表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/300





『オリゼ、いつまで扉を見つめているつもりですか…』



この界隈…


いや自身の周りでは小説で見た石化の術でも流行っているのだろうか…

アコヤの、

初めて聞く硬質で事務的な声音に無理矢理体を向き直す



「いえ」


片手に持った書類から上げられた視線

最早目だけで促される






「…ご迷惑お掛けしました。

硬直されていたので、

…気を使う必要はないと言う意味で格下の見習いだと説明し、名を名乗りました…

ほぼ赤以上の侍従か側仕えしかいないと考え敬語を使ったのもその意味もあります。初印象の制服姿の影響を軽く見過ぎ…逆効果になってしまった点、

彼方側の主人が何か気を損なった際には…万が一の際は殿下に…迷惑が掛かることを重く見れませんで…

軽率な行動でした」


なにも言う気は無さそうだ

その様子に付け加えるべき言葉を探す…




「報告を…殿下への伝達、宜しくお願いいたします」


早い方がいい

相手方の貴族が大事にするかもしれない


…その上詫びが遅ければ更にけちをつけられるかもしれない


自分の始末すら出来ない未熟者…

王族と言えど同い年の殿下に自身が出来ない始末をさせるのだ。

その引き継ぎもアコヤに負わせて…



「部屋に戻っていて構いません。後は此方で対処します。」

漸く返ってきた返答


…重苦しくそう告げて

一拍

資料を机上において

踵を返して殿下の部屋に繋がる扉に




アコヤが消えていった扉とも入ってきた扉とも違うもう1つの扉


ドア越しに会話する微かに聞こえてくる会話を聞きながら

右手にあるそれを開ければ


見慣れた自身のバックパックや図鑑が置かれた部屋が広がった







二畳ほどの小さな空間

自室である102の部屋の使用人部屋ですら、

先ほど入ったアコヤの部屋と同じような間取りと広さ


唯一…いや知っている2部屋から想像していた広さはそこにない



第一の使用人部屋と、

第二では扱いも違うのだろう…

貴族と同じで侍従にも格差はあるのだと分かった。

まあ、寝れて机があって棚が少しあれば俺としては事足りるけれどと自傷めいた笑みが広がる



目の前に机

その上にロフトベッド


右側には小さなチェストとその先に使用人通路が広がっているだろう扉

反対側にももう1つ…殿下の居室に繋がるのだろう扉

扉ばっかりだな…


そうぼやきながら

面倒事を引き起こした忌々しくも思える制服から早く着替えたいとチェストを開けていく



何個目かの引き出しに見慣れた和装の普段着

真珠の国出身の母上の影響ですっかり気に入っているその藍染の着物に袖を通しながら

机に向かう




アコヤが運んだのだろう

二つの封筒と賞金


使いなれた万年筆を手に

便箋に文字を埋めていく



さて

封蝋をしてと…

明日登校のついでに売店に寄って出してしまおう

どうせ封筒も便箋もほとんど切れかれてるし丁度いい


そう自身に言い聞かせながら

机横にかけられたバックパックに手をかける



携帯食料と小銭入れをだすと…




やっぱりあんまり残ってないな…

封筒と消耗品を買えばほとんど残らない


賞金は…

手を伸ばして巾着を広げて確認

…ラクーア卿と自身の邸宅への馬車代と菓子折で消えるか


4カラットだけ小銭入れに残して全て巾着に入れる。

バックパックに巾着だけを入れて仕舞う






さて。


小銭入れと書き終えた封筒と…万年筆セット…


引き出しに…あったあった

これも残り少ないか…講義内容を取る用にメモ用紙と…

肩掛けバックに入れる


明日は講義もない筈だ

…学期始まりの教材配布と諸連絡…それと講義の選択



部屋番号の同時に受け取った二枚の紙を見ながら考える…

今から書庫に行くわけにもいかない

…アコヤのさっきの言葉はここで待機しろって意味だろう



…明日にするしかない


昼も食べに行けない…そもそも金がないが…出した携帯食料を咀嚼しながら

二枚目の紙に目を通す

選択科目と基礎講義の諸経費一覧…器具やらで金がかかるのは初年度も同じだったが気にしなかった。

だが今年度からは家からの仕送りがない…

今回からは学園での生活費を気にしない訳には、

好きなように過ごそうとする訳にはいかないんだな。




なんとも思わなかった

金に関して深く考えたことも…

なに不自由なく暮らせていたのは自身の力なんかではないのだと…


男爵家とはいえかなり自由に育てられてきたのだと…




書き終えた封筒を書き直そうか…

便箋も残り少ない…と思えば


深いため息が狭い部屋中に反響した



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ