表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/300

責19



「…おはようございます」

アコヤがやっていたように見よう見まねで言うのもこれで最後

眠そうに目を擦るオニキス

背中のクッションを調えて、上半身を起こしたのを確認

コーヒーカップを差し出す


「…昼過ぎにはマルコのところへ行く…おまえも一緒だ。そう伝えておけ」

「畏まりました」

味に拘りはあるはずだが…文句も言わず飲んでいる…

まあ残りの洗濯場にお願いした衣類も取りに行くし、

いや、カップを下げにいった時にアコヤに伝えればいいだろう



飲んでいる間に…

そう思って黒一色の室内着と白衣を用意しておく

講義の勉強と飯以外…

そして俺が使用人として動いている間も薬草の実験をずっとしている…この前買い物に行った際買った薬草のだ。

効能の確認と薬効を最大限引き出す方法を調べているらしい

呼ばれれば、その隣で自分が飲む用の薬湯を煎じさせられている間に…


今日2回飲めば薬湯は終わるのだろうか

丸薬が懐かしい…そして手間がかかることも身に染みて分かった

薬湯より断然手間も技術も要るらしい…薬湯ですら目方を計る…誤差だと思うもそれでも効能が変わる…

適当で良いだろうと

雑な性格が出て何度も材料を無駄にした


やっと出来上がった薬湯を差し出せば

仕上がりをひとなめして確認してから俺に飲ませる…

俺の手では一時間ほどかかるそれを…手慣れたオニキスがどれ程で作るのかは分からないが

隣で丸薬の試行錯誤に昨日からしているのを見れば…数分で終わるものではないことは分かった。


…これを今まで薬なんてと断って、

…嫌だと拒否をして

無理矢理飲ませても苦いだの嫌な顔が返ってくるだけなのに…

時間も労力も…材料も用意して俺のために作り続けて来たのかと


傷の薬だって手間だろうに…

実験の傍ら、合間を縫ってで足りなくなれば作り足しているのも…

左腕は殆ど隙間なく塗る…

凄まじい量を毎度用意している



良くできたものだ

…感謝してもしきれない



「…なに考えてる」

サイドテーブルに服を置いたまま呆然としてた様に見えたのだろう…

はっとして意識を戻し、横のオニキスに目を戻すとカップはもう空…

目も覚めたようだ


「すみません……あの、お下げします」

そう言って受け取ろうと手を伸ばすが、渡そうとしない様子にそう伝えるも…


「そこに直れ…」

伸ばした手を戻し、ベット脇に膝をつけば

目線がかち合う…

俯こうとすれば伸びてきた手で顔を上げさせられる



「そらそうとするな、でなに考えてたんだ?」

目を下げることもできず、見返したまま…

心まで見透かされているように思えて居心地が悪い



「っ…作る側の気持ちなんて…そこに込められた手間や想いなんて知らずに苦いだの嫌だの…手当てをさぼってきました。

ここ一週間作業を見てきて…今まで申し訳なかったと考えておりました」

喉仏が無駄に上下する

触れた指先でばれているだろうに茶化すような表情は見られない


「分かったならいい…もう少し自身を労れ、癒せ。

…最初は自発的でなくても良い…お前が自身を蔑ろにする度に俺らは傷つくんだぞ?

本当の意味で分かったのか?」


「……は…い」

「…はぁ…ったく、普段からこんくらい素直なら良いんだけどな」

溜め息を吐きながら

離れた手は頭におかれて髪をぐしゃぐしゃにされる

その重さと気持ちに頭が下がる



「で、昼飯までは管理するが…夕飯と明日は何を食べるつもりだ?」

「…あ…その…」

咄嗟に口を開くも言葉が出ない

…心地よかった(たねごろ)の重みが増す



油断大敵

文字通り気の緩んだところに差し込まれる(質問)

ビショップに言われた通り…食材が切れたことは既に把握しているらしい

給湯室…他の侍従の目は殆どなかった筈…

計算すれば分かることかとも思うが、本当にそこまでされているとは思わなかった

どう答えようかと考えるが、迷走する思考回路


「…携帯食料と薬草茶位しか残ってないんだろ?」

「…っ…それは…」


「それは?自愛すると今さっき聞いた気がするが、食事は?」

「……あるものを食べようかと思っていました」



「携帯食料だな?まあいい…マルコに言えばいえばか既決することだろうしな」

頭を横に小さく振れば力が籠る掌

押さえられるような感覚…止めが刺された


そんな不穏な言葉を吐きながらなにか考えがまとまったのだろう、頭の上の重みがなくなった



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ