実習10
狭く、獣道と表現するのが相応しい…
皆の体力の消耗を考えて
藪を薙ぎながら先頭をきってきた所だった
人が通った痕跡は多くあった
踏みしめられた草木に、
薙がれた歯や枝
気を付けていた筈だった
皆に注意を促した…
そして、
皆も警戒を強めて進んできたのに…
視界が開けた…
拠点候補地に人の姿が無かったことが
緊張を一瞬途切れさせた
「っ…来るよ!」
後方のカルサイトが叫んだときには…
もう…目の前に
後ろに、左右に…囲まれていた
速い…
各々作戦もなく応戦するしか無かった
「っ…」
「何故反撃してこない」
「貴方に向ける刃は、持ち合わせてっ…おりません」
「なら初手で鞘を抜いたナイフで鍔競り合いをしたんだろうな?」
「そ、それは…」
「また嘘をつくのか…皆、本領発揮して良いぞ?」
「「「了解!」」」
「つっ…何を!」
「見ているといい」
金属音と魔力のぶつかり合いがより一層過激になる背後
剣を下ろした殿下が目に写った瞬間
振り返る
…目下の危険が無いと分かれば促されるまま
敵である殿下に無防備にも背を向けて
状況を確認する
次第に…
苦しそうに…
でも何処か楽しげに剣を振るうオニキス
俺と練習するときには見せない表情に足捌き
息も上がっている
相手は確か、公爵の嫡男だったか
代々王家を護衛する家柄だけあって、教育もしっかりしているようだ
「オリゼ!…っは…なに、見てんだ?悪いが…助け、には行けない!」
「分かって、いますよ…」
オニキスが剣のみで応戦するのに合わせているのだろう
剣の腕だけの純粋な戦い
相手は魔力攻撃もせずに口角を上げて余裕そうな表情…
息を上げ、左腕は斬られたのだろう
地面には血が点々と落ちている
…
歯を食い縛りながら立ち回り、
必死に切り込みにいくそれも歯牙にも掛けず払う
実力が違いすぎる
であるならば…
「おい!何突っ…立ってんだ!」
「オリゼ…お願い!」
そんなジルコンの
カルサイトの叫びにも一瞥もくれず返事すら返さない
諦めよう…不利だ
3人の実力も
疑う訳じゃないが…負ける
剣の鞘を抜かず、
格が断然に違う殿下を後ろに俺が立っていられるのは…
単に相手側が手抜き処か戦いすら始めていないから。
助けには行かない
行けない…
裏切りに見える行動
それでも俺はただ皆の戦いを傍観するだけ…
先程…俺が一歩皆の方向に踏み出そうとした瞬間に
…殿下の魔力圧が、
暴力のようなそれが容赦なく背中から浴びせられた。
お前の相手は俺だと、
俺が戦うならば許すのはただ一人…殿下だけ。
助太刀にはいかせない…
他の自身の面子とは相手させる気はない、そう指し示すように…と
「で、戦わないつもり?オリゼ」
「そう…ですね、投降します」
「そう、ならしてみれば?」
その言葉に左ポケットを探る
…探る
探れど探れど…ない、落とすことは有り得ない
ベルトにカラビナで吊って入れていた筈だ
「…っ」
「ああ、無いだろうね。
投降するにしても棄権する為の魔方陣のスイッチは
…ほら、僕の手…ここにあるけど?」
「殿下…返して頂けませんか?」
「嫌に決まってるだろ?
オリゼの本気を見たいんだ、手合わせしてくれるのはこういうときしかないだろう?」
「なりません」
「なんでだ?剣の指南等、臣下でもするだろう」
「格が上の者ならば加減も出来ますが。私は…違いますので」
「万が一にも怪我を負わせたらって思ってるのか…
馬鹿だな…お前にそんな事させるわけないだろ?」
「なっ…いえ、
…そうだとしてもです、辞退させて頂けませんか…殿下」
こんな話をしている間にも…
火力が、攻撃魔方陣に注ぐ魔力が尽き地に伏せるカルサイト
倦怠感で立ち上がれもしなくなったのだ
きっとすがるように此方を見ているのだろう
ずらした視界に…映る
責めるような視線が突き刺さる
…ジルコン、は
陽動と、攻撃を兼ねた魔方陣を展開しながら
右手では剣撃を繰り出す戦法…
相手もそれの戦術に合わせて戦っているが…
余裕が違う
ジルコンが弱い訳じゃない
…相手が悪すぎる
確か魔方陣と剣を組み合わせた戦術を
型を発案した現当主…その子息だった筈だ
次第に押し込められていく
…無駄な動作をしていない
消耗も少ない…使う魔方陣の的確さ、
発動のタイミング、フェイント
剣と合わせる事で相乗的に効果が上がっていく
一段階、一段階と引き上げられていく速度にジルコンの応対が厳しくなっていく…
………
皆…
地面に足を着いた
あれだけ響いていた音も何も聞こえない
静寂が支配する
決着が着いたのだ…
ジルコンが咎めるように睨んでくる
やはり、理解はしても実際問題こうなるのだ
侍従として手出しはしないと約束したが
納得できる筈もない…
「で、戦わないつもりなのかな?」
「意思は変わりません、殿下」
「数日とは言え、その仲間を見捨てるのか…酷い奴だな?」
「そう思って貰って、私は一向に構いません」
「…これ以上は無いと思ってるな。
だが、何故教授陣が回収に来ないと思う?」
「少し待てば来るでしょう」
「いや、来ない」
「何故…でしょうか」
「まだ戦えるからだ、それだけの余力は残して置くように言ってある。それに…見てみろ、戦意を失ってないだろ?」
「…その様ですね、それがどうしたと言うのですか?」
「失格基準に満たないようになぶれば良いだけだ。
腕が少々折れても戦える、魔力圧をかけ続けても適度に止めれば立ち上がれる、軽い毒を飲ませても後遺症はない、苦しむだろうが後で解毒すれば問題はないな」
「殿下…」
「まあ、オリゼと戦いたいと言った俺の我が儘だ。その作戦に賛同してくれたグループの面子には感謝しかないな…始めてい「…いい加減冗談もそこまでにしてください!」…いぞ?」
「殿下」
「言葉は翻さない、撤回もしない」
「これだけ、お願いしているのですが?」
「…始めろ」
その言葉に青筋が切れる音が耳に響く
これだけ下手に出ていると言うのに…
オニキスを見捨て、
ジルコンやカルサイトの視線も言葉も無視をした
その上、
俺にこれ以上裏切りに裏切りを重ねさせるつもりか!
なぶり始めた敵に…
3人の悲鳴が響き始める
「そんなに手合わせしたいのか…
ならば所望通り、剣を抜いてやる!」
「こいよ、オリゼ」
「これ以上なぶれば許さん、
此方は…俺以外の皆は必死に戦った、手加減して調整されながらも、お前の命で誠意すら見せず舐められ様と誉れを傷つけられようと!
実力差が、格が違おうとそんな事するものではない!」
剣を抜きながら、
剣先を向けて振り向き相対した
撤回する気はないと、
ニヤリと笑う表情からはそんな意思がかいま見える。
失格になろうとも、自らの手で幕引きをと…
スイッチを押すことも敵わない。
だからやるしか…3人の苦痛を取り除く術はないのだ。
そうか…
そうか、そこまでするなら此方も考えがある…
いたぶる前にお前を倒してやる、
そうすれば守れる。
ここまで俺の策に乗ってくれた奴等に惨めな思いなどさせたまるものか!
「…ふっ、手加減して欲しくないのか?」
「やるならば全力の相手を叩き潰す…当たり前だろ、そもそもそんな生ぬるいことをさせる余裕を与える気はない。
それにな…外道に慈悲を乞うような真似、するわけがないだろうが!」
「へえ、なら楽しませてくれるんだな」
「お前などさっさと倒して、止めさせてやる!」
「ああ、付き合ってやるよ…」
頭に血が上る
片隅で正常な思考が警鐘を鳴らすが…
その領域もじわりじわりと次第に赤色で染められていく
煽る言葉に、
付き合うのは俺の方だと箍が外れていく
狂い、放棄しなければ…
こんな強敵に歯向かっては行けない
魔力を巡らせて、身体強化を計っていく
剣に刻まれた魔方陣にも流し入れていく
補助がなければまともに戦えない
それも長くは持たない
魔力量が多くない、長期に戦えない
だが…少しの間持てばいい。
こいつを倒すまで、
短い時間であろうが…それでも役には立ってくれる筈だ。
「その口、閉じさせてやる!」
土煙をあげるように
地面を蹴り上げて立ち向かって行った
……
「あーあ、切れやがった」
オリゼが珍しく…
いや、本来の姿で剣を振るう姿を見ながら
何故か手を緩めた敵に起き上がる
振り切れた…
俺ら以外に人はいるのに、敬語を抜く処か罵声すら浴びせながらマルコと戦っているが、それでいいのかと呆れもする
そもそも戦わないと言ってたんじゃねえのかと…
まあ、もう周りは見えていないだろうけどな
後先考えもしてないだろう
そんな様子に、
隣に集められたジルコンとカルサイトも唖然としている。
俺らの希望で敬語を外していた、
汚い言葉だってこの数日発してきた…
自然体ではいたが、
だがそれでもオリゼは加減していた…侍従見習いの立場を忘れはしなかった
そう…
本当はもっと柄が悪いし、体裁を考えて動く奴じゃない。
目上だろうと何だろうと気に食わなければ、筋が通らない理不尽な事には歯向かう…勝算がなくても己の信条を守る
愚直で策を練る性分じゃない
今回グループのことを思って役に徹していたのも…
仲間思いのオリゼだから。
得意じゃないと、文句を言いながらも隠れて色々と助力出来る様に準備も鍛練も…知識もつけてきていたことを俺は分かってる、
人一倍努力して、時間を掛けても…
ジルコンとカルサイトと仲間と
認めていない時でも
グループとして共闘する
その重要性が分かっていたから…
実習が始まる前から努力はしていた
「なあ…あれ誰だ?」
「何処をどう見てもオリゼだが?」
「あー、とんでもねえ。
あれで実力ねえとか言うのか?その辺の慢心してる上位の奴等よりまし…格上だろ?」
「オリゼの交友範囲は、俺とラピス、殿下だけだぞ?
他は兄の、あの完璧なアメジス元副風紀だ…まあ自惚れるつもりはないが、比べてる対象がおかしいんだよ」
「…」
「今回関わったお前らも有望株中の有望株。
…因みに、侍従として関わってる奴等も平均とはかけ離れてる」
「…なんか、可哀想になってきた」
「な、だから俺等が何言っても卑下するか、実力無いとかしか言わねえし納得もしない」
「つまりさ…オリゼの周りは格上しかいないってことだよね?
まあ…僕のことを棚に上げて言えばだけど…」
「カルサイトがそれを言うのか?」
「もう…ジルコンだって、あれ見て評価変えたんでしょ?
オリゼはもう少し鍛えれば僕らと実力変わらないかもって」
「まあな…なんであんなボンクラ、
殿下が傍に置き続けてるんだと思ってたのは確かだ。
ここ数日過ごして少しは認識を変えたが、
なんだ…かなりましじゃねえか」
「ね、オニキス?オリゼが剣が苦手って…噂。あれも間違ってない?」
「くくっ…苦手だぞ、ここ最近練習し始めたばかりからな。体力も型も伸び代だらけだろ?」
「まあ…講義で振るってるの見たことほぼ無いけど」
「あー、俺は数回。最近講義に出たかと思えば走り込みばっかりしてる…
前期だったか?オニキスが相手してたとき…腑抜けそのものだった、だから隠すためにサボるのかと思ってたが」
「ま、殿下が無理矢理ああしなければ…
あのままだったろうな…休み明け、実力が格段に上がってて吃驚した。
オリゼ曰く、練習したんだと…さ」
「で、それはいいとしてだ…いや良くないが。
俺らは何させられてるんだ?なぶられる予定なんじゃねえのか?」
「あ…確かにジルコンの言う通りだね…」
「…嫌な予感がするから、俺は聞きたくねえが。
本心は…置いといて、で?」
殿下のことだ、
オリゼを切れさせる算段をしたに違いないことは薄々…気付きたくもないが分かった上で聞く
「…本気で戦いたいと言っておられましてね、
何通りか、作戦を立てていました」
後ろで俺らの抵抗を警戒しつつも、
手出ししてこない敵に聞けば隠しもせずに返事が返ってくる
「関節を外して戻した。切れたその後オリゼの視界から外れれば俺らの確保に務めろ…そう言うことか?」
「そうだ」
「…ああ、そうかよ」
間髪入れず、
認められた…怒りを通り越して呆れも出るわ。
全ては奴さんの手の上
殿下が本気のオリゼと戦いたかった…
その為にオリゼの判断力や理性をなくす、
仲間思いの性格を知るからこそ、グループの俺らはなぶられ役になり
キレさせて相手取る予定、か…
見事な策だ
もし俺らがもっと強ければ…
オリゼにそんな思いをさせることもなかったが、悔しいが実力差…
そのせいでそれは実現されてしまったわけだな…
「ねえ…飲まされてあまりの苦さに表情を歪めたけどさ…
あれ、ノニの果実だよね?毒じゃないでしょ?」
「正解ですよ…飲み下せない程注ぎ込めば口から溢れる。
遠目にそれは吐血に見えますからね…」
「ちっ、俺も関節を決められた以上はされなかった…
あのまま折られるのかと思えば、すんなり手を離しやがるしな」
「思った以上に耐えたな、
うめき声一つ上げて貰わねば困ったのに…仕方なく俺が声を当てたが…っ」
「う…この程度…ちっ」
「抵抗するな、逃しはしない」
敵の解説、
悠長に聞いているのは反撃が敵わないから…
まだ戦いは終っていないと、
こうしてなんとかジルコンが逃げようとするが失敗に終わるしな…
「ま、お前らもオリゼの懐に入ったってことだな…良くも悪くもそれが原因であれだけ振り切れたんだろ。
俺だけならまだ、彼処まで血が昇りはしなかった」
「…オニキスは親友なのに?」
「親友だからだろ、凶刃にも拷問にも耐えてくれるって変な信頼はある。
それと、敵とは言え取り返しのつかないことは殿下はしないと分かってる筈だからな…」
「なら、僕らだって同じじゃないの?」
「あー、まあそうだけどな」
煮え切らない返事をしたところだった
非、現実的な音が耳に響く
時折、変な動きをしていると思っていたが…
オリゼが殿下を誘導し足を止めさせた、その場所は。
殿下の周りに張り巡らせた魔方陣の紙に差し向けられたオリゼの魔力が…
発動した
瞬間、四方八方から凄まじい水量が殿下に浴びせられている
等圧なのだろう、中に浮く殿下の体
そんな様子に…
後ろで警戒しつつも、それでも動かない敵に疑問を抱く
オリゼの背中は、後ろはがら空きだ
注意を向けすらしていない
グループの殿下を助けるため、
オリゼの注意をそらす位、容易な筈だ
それなのに、
この場から魔力を当てることすらしない。
仲間の…殿下の危機にも駆け付けないのは何か理由があるからか?
「分か…った、降参す…る」
「なら、さっさとしやがれ」
僅かな殿下の魔力が、
スイッチに流れていく…
それを見守っているオリゼの姿に、先程の会話が脳裏に浮かんでくる
"投降するためのスイッチは俺の手に…"
もしや…
敵に奪われて押されても投降に変わりはない
あれは、殿下のではなく
オリゼのものだ!
手で隠しているがあの光るカラビナの色は間違いなく俺らのグループで統一したものだ!
何より、後ろで微動だにしない奴等が証拠、
横に目線をやれば
二人も気づいていたようだ
立ち上がり、阻止しようとするも
羽交い締めされて
魔力圧で抵抗力も奪われる
「遅いよ…残念だったね」
チラリと俺らの方に自由の利く目を寄越して…
殿下の声が妙に明瞭に聞こえてくる。
スローモーションで押されていくスイッチが遠く
手を伸ばしても届かない距離にあるそれが
敗戦を意味する…目に鮮やかに映った
「「罠だ!」止めろ!」」
「!…ちっ」
オリゼに声が届く
反応し、殿下の挙動を阻止しようと動くが…
時既に遅く、
押すことは…止められなかった
殿下が押し終った後、魔力の供給をとめたオリゼ
水の支えを失った…土に崩れ落ちるように侍った 、
その殿下は手を開いて、
カラビナをオリゼに見せつけるようにしている
「…騙したのか」
「策略だ、血が上ってこの存在を忘れていたオリゼが悪い。
それに投降させる以外俺を止める、勝つ術はないと分かっていたから俺の台詞にすがった。待ち望んだ言葉だっただろうからね」
「お前…」
「最初から押すも押さぬも…俺の意思一つだったってこと」
「そうかよ…ああ、後で話がある」
「今でいい、なぶってなどいないからね」
「は?」
「後ろ…見たら?…まあ、と言うか、なぶられて虫の息ならば、お仲間はあれほどの声量出せないし…抵抗も出来ないと思うけど?」
ゆっくりと、
俺らの方を振り返り一巡
「…ならいい、無事ならそれで」
気が抜けたのか…
膝をつくオリゼに苦笑が漏れる
弱いとか出来ないとか言っても、
何だかんだ俺やラピスを…今回はこの二人をも守ろうとする
普段の言動からは一見分からない、
情の厚さには感服する
「で、俺も後で話があるんだけど?
良くもまあ、同じ学生の立場があるとはいえ…主人に罵声はよくないよねえ?」
「…あ」
「敬語も抜けてるし…俺の仲間にもその様子は筒抜けだけど良いの?」
「…いいえ」
「休日が楽しみだなあ…ね、オリゼ?」
「はい…殿下」
実習が終われば数日休みに入る…
その後終業式だ。
実習での傷や疲れを癒した上でという配慮の日程が…
オリゼにとって非常に好ましくない事だと気付かせてくれているようだ
休日はオリゼが侍従見習いになる日だからな、
実習の疲れをとる以前に侍らなければならない
その上叱責されるだろう…
休日が楽しみだと言いながら、
マルコに肩を叩かれた…その行為に力を失い座り込んだ姿
…
その丸めた背中が更に小さくなっていく…
きっとただでは済まない
それが分かっているのか…馬鹿だな、本当に
対等な立場で実習の対戦を願ったマルコ
そして見習いの立場から断ったオリゼ
オリゼが最初からマルコの条件を飲んで剣を持てば良かった…
学生同士の、実習
咎めなどない
だが…
それをよしと出来なかった上で、キレた。
戦わないと、主従関係からそう望んだのにも関わらず…
…
俺らを守るために…箍を外した
そのせいで実習の対戦ではなく、それは主人に歯向かう行為と変貌したのだ
なんとも、気の利いた主人だな
認めろと言いたいのだ…
見習いであると同時に、友として対等で良いと思われていることを。
きっと俺らを守るならば、
友としての自分の希望くらいすんなり聞いてくれと言う嫉妬もあるのかもしれない…
鬼畜だな…マルコは、
自分の友に、侍従見習いに厳しすぎはしないか?
…
回収に来た教授が、
オリゼに言い訳をする時間をくれる筈もなく…
そう、
満足そうな表情を浮かべるマルコとは対称的に…
オリゼはがっくりと意気消沈した様子で、
引き摺られる様に魔方陣に立たされていく
そんな光景を見ていれば俺らにも迎えが…
敵の手の拘束はなくなっていた、
とうに自由を取り戻していた体…
それを起こし、各々用意された魔方陣に立ち教授の魔力補助を得ながらも…
7日振りに広場へと降り立ったのだった




