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責10






「早とちりするな…購入した食材は知っている。そして何を作ろうとしているのかも推察してる」


オリゼのために口を紡ごうとした

が…

何も情報はないのにと、

条件だけ受け取ろうなんてと言うような能面に背筋が強張った

白旗を上げたのは仕方ない、

オリゼ済まんな…




「なんだ情報もってるのか…で?」

「野菜と塩…それと瓶の購入。乾燥法について勉強していたことから乾燥野菜にしてスープにでもするんじゃないか?」


「…後何日後かには見習いの賃金も手には入るよ?」


圧力が消える…

なんでだと理解出来ない顔をする

その表情は紛れもなくオリゼのことを心配するもの…


この目まぐるしく変化する、

二面性はどうにかなら無いものか…

心臓に…精神に負担が大きすぎるだろうが


そんな思考を悟られることもなく、

考え込む…

はぁ、本当に仕方ない

条件には入っていないが情報提示してやろうじゃないか




「賃金は選択講義料に消える予定だそうだ…」

「…それでも所持金だってないはずじゃないよね?」


「俺らも問い詰めた…金はないって言って貴族向けの店では何も買わないからな」

「それで?」


「問い詰めて得られたのは、仕送りがなくなったってことだけだ。…賞金には手をつける気が無さそうだ」


「何かあったときにでも取っておくつもりか…変なところでしっかりしていると言うか、抜けていると言うか」



「そうだな…変なところでこだわるし…ああ、飲み物に対するこだわりもすごいよな?」


「そうだね…貴族的な意味合いでは全くないけれど…」


「でも街に出たとき何も買わなかったんだ

薬草茶の作り方を見ていたのは…そう言えば本当に飲む為に作るみたいだったな」





「それって…ハーブティーみたいなもの?」

「ハーブティーで例えるのもおかしいが…紅茶は使わない。ジャスミン…ハーブだけでいれる」

「香り付け目的ではなく…効能のみ?美味しいのかな…」



「物によっては…独特の香りも出るし苦いこともある。

薬湯のイメージに近い、実際磨り潰せば薬になるものもあるしな」


オリゼが読んでいた資料にかかれた野草を思い起こす


ヨモギは流石にやめてくれよ…

ドクダミは…まあ俺的には好みだが皇太子殿下の口に合うわけがない


興味を引かれているようす

万が一…いや無いと信じているが所望なんてしてくれるなよ?


庶民の中の庶民が飲む物を

次期国王が嗜んでいるなんて

そしてそれを勧めたのが俺なんて噂になったら…

考えたくもない



失礼しますとの声

目を向ければ

何か持って入ってきた様だ…



「…ねえ、アコヤ。朝給湯場でよく会うっていってたけど今日は何か飲んでた?」

「…熊笹茶なるものを頂きました」


パンにチキンソテー

コンソメスープか


…目の前にサーブされる料理を眺めて





「は?今なんて言った?」


反応が遅れること数秒

「熊笹茶、そう申し上げました…殿下、食後はいかがなさいますか」

軽く俺に会釈しながら答えるも

冷たい雰囲気

…何の会話をしていたんだと言わんばかりだ


俺だってしたくてした訳じゃない

そう目で訴えていれば



「そうだね…同じものを俺も飲んでみたい」

耳に飛び込んでくる最悪の文言


「…殿下」

諌めるように言葉を置く側仕えに

なんでだと顔を怪訝そうに歪める…


いや、なんでだと聞きたいのは此方だ

そんなものに興味を持ってくれるな…

この世の物ではないとでも表現して思い止まらせてくれ、

お前の主人に飲ませるなよ?



「本来は振る舞うような代物ではないと」

「…じゃあなんでお前に振る舞った?」


「さあ…私はオリゼではありませんから。

…ですがこれが今持っている中で一番の茶であるからだとは言っておりました。


…殿下、先日手に入れられた茶葉を試してはいかがですか?」



言いたくもない台詞だったのだろう

"一番の茶"であるなんて

それが…

けして貴族としては一番では確実にないだろうことは察しがつく

主人に提供するのは気が進まないと

興味を反らそうと提案する



方法としては間違っていない

だが甘い…

それでは興味は消えない

それどころか増している…

"オリゼ"が今持ちうる一番の茶等と言うのは判断ミスだ




「…用意出来るだろ」

「ですが…」

「アコヤ…自分だけ飲んで、主人には飲ませないのか?」




「…準備して参ります」


己が飲んで、

主人には飲ませない

そんなことは出来ないと理解している。

だからこそ…

言葉を飲み込んだのだろう


並べ終えて部屋から出ていく姿は

形無し…

どこかしょんぼりと肩を落として出ていく背中

可哀想に…


失言したんだ

嘘をつけないとはいえ…割愛することも出来た筈なのに




「…で、熊笹茶ってなんだ?」

「はぁ…」


普段はしない祈りを捧げて

料理に手を付ける

礼儀作法的には…

食事中に声をかけてくることはないだろうと

逃げた




「オニキス?」

「…」


「…二人しかいないし、無礼講で良いよね?」

「…殿下が宜しければ」


「勧めてないんだけどね、俺はまだ。

それも…ハーブティーを煽り飲んだ本人がそれを言うのもおかしな話だよね?

…で、なんなの?」



致命傷だ

チキンに差し込みかけたナイフが止まる

それもそうだ…

招かれた側の俺が先に料理に口をつけることは、

勧められもしないのに食べることは無礼千万



…そもそも殿下が俺に無礼を許している

それを理由にこの逃げは成立した。


だから礼儀作法を盾にこれ以上口を閉ざせはしなかった。

その矛盾を指摘されれば…

今さら此方から享受していた身として無礼講を否定できるわけもなく、諦めるしかなかったのだ





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