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買い物




香辛料…

量り売りしてるみたいだ

声をかけようとすれば通りすぎた店の前で足を止めている二人


「…面白いね」

「これ、オリゼ好きそうだな」


戻って二人が見ているものを見る

なに?

見れば透かし彫りの簪

中々見ない趣向の彫り…

店主が和の先住民族の柄だと売り込みにくる



「いいね…」

1つの簪に目が止まる

止めどなく説明を続ける店主によれば

梟と魚をモチーフにした柄が組合わさってるらしい


「これ1つくれ」

「な…せがんだわけじゃない!」


「…誕生日だろ」

「お礼は謎の薬草茶でいいよ?あれ気になってたんだよね」

二人して財布から小銭をだして店主に渡す


「毎度あり!」

にっこりと営業スマイルで対応する

店主から差し出されるそれを受けとる



「ありがとう…」

長くなった髪を掬い、簪で纏めあげる


「どういたしまして」

「似合うな…買って良かったなラピス」


「そうだね…ひさしぶりに嬉しそうにしてるし」

「くくくっ、言えてる!」

大笑いするオニキスに目を細めるラピス



「…大事にする」

照れ隠しに背を向けて香辛料屋に入る



胡椒にカルダモン、レモングラス…様々な香辛料が並ぶ

塩は…

有った


少しでいい

1ルース払い50g程を受けとる


「買えた?」

「ああ…」


「後はなんだった?」

「紙と野菜…出来れば牛乳を少し」

追い付いてきた二人に答えれば


「紙問屋ならこの先にあったよ?」

「わかった、行く」

塩をポケットに入れながら

先導するラピスについていく





軒先をくぐれば独特の匂い

様々な紙が並ぶ

目に入る高級紙から記帳用、色紙…封筒や厚紙まで…

選り取りみどりだ


角に目を止めれば

規格外品まであるが…高い

店の奥まで進んでいくと、ひっそりと雑紙の並ぶ棚を見つけた


一束50ルースか…

量もあるし節約すれば少しは持つかな…

それを手にとって店主に最後の1カラットを渡す

お釣りを貰って紙束を風呂敷に包む


終わったと合図すれば

「ねえ、革製品屋によってみていい?」

「いいぞ…仕事の参考か?」

「うん、試作品作ろうかと思って」


思わず遠い目をしかけるが

確認するように投げ掛けられたラピスの目線に頷いて同意する





「なあ…オニキス、なんか話し込んでるけど意味わかる?」

「いや、全くわからん…伸縮性だの個体差がなんちゃら言ってるが…」

「…だよね」

「…友人ながら怖いよな」


話し込んでいる相手は店主だろうか…?

革の専門的な用語なのか、

良く分からない会話を繰り広げるラピスに

少し離れた場所でオニキスを顔を見合わせる




「…結構話し込んでいるな」

「…オニキス、さっきの薬問屋でのお前もおんなじだったぞ」

「…いや、あそこまでじゃない」


此方も此方で雑談を…

話し込んでいると

否定するオニキスの背後にラピスが…

そう、近づいてくるのが肩越しに見える



俺知らない…

肩に手を置かれて固まるオニキスを生け贄に

迷うことなく身を翻す…

一足先に店を出て難を逃れた



あ、目の前に八百屋


丁度良い、

週末の

野菜なにかいいのあるかな…

二人のことを頭からすっかり忘れて足を進める


新鮮な葉物と果実

店先のそれを傍目に店に入る


ん?

根菜…蕪に人参…

あ、不揃いを理由に安価で売られているのがある…

割れたり歪だったり小さすぎたりする詰め合わせ



これにしよう

一皿とって紙袋に詰めてもらう

これだけ入って5ルース

安い…後で全部乾燥させて保存しよう





店を出れば

すっきりしたとばかりのラピス


そして

俺に対してニヒルに笑うオニキス…

失念してた…

紙袋を抱えながら買い忘れたとでも言って戻ろ…

「よくも裏切ってくれたな?」


「いや、フォローいれたし?」

ねえ?ラピスとばかりに助けを求めるが


「そのフォローって、俺の方がヤバイ会話してたって言うやつか?」

あ……詰んだ


「…俺、空瓶買いに行き…ぐっ」

どちらかをフォローすればどちらかを貶すことに…

逃げるが勝ちとばかりに方向転換して進もうとするも

ローブのフードを捕まれて後ろに引かれる


「…いや、そういうつもりじゃ?」

顔だけ振り返って

弁解してみるも効果は薄い様だ


さっきの爽やかな笑みは何処にいったんだ?


別人だったか?とまで思うその表情に

…顔が引き吊っていくのが自分でもわかった





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