、相手はどんな奴?」
「ユーシャと名乗ってるそうです」
ユーシャ……ああ、勇者かな?
「出身地、わかる?」
「あなたと同じ世界らしいですよ。あなたよりずっと若い、正直に言うと子供ですが、神殿が『召喚』したと」
「ああ、あいつら、また未成年誘拐やらかしたのな……」
まったくもって頭が痛い。
「救出するおつもりですか」
「まさか。逃げ込んでくれば保護するけどね、神殿の言うなりになって武器持って侵入してきたなら、敵だよ」
優先順位を間違えるつもりは無かった。
「まずは森で迷ってもらいますかね」
「では、まず私が出ますよ」
と、トゥワン。
「じゃ、よろしく頼むよ。『マサカリ岩』よりこちらには来させないでくれ」
「了解しました」
お茶を飲みほしてから、トゥワンは優雅な動きで部屋を出て行った。
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