講義10
今日の1限は剣術の講義…
そう言えばサバイバル術は剣の練習も含まれるらしい…
傷が治ったらやるそうな
…やだなあ食べ物関連だけだと思ったのに
基礎講義で習ってるから大丈夫だよな?
なんて言われた上に
あんな強面…いや普通の表情なんだろうけど
そんな教授に否なんて言えなかった…
まあ、今日は見学するけど…
腕治ってないし、サボれるからいいやなんて…
気楽でいいと思いながらも
早めに練習場に向かった
ラピスと別れて、オニキスと練習場で開始まで待つ
手ぶらは俺だけ
他は装飾過多な剣ばかり持っている
オニキスのはシンプルだな…
銀細工の中心にオニキスの石が散らばって配色されている
最低限だ
こういうのがいいよな…
去年は竹刀で練習したから…
まあ、財力や家のアピールもあるんだろうけど…初めてみる装飾だらけの剣には疲弊する
教授が漸く来たようだ…
見学の旨を伝えるが…却下された
倉庫に連れられて雑多に刺さっている沢山の練習剣
好きなのを選んでいいらしい…
選んだら来いと授業を始めに取り残された
軽いのがいいな…
鞘から引き抜いて手にとっていくも
無駄に厚いし、扱いにくそうな長いものばかり
せめて小回りの…
ん?
薄暗い奥の床
ふと見れば後ろに落ちている一振りに気付く
…埃を被ったそれを手に取る
鞘はない…
剥き出しの刀身は鈍い光沢をはなつ…
埃を袖で拭い取れば
表れる蔦のような紋様…
軽い…
手に馴染む柄
気に入った…これでいいか…
治りかけの右手に携えて
皆の集まる方に向かう
剣を持っているのを一瞥
選んだのを確認したのだろう教授に指を指される
…悪友が待ち構えている
二人一組か…
構えと型の復習らしい
ぐるぐる巻きの左手はそのままに
仕方なく対峙してこなす…
そこまで。
という声に礼をして終われば
不満げなオニキス
…下手なの知ってるだろう?
それに片手で打ち込みしたって重くなるはずないんだから
そう心の中で愚痴った
一旦剣を部屋に置いてから講義棟に向かう
礼儀作法の講義に言語学…
散々に終わる
…苦手も苦手な講義だ
終わった…漸く昼飯
意図的に改竄されるメニュー
今日はなんだろな
…うん
揚げ物は却下ですか…
オニオンスープにオムライス…
まあ、これでも充分好きな部類のメニュー
デザートは言うまでもなく割愛される
それともう1つ言えば
デミグラスソースじゃなくてトマトソースなのが不満
まあ美味しいけど…
たまにはいいけど…
目の前でフィッシュ&チップスを食べる二人…
揚げ物がそろそろ食べたい
デザートも食べたい
コーヒーも飲みたい
目で訴えるも素知らぬ顔で会話を続ける二人
食べ終わり、差し出される丸薬も済ませれば
「行こうか」
「そうだな」
頃合いを見計らっていたのか
立ち上がって部屋に向かうのを追う
オニキスが部屋についてくる
もう馴れた…
オニキスの入室許可でビショップが薬箱を持って入ってくる
ぐるぐる巻きから解放された…
着替えてくると一旦出ていったのを確認して
よれたシャツに腕を通し、ローブを羽織る
風呂敷と小銭入れをポケットに入れれば完了
まだ時間がかかるな…
礼儀作法の資料を見ながら復習
夜会や茶会のマナーを見ながら、必要ないだろうなと思う
当主になる予定は皆無
令嬢なら結婚相手探しに出るんだろうけど…
つまらないそれを見ていれば
二人がそろう
…
「行くか…」
豪華なベットに座るラピスと入ってきたオニキスに言う
寮監の控室で外出届けを書いて
商店街まで歩いてきた…
「で、何買いに行くんだ?」
「空瓶、牛乳に塩と野菜…後は雑紙」
「…オリゼ、それ何に使うの?」
「…」
「どうせバレるぞ?」
簡素な上着にシャツを着崩しても様になる友人
「…休日用の食材だ。それと雑紙は選択講義と部屋で使う」
「お金ないって言ってたっけ…まあ外れまで行くことも殆どないから楽しみではあるね」
「確かに、帰省の時に通る程度だ」
この前入った雑貨屋を通りすぎて直ぐ
町並みが変わる
雑多な商人向けの問屋街…
革製品に香辛料…武器屋に古着屋
見ているだけでも気分が晴れてくるのだった




