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付け




置いた椀

片付けをしてしまおう…




淡々と手を進める

粉のついたふくさも揉んで叩く

すぐやらないとなかなか落ちないからな…抹茶の色は


炉も炭もない

鉄瓶もないから片付けは楽だ


シェラカップに水を満たす…後で飲む用だ

全てまな板の上に片付け終えて持ち上げる







「…ではお先に失礼します」

座ったまま口直しに再び何か飲んでいるアコヤにそれだけを言って給湯場を出る


…呼び止められなくて良かった


結局は何も言われなかったなと思いつつ、

足早に戻った部屋

シェラカップを机の上に置いて

残りの道具をそれぞれの場所に戻す



その手で携帯食料を取りだし摘まんで飲み下す

本当に美味しくない…

腹を満たせればなんでもいいけれど、と思いつつ

侍従服に着替える

白手袋もポケットにいれておく



…昨日何故していないのかと指摘されて下げ渡されたもの。


ないから仕方ないとは思いつつ、

準備くらいしておく暇はあったと言われればその通りだから何も言えないが…




時計をみれば後一時間もない

給湯場で結構な時間を費やしたようだ…


着替えのついでに替えた

血の滲んだ布切れ

浴衣も纏めて風呂敷に包む

定位置になりつつあるチェスト上に置く





後は…

シェラカップの水を少し手に垂らす

髪を撫で付けて整える

残りで口の中の携帯食料のえぐみを流せば…


コンコン

「オリゼ、入りますよ」



…頃合いだったようだ

手袋を履く


呼びに来たアコヤに付いて

また慣れない長い一日が始まるのだ…







……



昨日と同じ流れ

復習しておいて良かった


コツがコツとしてよく分かるようになった

またもや早く部屋にさがらせられたのも助かった

万年筆を取り

昨日のメモに書き足していく



こんなもんでいいか…

区切りをつけると

風呂敷と瓶、包帯、着替えをもって出る

忘れずに…一階の部屋に寄って石鹸も



時間もまだ早い

皆まだ主人に仕えている最中だろう

昨日と同じ誰もいない給湯場を通り過ぎ、更衣場に入る



清拭ついでに

傷口もウィスキーで流し洗い新しい包帯を巻き直す

滲んだシャツも桶に放り込んで

洗濯も済ませた


替えのワイシャツ腕を通して侍従服を着直す



洗濯物を抱えて入れば

部屋と言うより物干し場

乾いた服も机の上に積み重なっている…

溜め息ながらに洗濯物を干す…


この、惨状は…

悪化していくだけだろうな…誤魔化しようもない


悪友には見せたくないが…

絶対来るに違いない…

せめて、昼休みは戻ってこないようにしよう…


俺が居なければ彼奴らは此処に来ない

それもオニキス次第だがと…

混雑時を避けずに視線に晒されながら昼食を摂り

一度も部屋に戻る様子が無ければいぶかしむだろうが…無理やり部屋にいこうと言われれば公然と断ることは出来ない


ましてや逃げにくい…オニキスの席が自身の前であることを思い出しながらも

干し終わった手で

野営の資料をバックにいれていく



基礎講義資料は全部入ったままだし…

朝これだけ持っていけば大丈夫だろう…





そろそろ

使用人部屋に戻らないとな

最低限のことはやったし…干す際に脱いでいた手袋を嵌め直して通路に出る






「っ…ルークさん?」


丁度ノックしようとしていたのかその体制のまま固まっている




「…」


「…どうされましたか?」

お願いだから早く解凍してくれ、固まったまま居て貰っても困る

精神的にも時間的にも…

そう願えば、通じたのか腕を下ろしていく…


「オリゼさん…主人がお呼びです。付いていただければ有り難いのですが…」


「…」

先日の一件…

終わってなかったか

まあ、殿下にもそんなに手間をかけさせたような様子もなかったし、謝罪もしていないが…

付いていくということはラピスの部屋

二つ返事で了承しようとしたが、

視界に入っている、ルークの、侍従服を見て今の立場を思い出した。

…そして殿下に断りなく伺って良いものだろうかと考えも同時に起こる



「そちらの主人には少々借りますと、事前に許可は取って頂いているはずですが…」


「…そうでしたか、御手数お掛けしました。参ります」



俺が迷っていることを見透かしたのか…

まさか知らないとか言えない…

侍従として未熟であるからそんな連絡は知らないとは言えなかった。

確認すべきと知りつつも…

顛末を確認しなかった俺が悪いんだ…と

後で何か言われても仕方ないと自身を納得させた。


付けが回ってきたなあ…

そう思いながらルークの背中を追った




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