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講義5





影が落ちる

それに視線を上げれば背後で茶をしばいていた筈の奴等が…


「…なんだ?」

そう、隣には俺の手元を覗き込んでくる二人




「オリゼ…お前薬草なんて興味あったのか?」

「オニキス、これなんなの?」


「まあ…簡単に手に入る薬草…まあ雑草だな」

「ふうん?野草茶…これ美味しいの?」


「…いや庶民が薬効目的でたまに飲むくらいじゃないか?」


医療の手が届きにくい僻地の地域、

その一部で民間療法として行われていると記憶している。

まあ、

効果はあくまでも気休め程度だが…と、そう続けるオニキス





「…」


どうしたとばかりの目を向けられるが…

薬に興味などないだろうにと、

そう思われているような気もする。


気負うことなく一瞥して直ぐに理解したのだろうオニキスに

そりゃ…お前にとっては初歩なんだろうな…

名前も用途も分かるか…と納得する


が、俺の目的は嗜好品として飲むためで薬効等無くても構わない…

そう考えている事と訂正などここで言えば、

それはそれで面倒なことになる…





放置しよう…

そう心の内で判断し、

何も答えもせずトウモロコシ粉の資料に目を落とす



パンに…トルティーヤ…


いやこれは駄目だ

全部材料として小麦がいる



なにかないか…

…ん?

これなら2日もつな

牛乳と塩があれば出来ると書いてある。

牛乳なら……少し買うくらいならなんとかなるだろう

ポレンタ…謎の食べ物だ


まあ…最悪粉をそのまま練って焼けばいい

日持ちもするし…

お湯に浸せば食べられるらしい


それと…と、

次の資料を捲ろうとすれば手で止められる




「…オニキス」

邪魔をするなと言えば、

思案顔…


「お前…まさかそれ実践するつもりじゃないだろうな?」


「ただの選択講義の予習だけど?」


察したであろう俺の思惑に計画…

何か言いたげであるが…

それでも知らぬ存ぜぬ、だ

何の事だとさっぱり分からない振りをしながら答える




「ラピス…どうせ基礎講義の後は暇だろ?

今まで通り部屋に遊びに来ようじゃないか、一歩出れば体面気にして録に話せないしな?」

「そうだね、オニキス」


溜め息…それに続いてオニキスが言った、

その言葉に厭な予感がして振り返る…


予想的中…

厭な予感は事実起こっていた。




俺の知っている光景は何処にもない、

そう…跡形もなくなっている


…ベットまわりは血の後もない

危ない木の断片も箇所も削られて直されている

座面にマットレスが敷かれ、

チベット織りの才色豊かな敷物が上から掛けられて…

更にその上にはクッションに膝掛け、

そしてこれまた無かった筈のテーブル、机上にはお茶と菓子が並ぶ…


…万全の態勢になっている

本気で部屋に遊びに来る気だ…

何もないなら長居しにくいと思っていたがその前提を勝手に崩しやがった!

明日からもきっとこの部屋に乗り込み駄弁りに来る

そして、

快適な空間に設えて長居できるように…

そうなった木枠だけだったベッドの場所で確実に居座るだろう




はあ…物音がしたのはこれか…

万全の寛ぎセットだ…この家具類、いつまで置いておくつもりだろう…かと、

思わず頭を抱えた…


やりすぎだろ、おまえら


確かに部屋に来た友人をもてなしていない俺側に非はある

俺は学園に侍従を伴させて来ていないし、

自ら気心知れた奴等に茶や菓子を用意しする気も更々起きない。

そもそも、

そんな物に当てる金は無い…

だから、勝手に自前で用意するのは構わないとは思ってた

…思ってはいたのだが、

これは限度を知らなすぎるだろうが…




「ちっ…約束通り一週間…は指示にしたがうし、

遊びに来ようがなんだろうが、それも医者どもの回診だと思ってやる」


部屋の状態を見て閉口しかかったのを


これで文句ないだろ…と

この傍若無人振りを許可してやると含ませて、

投げやりにオニキスに向かって言う



都合が悪いのだ

どうせこの部屋でやるつもりだった…

実験。

カネをかけずに食糧を採取、加工出来るようか手始めに試してみたかったのだから。

洗濯物を干しまくった上に

保存…野草が入った瓶やら缶やらが机に並んでいれば目につくだろう…


本気で毎日来るつもりだ…

こいつらの視界に入ることは避けようがない

回診は理由の1つに過ぎないようだな




「一週間"は"…って、やけに棘がある言い方をするな?

言っとくけどな、オリゼ…此処に載っている野草には摂り過ぎれば毒になるもんだってあるんだぞ」


溜め息を吐きながら資料を奪われる…

読んでいくオニキス

溜め息をつきたいのはこちらの方だ



「…教授に一応は聞くんだよな?」


気がすんだのか返してくるが…

食べる前か?実際に作ってみる前か?


そりゃ…

多分上手くいかなければ…分からなければ聞くだろうけど

味見して変でなければ構わないだろう?




そんなことを考えていれば

はっきりしない俺に呆れ半分の御様子だ…


「これとこれ…書いてないが味見程度にしろ」


忠告に従って…

机の上に置かれた資料の内容、

返答代わりに開かれていた頁に載るその名前を…指差された薬草名を紙の端に書き写す




…破り、机の前の壁に貼れば

今度はラピスがそれを凝視する…


「…オニキス、これ組み合わせによれば俺の仕事でも使う薬になるよ?」

「は?そうなのか?」



「…そうだね、尋問の時に役立つかなあ…?」

「ああ、あれか。確かに効能的に転用できるか…」





「…」


物騒な会話を続ける悪友ども…

その内容に冷や汗が背中を伝っていく。


ちゃんと教授から聞いてから飲もう…そう心に決めて、

基礎講義のものと一緒に散らばった資料をバックに詰める



「…まあ、飲んでも俺らがなんとかするけどな」

「何とかするついでに、聞きたい話もすんなり聞けそうだし良いんじゃない?」


お前いいこと言うな、それは調度いい…

そう悪どく笑いながらオニキスが言えば


褒めてくれて構わないよ?なんて気楽に答えるラピス

その顔もオニキス同様、

黒い物であったのは言うまでもない…




「…」

もうなにも言うまいと

使用人部屋に入って浴衣と羽織を引っ掛ける

シャツはそのままだが…仕方ない


左を引き抜いた形でも、羽織で隠れるし…

そういった点で和装って便利なんだと気づく。

普通…

そんな実用性を考えることも実感する機会もないだろうが…




やはり使用人部屋から部屋に戻っても、

まだ物騒な会話を続けている悪友ども…

流石に一言物申したい。

…そろそろ帰れ、と




明日も早いんだ

来なければ朝飯置いていくぞと言って二人を追い出そうとすれば…


…効果覿面


すんなり出ていった…

どんだけ飯一緒に食いたいんだよお前ら…

各々の部屋に向かって歩き出した背中を見て、

そんなことを思いながら見送り、

扉を閉めて鍵をかけた



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