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…ああ

何でこんなにタオルケットでぬくぬくしているのに寒いのだろう

ふかふかのマットレスに寝そべっている筈なのに、

冷たいし固くて…

体が痛く感じるのは何故だろう…



そんなことを疑問に思ったとき…

目をしばたかせてみれば、

…ここ数日見慣れた風景が霞んだ視野に広がる


…ぬくぬくのベット

お気に入りの道具で満たした部屋

そんなものは目の前にはない


…ですよね

夢だって知ってましたよ

そう冷たい床に溢しながら…

感じるのは視線


そうか、人の気配で目が覚めたのか





『起きましたか?』


「…起きれもしないがな」


俺が身動ぎしたので気付いたのだろう…

そう言いながら近づいてくる衛兵に、体を上向きにしながら嫌味混じりに返せば


『体、起こしますよ』

と上から低い声が降ってくる

目を向ければなぜか不機嫌そうに眉間に皺を寄せた目で見られている…


「いや、そういう問題じゃないし、しなくて良い」

そう視線を振り切り目を背けるが

膝をつき、覗き込んでくる


『…殿下から世話をしろと命を受けています。

断られるとは困りましたね…水と食事も持ってきたので食べて頂こうかと思っていたのですが……』

「…必要ない」



『そう、釣れない事を仰らないください…』

「…っ、俺に手出しする…か。

丁寧な口調と行動が解離しているがいいのか?」


そう言いながら伸びてきた手が顎を掴み、顔を向けさせられる

抵抗出来ないことを良いことに

貴族子息な俺に手出しして手打ちにされたいのかと脅すも…

何の効果もない。

力なく振り切ろうと背け様とするが一層力を込められただ




『…申し遅れましたが私、本来は衛兵ではなく殿下の傍使えしています。以後お見知りおきを。

殿下からの伝言で[なんでも言うことを聞く]〕でしたか?

このようしてこう言えばあの天の邪鬼も言うことを聞くだろうと仰っていましたが…そうなのですか?』



視線を返され

目の奥、心の中まで覗かれるような目が…反らせずに合ったまま言われた台詞は最悪の物


「……その通りだ、好きにしろ」

その妙に圧力を込められた言葉にに

諦めが肝心だ…そう思い目を閉じた……



『…では失礼しますね』

そう言いながら顎から手を離し、俺の首を触る

首枷、後ろ手にされた手に触れ…足枷も次々と外して…持ち上げられる

壁際まで来たのか、背中に壁の感覚

…浮遊感が消え壁に寄りかかさせられた




俺を下ろしたあと遠退いた足音が再び近づいてくる

カチャカチャと食器の音がして目を開ければ

匙を持った手が…


『口を』

そう言いながら匙を口許に近づけてくるが


「自分で食べられる」

そんな恥ずかしいことさせて…いや、やられてたまるかと腕を持ち上げて匙を受け取ろうとする


痺れたような力がはいらない腕の動きを見たのだろうか

殆ど持ち上がらない腕に向けられた視線は憐れみか…




『そのようにはお見受けできませんが…』

そう言って再び差し出される匙に


「……世話をかける」

そうこぼして、口許に触れる匙を含んだ




苦手な粥と白湯を交互に含まされて一息ついたのを確認した後、口を拭われる。

続けて食器の片付けをする傍使えを暫くぼぅっと見たあと


「聞いて良いか?」


『私に、答えられることであれば何なりと』

そう聞けば、手を止めて答える






「…食事の世話もしろと殿下は指示されたのか?」


『ええ、指示はありました』


「…この生命維持の魔方陣は誰が描いた?」


『私が描きました』


「供給先の指定は殿下の指示か?」


『…ええ、そうです』


「…後ろ手等の拘束指示もか?」


『……、……指示通りそうさせていただきました』

間を開け、言いにくそうにそう答えた





「…わかった、ありがとう」

やはり飲み食い出来ない様に計られたのだ

そうやって気力と体力を削った後、介抱され食事をさせられて…

その上で何を命令されるのか…



堪えようと瞼を閉じるが溢れた涙が流れていく


『オリゼ様…』


「なんだ」


『頼まれていたバックパックのことですが、新しい部屋に移させる、とのことです。』


「っ…退学か?幽閉か?」

反射的に目をあげれば


『…いえ、そこまでは聞いていないのですが…移す際には私が運ばさせていただきますね』

片付けかけた食器に目を落としながら答える姿



「…」

まあ、あれだけの騒ぎを起こしたんだ…仕方ない

今は勘当されていなくても、

やはり…後から家から縁切りされる可能性もあるのだろうか…?


自身の着ている

くたくたになった礼服を眺めながら

避けていた考えをまとめる。


退学か縁切りなら、バックパックをもって野営して生きていく

幽閉か監禁なら…諦めるしかないなと





「…、そのときはよろしく頼む」

そう言って壁からずり落ちるようにして横になろうとすると

見かねた傍使えが手で支えてくる




「申し訳ないが、少し…寝させてくれ」

返答がわりか、支えた手がゆっくりと床に導く。


…そのまま意識を失うようにして眠りについた



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