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回収4




「…なんで傷口が開いた?」


「…」

いや、俺に聞かれても知らないよ…

てか答えられないしと、目を泳がせれば


「…ああ、発言出来ないのか」

答えを待つ気もなくなったとばかりにハサミを侍従から受けとるオニキス…




…なにする気だ?

なあ…

そんな俺に構いもせず指示を出すオニキス


その指示で…ビショップまでもが固定してくる

首と肩を押さえ、左腕を押さえたルークに加えて…

二人がかりだ


「…」

嫌だ…

…絶対良くないことするだろうと動こうとすれば



「間違っても抵抗するな、刃先が狂う…

…まあ、無駄に痛い思いをしたいならすればいい」


分かったな?

と目を覗き込んでくるオニキスに力が抜ける…


「……あまりしたくはないが…抜糸して縫い直すからな」

重ねて言われた台詞



「…」

いや、理解できないんですけど?

したくもないし…と思って見れば




「お前が痛がるだろうと思って、本当に最低限の針数にしたんだ…

こんなことになるなら最初からきっちり数ミリ毎に縫っとけばよかった…」


「…」

いや、そんなに大きな傷だったのか?

自分からは見えないから気にしてなかったけど…

包帯だって滲まないように少し広めに巻いてただけだと思ってたんだけど…

てかきっちり数ミリ毎ってなに?




「…い"っ」

俺の目線を無視して

なにも言わずパチンと切った音とすぐに来る痛み

少し触るだけで、動かされるだけでも痛みが走る…


三回分それに耐えた


ぐったりとした俺を見たのか手を止めるオニキス



「…こいつの部屋にウィスキーがあるはずだ、誰か持ってこい」


消毒用の液体を侍従から受け取りながらもそう言うオニキス

…なんのためのウィスキーだ?

消毒ならそれでいいんじゃないのか?



「アコヤお前が行け…オリゼ、どこにある?」

目をやれば殿下が頭を抱えている


デスヨネ…

手隙の侍従は居ませんもんね…

他にはここに俺を押さえて動けない二人しかいないし…





「…自室です…鍵は上着の内ポケットです…」


使用人部屋に置いてくればよかった。

もう使わないからと消毒した後そのまま自室に置いてくるんじゃなかった…

脱がされた自身の侍従服から鍵を取り出すアコヤ

…それを眺めながら思う




なにもないのはいい…

自室から使用人部屋に物を移動したのはアコヤのはずだ

ただ、手付かずのトウモロコシ粉が放置された物干し部屋ではマズイ



言うならば、使用人部屋だってマズイ

携帯食料のゴミとどうにもならなくなった包帯を捨てたままだ


どちらも…見つかったらただじゃすまない

怪我は養生と栄養、消毒の3つが大事なんだと言っていた気がする。万が一にもアコヤからオニキスにそれが伝われば…




せめて自室だけにしてくれ…

使用人部屋にも録な食事をしていなかった形跡だけでもバレなければ…誤魔化しようもある


「殿下、申し訳ないがオリゼの使用人部屋も見てくるようにお願いしていいか?」



詰んだ

アコヤならアコヤの部屋から入れる…

通路側の扉の鍵がなかろうと…



「…それはいいが…なぜだ?」


「養生も消毒も自己管理するよう任せた…一応信用はしてな。

でも右傷でこんなに悪化するのは…栄養が足りてない…二日間録に食ってなかったはずだ」


「…」


なんでこういうときだけ察しがいいんだろうな?

普段はそこまでじゃないじゃないか…

いろんな意味でもうげっそりだよ…





「筈だって…使用人部屋まで改めなくても聞けばいいんじゃないのか?」


殿下が言えば…


すぐに首を横に振る悪友ども…




「……なんとなく察した。アコヤ、使用人とは言え個室を暴くのは…あまり良いとは言えんが…」

「…畏まりました」



当事者をおいて…事態が急展開していく

煮るなり焼くなりすればいいさと

そう言って部屋を出ていくアコヤを見送った



そう、

どうすることも…

この場にいる誰一人として俺が静止を掛けることは出来ないのだから




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