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責2





礼を言って立ち上がる




魔力を注いで固定を解除してから

落とした上着を拾って着直す


床に…

敷かれた敷物に血が万が一にも落ちないようにと袖口を押さえるが、次第に赤く染まっていく

洗濯が大変になるなと…何処か呑気な考えが頭に浮かぶ





「…次、お願いします」


浄化魔方陣で片付けをしているアコヤに声をかける


「まだ続ける気ですか?」

もたないでしょう…と呆れる側仕えを眺めながらも

頭を下げて、お願いしますと重ねた


「…後悔しますよ」

「ありがとうございます」


頑なに態度を変えない俺を見て折れたのだろう…

少し待って居てくださいと何処かに消え、

戻ってきたその手には古びた錠前の束が握られていた





付いてきてくださいと言われるまま通路に出て

一階まで降りていく



…給湯室と反対側か

足を止めたのは

見たことのない扉…鍵で開かれた


明かりをとりながら進む…下っていく

石造りの階段

足音が反響する…


階段が終われば格子で仕切られた一室が

ぼんやりと暗闇から浮かび上がる




これが侍従の反省室ですよ…

本当にいいんですね?

振り返って尋ねられる


「はい…」

そう言いながらも既に決心は揺らいでいる…

気が変わる前に…

叫びだす前に…

こなすべき事をこなすだけだ




仕方がありませんね…

そう言うと錠前を差し込んで回し開ける…


キィ…

悲鳴のようだ…

叫ぶ心を代弁するような音と共に開かれたそれ…

逃げ出しそうになる足を進めて格子戸をくぐる



続いて入ってくるアコヤ

固まったまま動きを止めている俺の右手が取られる


枷か…冷たい感覚に目を向ければ上に延びた鎖

座らせられればピンと引っ張られる感覚


…これ、何日分だっけ

契約書の文言は

受け取ったときに見たきり詳しくは目を通していない


右手が終われば膝をつかされ、

更に己の体が枷に繋がれていく…

四肢が終わったのだろう、

それで去る気配もないアコヤ



…目を閉じろと最後に言われるまま閉じれば


覆われる視界

陣がかかれているのだろう…アコヤの魔力が目に感じられれば

開かなくなる瞼






本当によくない…

後悔するわ…


声もなく項垂れる様を見たのか

もう遅いですからね…溜め息混じりの声と

閉じられる音が聞こえる


離れていく足音

階段を上がる反響音がだんだん遠くなる




上の扉も閉められたのだろう

その音を最後に

反響する音が完全に途絶えた…







周りの暗闇に染まるように

塗り潰されるように

不安に駆られていく…



響く音と言えば


自分の呼吸音と嗚咽

他は鎖が鳴る音…


開けられた所で真っ暗だろうが

暗い…目も開けられない

何も見えない


左手は床に止められているだけましなんだろうけれど

…なんの慰めにもならない


じくり…痛む左腕と右手の傷口

負荷のかかった右肩の痺れが正気を保たせてくれる




…うつらつうらするも

すぐに目が覚める


この前の第八の方が寝れた分ましだった

空も光も微かにだが望めた

横にもなれた、

日当たりの良い場所迄行けないからと、

…鎖が短いなんて愚痴を言ったが…訂正する、取り消したい。


今は膝立ちの体勢から、

座り込むことも立ち上がることも出来ない

…殆ど動けないのだ



これが通常の侍従に対する処罰

国家反逆を疑われて、

監獄に入れられてもあそこは私的な殿下の邸宅

拘束するにしても甘い物だった

そう、

甘い物だったと今分かったのだ。



第八監獄の、あの時以上にはならないだろうと…

何処かで高を括っていた。

侮っていた…




が、勘違いも甚だしかった…


やめておけばよかった

逃げればよかった

格好なんてつけなければよかった

避けられるなら避けてしまえばよかった

早く…早く終わってくれ…


既に軋む胸







傷が痛い…


…オニキスに怒られるな

何処に居たんだとラピスも怒るだろう…


1週間の約束を破る…

今度こそ二人に見限られはしないだろうか



兄には知られたくない…

こんな姿、見られたくない

唯でさえ幻滅しているだろう…に





…アコヤは大丈夫だろうか

手間を掛けさせた

更に疲れた顔を隠しながらまた仕事を続けているのだろう




殿下は…


本当は分かっている

友人として扱っていたこと

何か裏があるのではと受け入れ切れなかったのは

受け入れて掌を返されたらと

自身を守るために兄と取引したのだろうと壁を常に作った


勘違いだと、

踏み込みすぎるなと自己防衛の警鐘がいつも鳴る

兄や周りに比べて何もない

そんな俺のどこを見て友人足り得ると判断したのだろうと


口添えされただけ

兄に利用価値があるだけ

その付属品として扱っているだけだと線を常に確認した





もし

もしも本当だとしても

才能もない、成長も悪い

そんな俺が並び立つわけにはいかない


努力したところで

身に付けられたのは平均値以下


もっと努力すればと努力した

身に付けられたのは平均値

もっともっと努力すればもしかしてと努力した

…何も変わらなかった

何も縮まらなかった


もう諦めよう

もう諦めてくれ


これ以上の期待は

ただの重荷なんだ

早く降ろしたい…


追加されていくその重みに

肩の痛みが重なっていく





それでもまだ

繋ぎ止めるなら

努力しろというなら

生きろと言うならそうする




解離していく心

犠牲にしよう…


無駄な努力

懸命に注ごう…


友人という名

背負おう…





考えたくもない思考が意思とは関係なく

勝手に進んでいった



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