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講義後




鍵を開けることもなく、寮の部屋に入れば…


会話を止め、驚いたような目で見てくる

「…随分早かったな?」


早く終わって何が悪い…

そもそもここは俺の部屋だ

…目だけ向けてオニキスの返事に答える





「おかえり、オリゼ」


「ああ……ちょっと待っててくれ」

約一時間…

自分で言うのもなんだがこんな何もない部屋でよく居れたな


そう思いながら

朝脱いだ襦袢と羽織、着物を持って使用人部屋で手早く着替えて出ると

…また何やら話し込んでいる様子




「…なに話してたんだ?」

制服をクローゼットに掛けながら聞く


「オリゼがどんな選択講義を取ったか賭けていたんだ」


「そもそもなんで選択講義なんでとった?卒業には必要ないし、勤勉でもないだろ?」



お前ら…


「俺をネタになに楽しんでんだ?それとラピス、賭けは成立しない。5講義とったんだ。」


「一つじゃなく5つ?…で、なんでとった?」




「…趣味だ」


あの司書といいオニキスといいどうでも良いだろ…

なんで理由を聞いてくるんだ

ほっといてくれ…


間が空いた返答がどう取られるか、そんなことも気にせずに

適当に答えながら机に向かう。

バックから配付された資料を取りだし目を通す

ほぼ見る暇なんてなかった、それら

持参物でいるものは…教科書だけだったな、楽でいい



…一日に1講義ずつか

早く終わればやりたいことが出来る

基礎講義と選択講義の勉強時間を引いても余裕がありそうだ


再確認した講義日程と時間の紙だけ机に残し

他は空になった本棚に講義ごとに分けて入れていく

上にある古い教科書もこっちに持ってこようと思っていると



「驚かせるなよ、二人とも」

両肩から覗き込まれていた…



「…これがお前の趣味か?」

「確かに賭けにはならなかったね…せいぜい履修しても2講義だと思っていたよ」

ラピスもラピスだ。

何講義受けるかも知らないのに賭けになるはずないだろ

無視で良いか…

「鍵返せ…出掛ける」



「…返せ」

手を出して催促するも出そうとしない



「…街に買い物に行く、付いてきたいなら来れば良い」



まだ出そうとしない様子に痺れを切らす

そんなに信用ならんか?

いや、あわよくば撒こうと思ってはいたが…仕方ない



「寮監の控え室で待ってる……制服を着替える間に置いていったりしない。」

バックを肩に掛けながら言うと

漸くオニキスが鍵を返してくれた


やっとこさ部屋から二人を追い出して寮監控え室に向かう




コンコン


「どうぞ」


「……失礼します」


「…貴方でしたか」


すぐに返ってきた返事に入室すれば、

…今日は書き物をしていないようだ


ソファーに座りながら一息ついている




「外出します。…後から二人来ます」


そう言えばソファーを勧めながら立ち上がり机から記帳する台帳を出してくる


「寮監…部屋番号を了承を得ないまま他学生に教えるのは誉められたことではないと思うのですが」

それに記入しながら昼の恨みをぶつける



「使用人は自身の主人以外の部屋も全室把握しています、なにか問題でも?」


「…使用人は業務上必要です」

書き終えた台帳を向こうに押しやり顔を見る



「…なにか問題でも?」

問題ありありだ!

昼休憩が潰れた!今からも潰れる!

首も腕もヒリヒリしている!



「…論点がずれています。他学生に簡単に部屋番号を教えるのは寮監として違うのではないかと聞いているのです」


出された紅茶を遠慮なく手に取る

喉が乾いたらここに来れば良いか…タダだし手間もない

そのくらいはしてもらってもいいだろうと紅茶を口につける


「緊急の場合や必要があると判断したら教えますよ」


「…どこからその判断は「俺らが安否確認したいと言ったんだ…それと座ったままでいい」…有り難うございます」


気配を消すな

ノックぐらいしろ


振り返ると…

…急いだのだろう、多少髪が乱れた二人が立っていた




「外出ですね?」


隣に座った二人に台帳を差し出す寮監

立ち上がる必要もなく

記入しているのを見ながら自分の分を飲み進めていく


何が緊急の場合だ

前日に安否確認など取れているだろうに…

そもそもそんな有事が起これば、

1学生に部屋番号を教えるだけで解決はしない。

安否確認するには鍵が必要

もしくは扉を破る許可か、権利を持った人間が行う筈


その事を知っていて、

共犯めいた話題の変更…

言いたいことはごまんとあるが、

俺が今異論を呈したところでなしのつぶてであることは明白



それに外出時間も目減りする

良いことは何もないと…

その不満と問いただす言葉を飲み込んで順繰りと3人を睨みつけた



「ご馳走様です、寮監。

…それとお二方、髪が乱れています」


何も怯むことはない様だ

悪友2人は置いておくにしても寮監も…

それもそうか…貴族子息や子女が大半を占める学園の寮監を勤めれば大抵の事に怯むこともないのかもしれない


なんだかやるせない…

二人も俺と同様に書き終えたのを見計らって立ち上がる


扉を開けて手櫛で直した二人を先に通してから

半歩後ろから付いていった





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