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疲れた頭で考えていれば

どうやら少しは眠れたようだ…


ふらつく頭を起こしながら

侍従服に着替えて給湯室に向かう…


熊笹茶を流し込んでいれば予想通り入ってくる人影



「…アコヤさん」


「おはようございます、オリゼ」


振り返って見れば

昨日ビショップから聞かされた通りに、見たことのない疲れた顔…


「おはようございます…」

「…傷は大丈夫ですか?」


左腕を見ながら言われる

…もしや傷口が開いたことを気にしていたのか?




「後二日はオニキス…様の管理に任せる予定です」

「…そうですか」


「気にしているのならば無用です。

それと……一服、差し上げましょうか?」



ティーセットは持っていない

殿下が起きた様子でもない…

グラス1つを持ってはいるが…その他には茶葉も何も持っていない


水よりはましだろうと

一言言えば

またあの苦いやつか?とばかりに棗に視線を向ける


「この前の抹茶ではありませんよ…」




ご安心をと含めて言えば

一杯貰うとのこと


シェラカップでお湯を沸かし…

グラスを受け取って、粉を入れてお湯を注ぐ


「どうぞ…」

座っているアコヤに渡す

飲みかけの自分の分を飲み干し洗ってから確認すれば

まあまあ気に入ったようだ




「お口に合いましたか?」

「ええ…これ、なんですか?」


「熊笹です…本来なら差し上げるような品ではないのですが…」

「ではなぜ?」


「負担をかけていると聞いたもので…私が今持ちうる中で一番ましな茶葉です」

納得したのかわからないが

飲み干してはくれたようだ…一息つけたようだ


アコヤが部屋に戻るのを見て部屋に戻るが…

さて本題はこれから…




コンコン

返答の後アコヤの部屋に入る



「…先日の責を負います」

沙汰をお願いいたしますと立ったまま頭を下げて

付け加えれば

深い溜め息


ここ五日の殿下の様子は知らないが…確実に機嫌は損ねたままだ

多分アコヤの心労も跳ね上がっているだろう

溜め息は俺の十八番の筈なのに…



「…いいのですか?」

「それが交わした主従契約の条件であり、かつ本来の使用人としてのけじめの筈です」


主人の時間を奪い、

手間をかけさせるなんてあってはならないこと

その上激昂させるなんてもっての他だろう


首になっていないことの方が本来ならおかしいのだ

本で見た知識と貴族側として知りうる限り…



「言わねばうやむやにも出来たものを…」


きっと誤魔化せたのだろう…

友人ではないと啖呵を切ったのは本気ではない

その言葉から考えれば、

兄の取引だとしても今も友人の立場にはあるのだから…



いいですよ

準備が出来たと言うアコヤに頭を上げれば

携えた杖に固定魔方陣のかかれた机



「…お願いします」


一瞬怯むも、自身を叱咤して足を進める

上着を脱いで床に落とし、

左腕を乗せて魔力を注いで固定…

そのまま机の横に膝を落としてそう言えば、



「何回分になるか分かっているのですか…」

「…100程でしょうか?」


厳しいものになると、

数回で済みはしないのだと言葉にするアコヤ…

分かっている、

それ相応の…回数位考えてここに来た。

責を乞うたのだからと、

震えそうになる声を抑えながら返答する



「そうですね…95が妥当でしょうね」


ではいきますよ…と、

分かっているならば良いと言うように…

杖が振り上げられるのを視界の端に確認した。




殿下が振り上げた高さではない…

それでも確実に、

絶え間無く腕に加えられていく痛みに

固く口を閉じる…



よく回数まで覚えてられるな…と、

前回庇って貰った回数とほぼ同じ…これはまだ終わりそうもない

途中からは痛みに耐えるだけで、

声を我慢するだけで精一杯…

既に何回済んだのかもわからないのだ



容赦はない、

終わったかと思えばそれは腕を再固定する為に手を止められただけ

…そう、

何度か向きを変えながら打たれ続けた

その度に打ち据える場所がどんどんなくなっていく


終わって見れば

肌が赤くなっている…

避けられた自身の家紋と左肩からの傷以外すべてが血に滲み、

みみず腫が呪いのように広がっていた



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