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悪友2





「…」



「…今回の件だって周りが助ける方向に動かなかったら、すんなり手を下させて自身のことをきっと諦めてたんだ。

…元々そういう自傷とか自棄の兆候はあっただろ?

それを殿下は重く受け止めた…危惧したんだろうな」



「…そうだね」



黙り込んだ俺に言葉を重ねる

そう…

そこまで…


人の気も知らないで…な

気持ち良さそうに毛布にくるまっている姿に

ぼそりとオニキスが付け加えるように呟いた言葉は重く悲しみが多分に含まれていた







静かになった部屋に

失礼します…

そう遠慮がちに入ってきたルーク


各々紅茶を受け取って

スコーンを摘まみながら胃を満たす





「明日講義の行く前にここに寄る、それまでここに留めておいて欲しい」



「…オニキスらしくないね、休ませるとか言うと思ってた」



「…この前の講義…全部出席してた」


「え…遅刻しないで?」



「ああ…始まるまでは寝てたけどな、机で」


頭を振って嘘ではないと、事実を告げれば

信じられないとばかりに聞き返してくるラピスに苦笑する

俺だってびっくりした



近頃は…

入学当初とはうってかわって講義もサボりぎみだった。

年度末になる頃には

朝は特に気だるいと言っては布団から出てこない事が多くなった

実習こそ無理矢理脅しに脅して出席させたが…

それは自発的なものでは決して無かった。


「…殿下に迷惑かけないようにと講義に出ているのなら、休めと言っても多分言うこと聞かない」


「…そう」


「曲がりなりにもあの頃のオリゼを見たみたいで…嬉しかった」


「組が俺も一緒だったら良かったのに…」

見たかったとラピスが呟くのを見て苦笑する




「そうだな…」


前みたいに愚直に頑張って…

兄に追い付くんだと…ラクーア卿に恩返しするんだと

何処か暗い陰を見せつつ、これなら俺だって出来るかもしれないって目をキラキラさせながら講義に出てたあのオリゼに




そう…


魔力量の検査を受けるまでは…

才能がないって、これじゃ本当に出涸らしだって溢したあの顔は今でも覚えている


「…あの絶望した顔は、…見てられなかったな」

同じことを思い出しているだろう表情のラピスを見て

つい言葉に出してしまう


「言わない様にしようって決めたじゃない…」


「悪い…でもそれでも必死にもがいて苦しんで結局抜け殻みたいになったんだぞ?それを使用人にされたんだ…

殿下の対面を考えるなら…意思に反してでもこいつならやる。

喉元に刃を突き立てられて強制されてるようなものだろ?」



悔しそうに顔を歪めるのを見ながらも言葉を続ける



「…無理するってことだよね?」


「ああ…多分あれ以上にな」

その結果、最悪どうなるか…

毛布に頬擦りしながらむにゃむにゃと寝返りを打っている姿からは想像できないし…したくない

舌に描かれた魔方陣が止めるだろうが…死ねない代わりに何が犠牲になるかなんて分かりきったことだ


壊れる

今度こそ壊れる





「でも、休んで欲しいね…明日くらいは

矛盾してるかな?」


「してるが、してない。

休ませないのは…わかるだろ?」


「うん…無理矢理ギアをかけたオリゼを今、

傷を理由に制止させれば自己嫌悪と諸々で崩れそうってことでしょ?」


「ああ…」


そしてその危うい均衡を今、危うくすることは…崩すことは絶対にしない

もう少し安定してからでないと…明日無理矢理に休ませて引き金が引かれれば…

それならば、

明日の講義に出席させた方が安心なのだ…



冷め切った紅茶を飲んでルークに下げさせるラピスを見て

重い体を起こして立ち上がる



話しに区切りはついた

…明日また来ると、

朝食を食べて講義棟までは一緒に行こうと約束して部屋に戻った





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