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手当2





「…すぐ終わらせてやる、ラピス」


「分かってる、ちゃんと固定しておくよ」


何処の犯罪者か?

悪党にも聞こえる…

そして被害者の俺には死刑宣告のようにも聞こえるやり取りだ



ヒヤリと触れる指先

右袖を口に含む


「…いくぞ」








「…ぐっ……いっ…つあ"ぁ」


言葉をかけられた後

噛みながらも圧し殺せない声が漏れる

飛びそうになる意識を戻しながら必死に耐える


麻酔等ない…



「後二針」


「…つぁ……っぐ…っ」



「後一針」


「…っぐ…ぐぅ」

脳髄まで響くような痛み






「力抜いていいぞ…」

パチン

糸を切る音


「それと、湯あみはしばらく控えろ。抜糸までは少なくとも毎日見に来るからな」

ラピスから代わりに腕を取り、包帯を巻いていくのを見る






「無理だ」


「…あ"?」




「…明日と明後日は無理だ」


「…訳を言え」


「普段の休日は見習いだ、時間が取れない」

…険しい顔をしたオニキスにそう言えば大きな溜め息

包帯を巻き終えて袖を戻してくれる



「……分かった、これは置いていくから最低一回は毎日必ず替えろ」




立ち上がって、

…薬箱から巻かれた包帯と瓶を机に置きながら言う様子はやっぱり優秀な嫡男だと言われるだけあるな


…そう思ってただ眺めていると



「分かったな?」


振り返って更に言ってくる…

サボったらダメかな…だって絶対、包帯外すだけでも痛いじゃん?

なんて頭の片隅で思ってたのがバレたのか…


無言で前方の圧力から目をそらしていれば




「…ごめん」

隣から聞こえた声に横を見る


「…ごめん、オリゼ」


…あー、忘れてた

一応気にしいだったなこいつ

なんだかんだ言いつつも俺が傷を負ったことに負い目を感じている



「…気にするなって言っただろうが、それにお前のせいじゃない」

そう言ってもごめんと呟き続けるラピス


…助けを求めてついオニキスに目を向ければ

仁王立ちだ…

うん…



洗濯しなきゃとか、明日のためにとうもろこし粉を焼いておこうとか全部明明後日だな…

汚れ、はやく落としときたかったんだけど…


うん、あれを見てはいけない

思考に逃げよう…

明日は早めに服に着替えて待機しておこう…


一応見習い初日だしな…

余った布切れで上から固く縛っておけば傷もなんとかなるだろ…




「…おい、オリゼ」


デスヨネ

…オニキスに思考から引き戻される



「なんだ?」


「もし破傷風なんかになって寝込もうもんなら、ラピスがどれだけ後悔するか分かってるんだろ?

…まして死んでみろ、俺らも殺される」




「…分かった」


貴族子息同士の…家の、問題にもなるが…そこは置いといてだ。

一番懸念されることは殿下の侍従見習いである俺を傷つけたということ。

だからオニキスが言う"俺らも殺される"と言うのはそれを指しているのだろう、


が…

決して自身の生死を心配しての台詞じゃない。

俺を心配してだ

…俺がオニキスとラピスに甘いのを逆手に取って

俺らを思うなら包帯位替えろと…

そこまで言葉にしたのは俺の事を良く理解しているから…放任すれば自身の事をおざなりにすることは確か


友人として接しているのに

侍従見習いである俺の立場に迄言及したのは…

まあ脅しともとれるが…俺のためか

それにしても、心配性だな…オニキスは




「必ずやれよ?」


溜め息混じりに言ったのが信用ならないとばかりに

念押ししてくるオニキス



「約束する。

はぁ…取り敢えずラピスを回収していってくれ」

意図はちゃんと伝わってるし組むと、目で伝えながら言った後

ラピスを顎で示す



限界なのは分かっているんだろう

殺すとか死ぬとか遠慮なく言ったオニキスの後に

俺が辛いとか早く休みたいなんて言える筈もない…


隣のラピスを見ながらそう促すと

肩を掛けて引き摺っていく




「鍵は机に置いておく、それと……早めに寝ろよ」


「ああ、手間かけたな」


最後に首だけ振り返って出ていくオニキスに、

挨拶がわりにそう返して


…二人を見送った




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