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二人目

PV1000超えしました。

有り難うございます(*´∀`)




コンコン


「…はい」


居留守を使いたいが…

防音仕様の部屋とは言え散々騒いでいたら声も完全には防げない、か?

気配も扉越しに分かる…



今度はなんなんだと

重い腰をあげて扉に向かう


中が極力見えないように狭く開ければ

悪友その2




「入るよ」


「ご遠慮願えますか?」


疑問符もつけない問いはその意味をなしていない

予想通り遠慮はない

俺が断って扉を閉めようとするも押し開けて入ってくる



仕方ない

どうせまた硬直が溶けるのに数分かかるだろう…

すり抜けて入っていった悪友を振り返る

ちらりと目を向ければ

…予想通りの、さっき見た同じ光景



溜め息をまたこぼしながら

握ったままのドアノブに目を戻す

…溜め息がまた漏れる

最早これが自然の呼吸法なのかもしれない

変な考えも沸いてくる

そんな変な思考回路も繰り返されれば、

…いずれは自然の思考回路となるのだろうか?


落ちた呼気とともに…

要らない思考回路を捨て、

扉を閉めてベットに向かって座り直す





「…オリゼ、この部屋はどうしたの…なんで何もない?」

数分後

発せられた言葉も先程とほぼ同じ


「…使用人部屋に移しました。その隣ではなく殿下のの部屋の使用人部屋です」


その隣ではなくと、

その部分を強調して言えば

悪友2は先程見たオニキスのように扉に向かう動きを止める




「そう…でもなんで部屋にいなかった?何度も心配してきたんだ…寮監に尋ねたら去年と同じ部屋だと言っていたし、

今此処にいるなら自室で間違いないんでしょう?」


…寮監

部屋番号って問われたら本人の意思なく誰彼構わずホイホイ答えて良いものなのか?

守秘義務はないのか…

個人情報は守られるべきではないのか

例え侍従を使って情報を仕入れてばれたとしても、

それまでの時間は…猶予は稼げた筈


それを…



「…噂を聞いている通り使用人になりましたので。学生としての部屋はこの通りありますが、今後はほぼ使わないと思います」


寮監…

どうせ守らないのであれば

中途半端は良くない…


使用人の部屋だって俺の部屋だ

その部屋に居るのでは、

とか使用人の部屋について一言でも言えば…

此処までオニキス達は心配して爆発しなかったはずだ


悪意すら感じるぞ…寮監

俺に何の恨みがあってこんなことをする?





「…で?なんで敬語何て使うの…オリゼらしくもないんじゃない?」


「使用人が学生相手に敬語を外すわけないでしょう」


考えながら、重ね重ね質問してくる

ここまで来れば自棄だ

寮監への恨みと、逆恨みでなにかが振り切れる

元からポンコツな思考回路と呼吸法をしてくれるこの体が

最適解を出してくれる筈もないと、

遠慮や後先も考えることなく突き放す言葉を口にした


唯でさえ口調は元来のものであっても低い声

それに加え、

眉間に皺が寄り始めた悪友2にも

構わずに言い放った





「オリゼ…今はオニキスと俺しか居ないだろうが…もしや友人までやめるつもりか?」

「……監査の家系の子息ならば、この際離れた方が良いのではないかと思います」



「…問題を起こしたのは叔父さんだろう。それと使用人使用人言うのなら俺が立っててオリゼが座っているのはおかしいだろう?」



「そうですね、大変失礼しました」


やはり琴線に触れたか…

保たれていた口調は荒々しく直情的なものに変わった。

だから、

立ち上がって膝をついて頭を垂れてみれば…

らしくない事をすれば境界を築けるのではないかと


「そういう意味じゃない、拒否したつもりだろうが多少は心許した行動が出てるって話だ。」


っ…

溜め息をつきながら言われた言葉に、言葉がつまる




「で、本当に使用人としてしか今後扱わなくて良いって言うのが本心なら無礼打ちなり出来るな?」


「…」


「俺と殿下に迷惑かけたくないが為の行動なんだろ?このままだと殿下にも俺にも手間がかかるが…?」


「…」

畳み掛ける言葉にも無言を貫けば



「答える気がないのか…

本当に天邪鬼だし、素直じゃないな。

友人相手には滅多に手を出さないが…使用人って言い張るなら構わないよな?」


声のトーンが更に重く重厚なものに一変する

マズイ…近づいてくる足ににじりながら後退しようと思った瞬間


気づけば

腕を掴まれ…

捻りあげられ…首を腕でロックされていた…

…苦しい、痛い、動けない…


最悪だ…



「…ぐっ…離してく…ださい」


怒らせたら絶対怖いだろうと気をつけていたのになあ…

普段は冷静だし

口調も穏やかで柔らかい…


だから女子に人気であることも知っているし、

本当に手を出すこともないが力も実力もあるのは知っていた…

そもそもこんな言葉使いも話し方も滅多にしない

何処か柔らかで温かみのあるそんな雰囲気がラピスの持ち味


それが徐々に変貌していることの意味に気づくべきだった

いや、留意すべきだった

手遅れだ

体感などしたくなかったが…



「素直になれたら離してやるよ」

空いた右手で腕を引き剥がそうとするも、堅牢で歯が立たない…分かっているけれど…

無駄な抵抗と言われようとなんだろうと大人しく出来るわけがない…



「ラピス、少しは手加減してやれ…

言えたことじゃないがさっき俺も首絞めたばっかだし…

それ以上はもたないぞ?

…それとオリゼ、俺にも無礼打ちさせることになるが?」


…指摘されて気づいた。

オニキスの時もベットに座っていた…

その時もまだ使用人だと言い張っていたな


「…オ…ニキス」

もがいて逃れようとする体を更にキツく締め上げられる


「まだ限界じゃない。それに…今緩めたら逃げるだけだろう?オニキス、オリゼに何をしたんだ?」




「大体は同じだ…

友人として振る舞っても殿下の使用人として責めることはしない、友人を此方からやめるつもりはない事をちょっとばかり脅しながら説いただけだ」


…っ

救いを求めてやった視線も言葉にも

ただ、頭を横に振るだけ


溜め息を付きながら外された視線は

視界の片隅で

未だ…俺を刺すように見るラピスの方向へと移る




「成る程…そんな下らないことに拘ってか」


「どうせ勝手に一人で拗らせて思い込みのまま先走ったんだろ。…それとオリゼ、不問にされたかったらさっさとラピスに謝れ。俺みたいに優しくはないぞ?」


「…」


あれで優しかったのか?

戻ってきた視線と言葉に、目を見張る

二の次も吐けない

呼吸すら苦しい中で、

絶句していると




「…まあ、やろうと思えば色々出来はするが。

…そもそも承知の上で部屋に来ているし、外聞が気になるならここまでして友人を続けようとはしない…確約がほしいなら言っても良い。…これで話せるな?」



一見、語り口は優しいがそういうことじゃないのは分かる

普段なら見せない鋭さがそこに含まれていることも

これ以上折れなければ…

知りたくもない色々やら本気で行動に起こすくらい、

予想に固くない





「…分かったっ…悪かったから離してくれ」


そう言えば、

少しだけ…腕が緩められた

離す気は無さそうだ。

筋肉質で男らしい二の腕

俺より力強いそれにこんな状況下でも下らない事を考えてしまうのは性分なのだろうか…


普段…

女性的だと、線が細く力などない等と陰口を叩く奴等にこそ

こういうことをすべきではないのかと

怒ればオニキスよりも怖いことを示すべきではないのか…

家業を継ぐに値する苛烈さは、

もう備わっていると…


何も俺がそれを痛感しなくてもと、

口にせずとも心の内で溢したのだった




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