表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/300





[アコヤさん…]

ギシギシと音がなりそうな動きで首を動かす目の前の侍従



『…ルーク、もしやオリゼに何かされましたか?』

…いや、勘弁してくれ


[…いえ、あの…]

回復しつつあるが困惑を通り越して挙動不審になりかけている目の前の侍従改め、ルーク…


『…オリゼ』

「…」




そんな咎める目をされたって…

なにもしてないし

いつの間にか、こんなに人がいたのかと思うくらい集まってきてるから…


現実逃避したい…

遠い目をしながら空虚を見つめていれば

ルークから話を聞くことを諦めたアコヤが体ごと此方に向きなおってくる





『オリゼ、事と次第について分かりやすく説明して頂けますよね?』


「…900使用人部屋2の案内を頼みました。それだけです」

見てしまった…

ニッコリと形容詞がつくような笑みで追い討ちをかけてくるアコヤに棒読みになったのは致し方ないと思う


寧ろ返答ができたことを誉めていただきたい




『それで?』


「それだけです」

半ば投げやりに返せば笑みが深まっていくばかり…


『分かりやすく、と私は問うたはずですが?』





…見えるはずもない般若がアコヤの背中越しに出てきている気もしてきた


「…っ、始業式後自室に…。

そこから900使用人部屋2に向かおうとしましたが、使用人通路は初めてで迷いました。

立ち往生していた際、

偶然通りかかった…ルーク?さんにお訊ねしていたところです」



『…で、ただそれだけだと?』


いや…もうわかってるだろうに


制服のせいだってことは少なくとも…ああ言わせる気か…

嫌な予感しかない


というか、102部屋に着替えなんて…

侍従しかいない此処を通るために服を着替える頭はなかった。

あったとしても自室には、服1枚も…それどころかなにもなかったんだから致し方ないじゃないか!


俺にどうしろと言うんだよ…




「それだけで…『ああ、言い忘れていましたね。何かあれば侍従の主人がその収拾に当たると。』」

さっさと吐け…言外にそうとしか聞こえない…


「…なんの考えもなく制服姿で使用人通路に入ったこと、

ならびにこの姿からは解離した言動に驚かせてしまい大変申し訳ありませんでした」



暫くの静寂

ルークに頭を下げながらこれで終わってくれと切実に思っていると


[…いえ、こちらこそ…頭を上げてください]

回復したのかルークの声が返ってくる…

やっとか

見習いやら使用人部屋やらの情報が脳内で処理されたのか…

敬語のままだけれども…



『ルーク、今一度聞きますが、その"見習い"に何かされましたか?』


[…いえ、少々驚いただけで何かされたわけではありません]


『そうですか…

皆さん、お騒がせして申し訳ありませんでした…オリゼ、少々"解離した言動"なるものについて今から詳しく話し合いましょうか?』




「…」

周りに向かってアコヤが言えば各々それぞれの仕事に戻っていく

…寧ろ誰かしら助け船でも置いていってくれれば…


そう無言に徹し名残惜しそうにその様を見つめていれば…




『…また教育不足で肩代わりしなければならないんでしょうかねえ?』

ギョッとして振り返れば

左腕を擦っているアコヤと再び現れた般若の背景に

「…っ」

顔から血が引いていくのが他人事のように分かった


固まったまま

半ば強制的に…肩を持たれて部屋に誘導されていく…



[アコヤさん]

呼び止める声に僅かな光を見た気がしたが…




『ルーク?…ああ、ルークの主人には後程報告に参りますとお伝え願えますか?』


[主人にそう伝えておきます]




聞きたかったことは聞けたと言うように目礼している姿に…

勿論助け船を出してくれとすがるように目をやるも


[(頑張って下さい)]

憐れみと…そして何か攻撃的な物を含んだ目と口の動きだけが

閉じた扉の向こうに残像として残った




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ