悪友5
ラピスか…
オニキスについていけばテーブルで待っていたのはラピス
重いバックを降ろして席につく
「…お待たせしました」
皿を見て一言
「…どうしたの、それ」
ですよね…取ってきた本人が一番にそれを思ってますが…
「…気分です」
明らかに違うでしょ?
言い直せとばかりに首を傾げ…
聞き間違いかな?といい笑顔になる友人
「…指示がありました、それに従ったまでです」
卓上の角砂糖を摘まみながら答える
糖分…糖分…
二つ入れてレモンも浮かべる
食べている間に少し抽出されるだろう…
意思に反した皿の上の物を
淡々と片付けていく
冷たいレモンティーに手を出そうとすれば
もう少し待てと制される
…喉、渇いたんだけどな
殆んど一匙ずつで直ぐに食べ終わったのに…
甘くしたそれが一番飲みたかったんだけどと手を戻した
待っていれば
食べ終わる二人
もういいぞと言われ口をつける
もう一つ砂糖をいれれば良かったかな…そう考えながら飲む
「で、どうしたの?」
「…かなり甘い方だぞ、そもそもそんなんで足りるわけないだろ」
今度はオニキスに聞く
コーヒーを飲みながら何ももう乗っていない皿を一瞥
「んー?食事管理するつもり?」
そんな様子にラピスが質問を重ねる…
いいな…
ミルクティーか
アッサムのいい香りだ…俺もホットが良かったのに
なんでアイスなんだよと
ラピスの手元をついつい見る
「一週間はな…そのくらいは従えるだろ?」
向けられた言葉に疑問符は付いているようで付いていない
随意に…とだけ小さく答えれば
満足したのか
「ホットの方が胃に優しいんじゃないの?」
丸薬と水を出してくるオニキスに
ラピスがごもっともな質問を投げ掛ける
「熱い紅茶にレモンを入れたら折角の成分が壊れる…
本当なら果物そのままがいいんだ…野菜だって肉だってもっと摂るべきだろ」
そう言いながら更に目の前に進められた丸薬
…飲みたくないんだけど
一人対峙する
「…ふうん、因みに完全に管理するとどうなるの?」
大豆に肉乳製品
野菜に果物……
つらつらと出てくるその品数の多さ
主食ばかり食べる俺
コース料理で出されない限りあまり普段は食べない…
パンとか米とか麺の方が優先
炭水化物は美味しいのだ。
「だろ?…これでも相当容赦してやってるんだ」
顔をしかめながら丸薬を睨めつけている俺
こちらを見たのだろう…
まだ済んでいないのかと
溜め息を漏らすのが聞こえる
「…オリゼ」
「なんでしょうか…」
「早く飲め、講義に出たいなら飲め」
譲歩はここまでだと明白に示された…
一思いに飲み下す
…迫り来る嗚咽
喉に残る違和感
舌に貼り付いた水で流しきれない苦味
…これ、一週間続くのか?
無理なんだけど…
涙目になりつつ、立ち上がる二人を見る
「…ああ、逃げたら部屋から1歩も出す気はないからな」
「…」
こういう察しの良いところは要らない…
何とかして免れる方法は無いだろうか…
自棄食いもしたいし、
休日の見習い業務は当分楽になりそうだし…
朝食い溜めしとかなくても……
1日位、
倦怠感で食堂に向かうのも億劫
食べるのは好きだが…面倒なときは飯など、たまには割愛だってしたい。
食べたい時に好きなものを好きなだけどか食いだって…
満腹になれば
ギリギリまで布団にくるまりながらぬくぬくもふもふしたいのだ
…
「本当にやるからな?」
「…承知しました」
不満げにしていたのが、
間が空いた事や俺の表情からわかったのだろう
…承知などしたくない
振り返って顔を向けてくる…そんな無体な事を言うオニキスの顔は
俺に否定の選択肢を与えてはくれなかった…
…
そう、
憂鬱な気分のまま、
再び寮に戻るオニキスとは逆に講義棟に向かった




