回収8
呆然としている俺を余所にに二人が話始める
「…なあ、オリゼって結構バカだよな?」
「だね、あんな感情剥き出しの殿下見たことないよね」
「他人のことは凄く分かってたりするのにな…かなり普段は抜けてるけど」
「ふふっ…、たまに凄く鋭いよね…なんだかんだ俺たちのことも察してくれてたりするしね」
「それな…にしてもどう見ても友人だろ、あれ」
「そうだよね…なんでそれを察せないのかなあ?」
「契約うんぬん言ってたが…絶対拗らせてるだけだろ?」
「殿下もなかなかの強情っぽいし…まあ楽しめそうだからいいけど」
「…性格悪いぞ?」
「だって、少しは灸を据えてもいいんじゃない?」
呆れたオニキスの返答に
笑い返すラピス
「…そう言えばお前、さっき家業のスイッチ入っただろ」
「…オリゼが悪いんだよ…それにオニキスだって仕事モードだったでしょ?自制はしていたようだったけど…」
「そうでもしないと言うこと聞かないだろ?」
「…同じ言葉を返すよ?」
仕方ないと合致した意見に
互いに苦笑しながらオリゼに目をやる
「そういやこいつも休ませないと…流石に働かせ過ぎた」
「確かに…ルークもう下がっていいよ?」
同調するラピスに続いて
オニキスも目で下がれとでも指示したのだろう…
背後の二つの足音が遠ざかっていく
扉の閉まる音
…
「…オリゼ」
互い侍従が退室していったのをしっかりと確認したのか
長い間が空いた後、聞こえた台詞…
オニキスが隣に来いと動きで伝えてくる
「いや、いい…もう帰る」
一応は会話を耳にしてはいた…
頭を横に振りながら答える
「オリゼ」
…っ
立ち上がって出ていこう…
と思ったが…オニキスの声に隣に渋々座る
「嫌だ」
一応は悪いと思って従ったが…
間髪入れず差し出される薬
いつの間にこんなの用意したんだと
その茶色い液体を見れば独特の匂い…思わず顔を背ける
「…反省してないのか…そうか…そんなに飲ませて欲しいなら飲ませてやる」
右肩を掴み寄せられたかと思えば
引き上げられ、倒され…
それを認知する間もなく、
組んだ足の上に仰向けにさせられていた…
早業だ…
1拍後
嗜めるように…軽く置かれた手に力を抜けば
容易にソファーに沈む体
…
「珍しく飲むね…」
「まあ、ここまでやって飲まなかったらなあ…」
「普段は絶対飲まないよね」
「そもそも丸薬ですら録に飲まないだろ…」
会話を続ける二人
忘れてた…
起き上がろうにも右手に力が入らないことも
自由の効かない左腕も
知っている
泣かずともどれだけ心配してくれてるかなんて。
神経使って縫いきってくれたことも
少し温くなったこれも…
その疲れきった後で煎じたのであろうことも…
まあ…
一番俺の体の状態をわかってて、
飲むしかないその状況と強制的に匙を進めながら何勝手に言ってくれてるんだとも思うが…
…
…
飲みきれば
やはり眠気が来る…
だから嫌だったんだ
「…オニキス、睡眠成分いれただろ」
「当たり前だ」
「眠気が…来るような姿勢にさせただろ…」
「…当たり前だ」
「ラ…ピス…、香を焚いただろ…」
「勿論」
「…なん…で、侍従退…かせた」
「素直になれないでしょ?」
「だな」
「…余計な…事しやがっ…て」
さっきからあの甘ったるい匂いはしてたんだ
…嫌いなのを知っていて焚きやがった
使用人部屋に戻りにくいだろうと気遣って…
普段は焚かない香まで用意して…
…飲む様に仕向けて
ついに落ちる瞼
ウイスキーも手伝って疲れが押し寄せてくる…
強制的に訪れる暗幕の向こう
お腹すいたねーって
夕飯どうするか…って会話が遠くなりながらも聞こえた




