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責17





…やっとその一連が終われば解放はされる

見よう見まねで淹れた紅茶や用意した菓子の食器の処理

リネンや着衣を洗濯場に運びお願いしてから

買った乾燥野菜と謎のトウモロコシ粉料理を作る…

不味いと言われながらも、禁足で使用人部屋から出られないビショップに三食分ずつ夜に運び続けた


塩と茸の出汁のみの味付け

…食べられはするが、肉も魚も入っていないそれを

バリエーションを増やそうと…からすのえんどうを入れようと思い付いて自室を数日ぶりに見に行けば変貌したそれ

…流石に捨てた

遠征練習の講義で一度作ったスープを真似て

完全に毎日料理

全く同じ食材…




約20食あまり…ずっと同じものが続く

ただ、何かを買いにいくにも買いに行く時間は無かったのだから仕方ない

嫌がらせかと言われながらも空になったコッヘルにまた作り持っていく

…そう空になるのだ。



傷を増やすなと言ったのにと

録に動かせない左腕

そんな俺が代わりに"主"に仕えるなど侍従の誇りがズタズタになったことだろうに

食べはするのだ。

決して美味しくもない、具も少ないものを毎食ずっと


監視されているとは言え

貴族としても見劣りしない食事を毎日提供される

録な使えもできない俺に作られたそれ


作り置いておいた瓶の中身も遂に無くなった

空の瓶

…新しく買いに行けはしない

せめてもう少し良いものをとも思うが学園内で買える様なものはなにもない

金がないからと…それをオニキスに四六時中従って時間がないと代わりの言い訳をする自分が何処かにいる


結局は保身だ

金が大事なのだ

ビショップに詫びたいと思いつつ

贅沢な食事も品も買おうとはしないのだ


捨て身が良いとは思わない

できる限りのことはしているとも一方で思うが

矛盾に満ちた思考と感情に僻僻とする


最後の夜…

いつの間にか使用人部屋に戻っていた棗の熊笹茶

残り少ないそれを持って振る舞う

不味いスープすらもない


不満足だろうに飲み干す侍従を見ながら

明日は殿下に返品される日だなと…これでオニキスの気は済んだかと

休日が終われば

あの奇異の目に晒された講義に行かないと行けない

殿下の見習いになった今期から噂され

良い感情を持たれていないことは知っていた


そしてそれが悪化したことも

侍従服姿を晒したことも


もう貴族としての未来は無いことはほぼ確定だ

自身としては元より無いに等しかったものが更に無くなっただけの話だが

周りはそうは見ない様だ

…コネを使ってまで殿下や子爵子息との関わりを持ちたいのかと、

使用人となってまで繋ぎ止める意地汚い奴だと言われた

選択講義の帰り…オニキスがいない隙を狙ってだ




"身の程を知れ"

言われなくたって知っている

"迷惑だと思わないのか"

俺がそれを一番感じている

"身を引け"

失敗した…そうすることが出来なかったのは俺の意思のせいだけじゃない



…おい


「おい」

「っ…はい」

「お前、何でこんなことをする」


「理由が必要ですか?」

思考に嵌まっていた意識を戻されれば何やら怒った様子


「昔のお前なら考えられない。俺に食事なんか作るなんて何か意図があるだろ」


横に置かれた…昨日持ってきたコッヘルはやはり空だ

なんだ、不味いものを食わせてと文句でも言うのかと思った

シェラカップをビショップから奪うように取り

コッヘルの中に入れて下げるために手に抱えた


「私が言ったところで信じないでしょう…それにもう持ってきません」


部屋から出ようと扉へ手をかける

もう用はない。寝て起きたら数時間で禁足も許されるだろう

存分に美味しいものでも自前で用意してくれ



「…食材が切れたか?お前、明日から何食べるつもりだ?」

「…貴方には関係ないこ「主に言うぞ」……それはご勘弁を」


出来れば今晩と明日の朝分は作るつもりだった

最後まで毎食は用意するつもりだったのだが…もう蓬とドクダミの乾燥させたものしかない


ビショップは…

本来失言などしなければ俺の世話をしていたはずだ。

そして反省室に居る筈の俺がここに居る


それならばそれはオニキスが許されたということを示唆する。

代わりに俺がオニキスの世話をしていることも、

殿下とオニキスがそれを許可した…

紛れもなくあの件は悪いものになっていないことは分かっている筈


俺に関しては

このオニキスに仕えること自体で懲罰の代替えで…

ならばこの状態は、

期間も1週間だと知っているはずだ

そしてそれも明日で終わる

俺の反省期間が終われば禁足も解けるのだろう

そう仮定すれば…計算すると何食分か足りない


つまり用意出来ないと勘づかれたのか



かけた手を離し

溜め息を吐いて振り返った




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