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…面倒だ

そう思えば直ぐ様オニキスの鬼の…いや鬼より怖い形相が脳裏に浮かぶ


傷があるとはいえ

無くても体力的にもきつい…

怠惰に生活してきたつけかと己を笑う


やはり、基礎講義の剣術も身を入れないと駄目か

…剣の腕が上がらなくても体力位は付くだろう


期待すると言ってきた…

それに応えられる自信は何処にもないが、報いるために

最低限の義務だけ果たせるように…と強く思う


その基準には何としてでもならないとなと、

疲労を訴える身体に溜め息をつきながら今度こそ立ち上がった






上着を脱げばシャツに少しだけ鉄の色


…布切れを上から巻いていてよかった

ギリギリだ。明日はもう少し厚く巻いておかないと今度こそ上着に染みがつく…

脱いだシャツと布切れを床に放って

チェストから綺麗な布を取り出して引き裂いて机上に置く




…さて

問題は包帯だ

ゆっくりと赤く染まったそれをほどいて…

ベリベリと張り付いた瘡蓋が剥がれていく



…隣に気づかれないようにしないと。

殿下の部屋との間は防音処理されているとはいえ不安だ…

まして、アコヤ側と隔てるのは薄い扉

声を上げれば…それを阻む障害には露程もなってくれはしないだろう


慎重に…

息を噛み殺しながら外して、側の横のゴミ箱に捨てる



後は…アルコールをぶっかけて、腕に張り付いたパリパリの血も拭い取るだけだ


…っ


痛っつ…


…オニキスにやってもらったら楽だったなあ

手間も時間もかかからない



歯と右手を使いながら

新しい包帯も布切れも巻き付けて一息

やっと終わった…

時計の長針が既に半周している…



まあいいか…


浴衣も確か染みが少しついていたが…

まあ治るまではその部分だけ洗えばいい…どうせ今日も寝る間に染みるかもしれない


まあいいか

チェスト上に脱ぎ捨てたままだったそれに着替える

羽織も引っ掛ければ染みも見えなくなる





風呂敷は…下段を開けて暗めの使い古した物を取り出す

床に脱ぎ捨てたそれを包む…



…まだ来る気配もなさそうだ

扉越しに人の気配はない。

この隙にと…残りの布切れも持ってそのまま一階に降りる


血の酷いこれだけは直ぐに落とさないと目立つ

裂いていいような布ももう残り少ない





自室に…本来の部屋に寄り、石鹸だけを取って水瓶の元に急ぐ


もう下がっていいとは言われたが急に呼ばれるかもしれない

あまり使用人部屋から離れるのは得策じゃないと

足早に歩く。



時短になるだろうと見ておいた

…本の挿絵と説明

洗濯板にその通りに押し付けながら洗えば昨日より楽に落ちた

浴衣も部分だけ洗って固く絞って袖を通す

体温で直ぐに乾くだろう…



腰帯のドアノブを開けて入る


お湯を持ってくれば更にシャツを痛めずに済むかもしれないな…

昨日干しておいた襦袢を畳んで、シャツと布切れを代わりに干しながらそう思う




目に入った

机の上の講義日程の紙


基礎講義はともかく、明後日の選択講義は…

野営か

基礎講義は軽く終わるだろう…終わらなくても復習でカバーしよう


問題は選択講義

一対一だ…

予習しとかないと目立つどころの話じゃない

教科書にも目を通す時間はまだあるはずだ…




ぐう…


腹の虫に先ずは朝御飯かと…そう考えた

コース料理もいい。

菓子もいい…

けど携帯食糧だから数秒で終わる事を忘れていた。

まあ…予習に時間が割けるからそれも利に叶っているかと自身を納得させる


この生活に慣れたら

…料理本でも読んで今度安く作ってみようかな



そんなどうでも良い考えを巡らせながらも

急いで使用人部屋に戻った使用人部屋



ふうでも

呼び出された様子もない

それをいいことに

一冊以外横に置きっぱなしの本を机に広げながら

口に携帯食糧を突っ込み咀嚼する



野営か

…パラリ


野草、水の確保、食糧調達…

ふむ…


パラリ…

拠点、キャンプ地の的確な確保



火のおこし方…

まだ魔方陣は固定のものしか描けない…

発動も魔力を持続させて行わないと

野営の焚き火としての効果はない


危険と隣り合わせの場合、

集中力、気力、睡眠を削る…加えて魔力の温存の点から

古代の技術と併用すべきだ…


火口になるものは、油分を含む針葉樹の落葉

炭化させた麻紐

簡易魔方陣で火を起こした後、

これらで火種を大きくする


小枝から順にくべて…

数時間おきに新しい木々を加えて維持する


これなら他のことに余力も残る


年度末の遠征練習は…ずっと魔力を注いでいたな

総量が多い殿下や才のある人は苦にしていなかった…

俺は…水の煮沸と仕留めた肉を焼いただけ


皆より小さい野うさぎの肉

仕留めるのも捌くのも教授陣の手助けなしには出来なかった

そして魔方陣ですら、用意された。



ただ、兄の教えで全員分の水の煮沸だけは名乗りをあげてやった。

得点稼ぎだ…それで尽きかけた魔力の少なさを恥じた



でも…この本をみれば

どれだけその行為が誉められた物じゃないかはよくわかる

そして、恥ずかしく感じるべきは魔力の少なさじゃない

きっと…使い方だった




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