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そんなことはない


十分過ぎるほどに従順にしているはず

…当社比ではあるが、とは言えるはずもない





「……申し訳ありませんでした」


昨晩のもろもろについて…反抗的云々に対する返答じゃないことは明白。


推測に難くないだろうし

言うつもりもな…



『何についての謝罪ですか』


顎から離れていく

支えがなくなれば自然と俯く

結局言わせられるのか…


黙れば

顎から肩に移動して置かれた手に誘導され、

ベッドに座らせられる





「…」


『…』


「責を…代わりに負わせその上、その手で介抱させました…」


薬のせいか…

それとも言いにくい口苦さか。

最早項垂れるように俯きながら声に出す



『…及第点ですかね。口を開けなさい』

目をあげれば口直しの甘味

柑橘の仄かな香りのする寒天が


…匙に…



「自分で食べ…」


『…』

視線をたどれば

いつの間に握り締めていたのか…

固く直ぐには開きそうもない膝の上の拳をわざとらしく凝視している





…大人しく口を開けて匙を含む

薬効を阻害しないためか甘くない…香りだけだったが口の中の苦味がスッと引いていく


『聞き分けがよろしいことで』

その様子に

満足したのか食器を片し始める




『昼前には出立します。

そちらにあった荷物も含め予め寮に送ってありますので、それまで部屋で待機していてください』


そう言いながら、玉露が注いだ茶器をテーブルに置いている


「分かりました」

時計を見れば正午まで後一時間ほど


…特にやることもないか



座った体勢を倒し…

ぽふりと羽毛布団に沈み込んだ。

そう、ごろりと仰向けになって天井を仰いだ…のだった






アコヤが退室していって暫く。

やっと開いた汗ばんだ掌も自由が利くようになった

ごろごろと横になっていた体を起き上がらせ…

サイドテーブルの上、には湯呑み。


…口直しするには遅すぎるだろうがと思えば、

もうなくなった筈の薬の苦味が再発してくる。目についた茶器を取り上げながら、一口

温くなったそれに人心地つけば、景色でも見ようかと立ち上がり窓辺に向かう






青々とした若葉と丁寧に剪定された木々に手入れの行き届いた花々……


春か…平常なら新年度の目新しさや高揚感がするのだろう

クラスも前年の成績で変わる

…まあ最下位に落ちようはないが




学園についたら、先ず蔵書室か

体調も万全じゃない…


始業式後の空いた時間に市街に出て物価を見るのもギルドに行こうと思っていたが無理だろう

そもそも外れまで行くならば馴染むような衣は…

持っていない


そこまで行くならば、ボロとまではいかないにしろ

買ってからでないと…



玉露を啜りながら

時計を見やればそろそろ頃合い…



ガチャリ

図ったように開くドアを反射的に見やれば








「…兄上」


「何している、早く行くぞ」

茶器を持ったまま呆けているのを急かす

…残りを煽りサイドテーブルに置きながら向かう


「…」

泊まっていたのか…


それもそう、か

一端領地に戻って学園に行くとなると時間もない


ならばあれらは兄上の入れ知恵…

末恐ろしい

反抗心もむくむくと沸き上がってくるが…諦めが肝心


今日の明日でそんなことをすれば懲りない奴だと

…再起不能になるくらいやられるだろう

この数日、

手加減されていたのは…分かる


…理解したくないが






なにも言わず兄に付いていけば

魔方陣の横に殿下とアコヤの姿


邸のエントランスを抜けた敷き詰められた大理石の一角




「…お待たせしました」

来たのをちらりと確認したのか

次々と魔方陣から消えていく


こんな高度な魔方陣を見たこともないし転移したこともない…

皆のように魔力を注ぎながら魔方陣の上におずおずと進む




軽い船酔いのような感覚…



収まって暫く…

瞑っていた目を開ければ直ぐに学園の門構えが見える


一年間見慣れた学園がそこにあった



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