実習9
さて、そろそろ昼にするか…
空を見上げれば日の光が強く射し込む、太陽が真上に上がったことを確認する
…魔力量も全快まで戻った。
ジルコンにほぼ見張りを任せ、半場横になっていたお陰で疲れもとれている
「よいしょ…っと」
さて…
バックパックから背を起こして、
もう手慣れてきた作業にとり掛かるか…
浄化し終えた水を一度沸騰させて、
昨日の内に出して貰っていた皆の水筒を煮沸する
同じ行程で一度コッヘルを消毒し、
三度目のお湯に熊笹の粉茶と砂糖を溶かし入れる
少し荒熱を取ってから、
均等に水筒に注ぎ入れていく…
お次は…
煮立たせた湯にコンソメを入れてと。
後は具材を入れるだけ
「オニキス」
「ん…もう時間か」
「悪いな、起きてツナ缶出してくれ」
「…?ああ、分かった」
目を擦りながら動き出すオニキス
次は…
「カルサイトも…「ん、起き…たよ」…いや、寝てるだろ」
「…ん…」
「起きろ」
「…後…5ふ「頬を張るぞ」…っ起き…た!おきたから!」
手を振りかざす真似をすれば、
…目はぱっちりと覚めたらしい
「起きたら、ツナ缶出してくれ」
「ん…分かった?」
「ジルコン、お前のもだ。悪いが俺がバックパックから取らせてくれるか?」
「ああ、いいぞ。左の外ポケットだ」
「分かった」
見張りに立っているジルコンに断りを入れて、
目的のものを取り出す
かき集めたそれ、
各々に手渡していた残りのツナ缶を出させて、
4つ…全てのツナ缶を使ったコンソメスープに、携帯食糧。
食べ終わったオニキスと一時的にジルコンを交代させ、
スープと携帯食料を済ませて貰う。
そうしないと一つしかないコッヘルが空かないのだ…
さて、最後だ。
一度濯いでから、濃いめに煮出した紅茶にはジャムも入れた
オニキスには運んで
…悪いが立ったまま飲んで貰った
…少し物足りないが、
腹を満たす事が出来ているだけ、ましと思うしかないな
食後の片付けをして…
それが終われば撤去作業。
ハンモック代わりにしていた寝袋とシート、
それにオニキスの寝袋も乾燥魔方陣で、簡易的に水分を飛ばして折り畳む
お次は…
替えの布と手当ての準備か
オニキスを見張りから外し、
代わりに周囲を警戒する
オニキスに自身と二人を手当てさせるためだ、
手当てされながらも俺の補助をジルコンが担ってくれている
そして手当て後…漸く目が覚めたらしいカルサイトに、
水筒を手渡し支度を急かす
シートと寝袋
それに皆の包帯代わりに使っていた汚れた布を浄化して、
医薬品と共にバックパックに仕舞った
忘れ物はないなと、見渡す
火元に手を再度当てて水を念のため掛け直した
「オリゼ、終わったか?」
「ああ、ジルコン」
「出発するか…カルサイト、起きてるよな?」
「うん、流石にね…」
「くくっ…ならしんがりは俺、オリゼ、オニキスの順…後方はカルサイトに任せるぞ。異論は?」
「無い」
「オニキスに同じく、ない」
「いいよ、ジルコン」
「…くくっ、出立だ」
好戦的なジルコンに、
三人で視線を交わらせて苦笑する…
確かに後24時間で実習は終わる
ここからは守りよりも攻めの戦法に切り替える、
気合い充分の先頭に
続いて山道を上へと進んでいった
…
……
山道を登ってきてかいた汗も冷えてきた
日も落ちかけた頃、
予定していた2つ目の拠点候補地に着いた。
余計に歩いたし、剣も何度も交えた
疲れも出てきている…周囲に人の気配もない
予備で考えていたここはあまり良くはないが…仕方ない。
言葉を交わすこともなく、
皆各々バックパックを置いて座るのを見て俺も座った
「なあ…中腹まで来たが、録な奴等に遭遇しない」
「カルサイトの情報によれば最初手合わせしたのはD組の有望株…クラスも上の方だろ?生き残りが…もしかしたら少ないかもしれんな」
カルサイトに答えるように、
考えを巡らせさながらオニキスが言葉を発する。
流石の悪友も疲れが滲んだ声を出した…
「気配も、痕跡もない。カルサイト、魔力痕跡は?」
その散漫なオニキスの代わりに、
ジルコンが警戒を怠ってはいない。
「…うん、ないね。確かに…登ってきて遭遇したのは当初の拠点予定地と、衰弱した2グループだけだった。少し手を合わせれば、直ぐに教授らが回収するほど疲弊してた」
周囲に目を向けながら、カルサイトと危険性を確認しているのか…
それを聞いたオニキスが地面に座り込んだ
それにしても…な。
ジルコンが録な奴等がいないと言っても
俺ですら顔を知った顔が数人、格上だった筈…
…が、誰も彼もが剣に力が乗っていなかった。
スピードもなく、精彩を欠いた攻撃
未熟で才がない俺でも直ぐに御せる程…
魔力も体力も残っていなかった。
その事をジルコンは指摘したいのだろう…
「まだ日も残ってるのに…あれで最後まで見つからずに、耐え凌ぐつもりだったな」
「うん、そうだね…」
「楽で良かったが、あまりに…」
呆れたジルコンと、
苦笑気味のカルサイト…
疲れが更に露呈してきているオニキス
そんな3人の会話を聴きながらも
作業を進める
拾い集めてはみたもののやはり、な
周辺に落ちている枝は少し…
湿り気を帯びていてこのまま薪では使えない
仕方ないと取り出した
紙切れ…火の魔方陣の上に火口の麻紐と炭を置いて魔力を注ぎ続ける
火口に火がつく
…暫くそのまま維持すれば炭が赤く変化する
ここまで来れば一安心
火が消えることはないと魔力を注ぐのを止める
周りに小枝を置いて乾燥させる。
この炭一つで一晩は持たない
が、これだけの量を乾かせば…なんとかなるだろう
「それにしても、基本装備に携帯食糧もテントもある」
「日数分の数はあった。どうせ配分も自制も出来なかったんだろうが…テントは張り方すら覚束ない様子だったな」
「オニキス、有事の際それすら出来ない奴等が当主になるのか?」
「ジルコン…継ぐのは今すぐじゃないだろうが」
「だからなんだ?自覚が無さすぎだ」
言い合っているようにも見える二人に
手を差し出して、催促する
今晩の材料は…味噌と乾燥野菜、干し肉だ。
既に自身の分を火元に取り出しておいている、
その包み…懐紙に掛かれた文字を読み取り察した三人
各々自身のバックパックから同じものを取り出して置いていく
…カルサイトはなかなか見つからないらしい、
荷物をまだ、ごそごそしている。
「柔だな」
「もう、そう言わないであげてよ…オリゼが居なければ似たような状況になってたかもしれないんだから」
「何言ってる…この程度の対策俺でも出来るんだ。ジルコンが言うように自覚が無い…やろうと思えば誰にでも出来るだろ」
最後にカルサイトの分も受け取りながら
会話に加わる。
柔だと表現したジルコンの言い分は分かる、
考え無しに動くのならばそれに見合う体力や地力がないとな…
「もう…自己評価本当に低いよね…」
「ああ…オリゼ、出来ないからあんなに空腹と寒さで弱ってたんだ」
「オニキスの言う通りだよ…僕らだって…」
基礎講義でも戦術はあった
少し想像すれば、
普段豪勢な食事に間食…ティータイム
雨風に晒されない部屋で質の良いベットで眠る、
全て用意されているもの
実習場所がそんな環境ではないことくらい…
対策することがあることくらい馬鹿でも分かるだろうが…
「慢心、武力と気合いだけで乗りきれるのは玄人でも3日がいいところだと聞いたことがあるな…まあ、テント位張れる。
食糧や水の確保は俺でも出来るが、オリゼのようにここまで考え付かなかったし出来なかったろうな」
「ジルコンなら容易に出来るだろ…」
ジルコンまで、
何を言い出す?
「水の確保すら考えない、
雨が降ったのはそういった面でましではあった上であのザマ。
…確かに彼処まではならないが、似たような状況になる可能性も否めはしなかった」
「冗談を言う…っ」
言うな、
やけに買い被り、褒めるジルコンの言葉にそう返し掛けた時だ
…料理を始めようと、自身のバックパックからコッヘルを取り出した時、
気付いた…
配分し忘れた、すっかりその存在を忘れていた
指に当たったそれ…
バックパックの底に沈んでいた包み。
不味い…不信感を抱かれたら
ここに来てグループ内でのいざこざになれば俺の失態だ。
…静けさが
会話か途切れ不自然な空白が生じる
何事だと、見合わせている3人の前に…
おずおずと…
包みをバックパックから取り出して砂利の上に置いた
「…で、オリゼそれなんだ?」
「忘れてた…わざとじゃない」
「いや、疑ってはないが…食べ物か?」
「ああ。オニキスはそうだろうが、二人は…」
オニキスは何でもないと、
俺が出したものをチラリと見るだけ。
それも食料だと分かっていて…咎める目も向けては来ない、
わざとではない。
その俺の言葉を信じている…
俺が秘密裏に自身だけ美味しいものを腹に入れようとした何て事は疑う素振りも見せない…
有り難いが、
オニキスがそうであっても…一人味方してくれたとしても気休めにはならない。
問題はグループの調和
三人に負担を強いた上に、
料理を任された俺
…信を置けなくなれば後2日
俺の役目は何もなくなる、負担を更に掛ける
足を引っ張るだけになるのだ…
「オニキスはそう言っているが…
普通に考えて疑ってくれて構わない状況だ。
野戦での食料の不均等な分配は御法度。
荷物の改めも全員でしたことはない、
信用の上、一任された上に失態した…覚悟はしている」
…
言葉がない
沈黙…
その空気に下げた頭を上げて
恐る恐る、
二人の方へ視線を向ける…
「普通、か…吊るすのも面倒だ」
「ちょっと…ジルコン」
「申し訳無い、吊るされても文句一つ言えないミスだ。
…俺の荷物を改めてくれて構わない」
「馬鹿言うな、もし意図的に隠していただとしても…策の一つとして納得してやる」
「もう、言い方!
まあ、僕もジルコンと同じかな…言い方悪いけど、隠していてもそれを感付かない程、オリゼは僕らを騙す技量は無いと思う」
何だそれ…
信用する理由が甘すぎる
予想していた反応も、
疑惑の目もない…
失態として扱わない
そうジルコンは言い放つ…
それにカルサイト、
裏付けもなく俺を信用するって…
らしくない二人、
そしてその回答にオニキスがニヤニヤし始めている…
「くくっ…だそうだ、オリゼ」
「…腑に落ちない」
「まあ、二人はそう言うが改めるぞ」
「そうしてくれ…」
オニキスが俺のバックパックの中身を皆が見えるように出していく
その様子を見やりながらも
食料の包みを開けていく…
手を止めている内に煮たった湯の中、
踊っているふやけた干し肉と乾燥野菜。
…問題の干し飯をコッヘルに加えていれば、
オニキスの視線
何か問題が更にあったかと、
コッヘルから視線を外して目を向ける…
おい、オニキス…真剣さが足りないぞ…
手慰みに改めているのか?
そのオニキスのせいか、
緊張感の欠片もなく二人も俺のバックパックから取り出された荷物の中身を形式的に見るだけ…
そんなんで、
未来の伯爵と子爵らが勤まるのか…?
「で、結局それは何なんだ?」
「干し飯…和の国の携帯食の一つ」
馬鹿馬鹿しい…
事の重大さを重くみるのは俺だけ、
俺よりも頭の良い…分かっている筈の他の三人が軽く扱っている状況
それに溜め息が漏れる
料理
それを続けていた方がまだ生産性もあると言うものだ
作っているのは味噌ベースのおじや…いや、雑炊に近いか?
少し水分を吸ったことを確認、
米が踊って粘りが出ないよう、炭と枝の位置をずらして火力を調整する
…うん、良い感じになってきた
頃合い、そう見極めて味噌を入れて回し溶かす…
後は少し蒸らせば出来上がりだ。
「…で?」
「改め終わった」
「他に配分された以外の食べ物は無いね」
「そうだな、カルサイトの言う通りだ」
「皆…恩に着る」
確認が終わった3人
怒りも、疑惑の目も向けられていない…
信用して貰ったことに
頭を下げて心から礼を言った
…
「で…自費か?」
「っ…オニキス、気にするところそれか?」
「だってお前…」
「言ったら只じゃおかない」
「聞かせろ、オニキス」
「僕も…なんか気になる…」
「只じゃおかない、ね
不器用にも程があるだろ、オリゼ」
「…黙れオニキス」
「ま、する気もない脅しに屈するほど…聖人君主じゃない。
それに…失態だろ?」
「ちっ…好きにすれば良い」
オニキスは失態の詫びに…俺に恥を晒せと?
恥の上塗りにも程がある、
…が、一理あるのも確かか…
オニキスが言う分には…仕方ない
…
だが俺からはもう何も言うまい…と決めている。
一言たりとも言うつもりはない。
蒸し終わったおじや、
蓋を開けてそれを等分に取り分ける。
それを皆に配り、
口を利く気はないとオニキスに意思表示をするため…少し離れた場所に座った
「本当に好きにするぞ?」
その行動を見て、ニヒルに口角を上げたオニキス…
一口、匙を使って食べる
英気が戻る、表情に疲れが飛んでいく。
料理…食事にその効果はある
気持ちの面からも…
そう、
今オニキスが全快になることは、好ましくない。
俺に意地の悪い事をするような…
その憎たらしい口に、
気に入ったらしいおじやを続け様に含むオニキスを見てから視線を外した。
そんなオニキスに二人が
話を聞くために近くに座ったことも…
仕方ない…
致し方ない…ことだから…
「オニキス…俺は好きにしろと言った、
二言はない」
「くくっ、お前らしいな…
で、お前ら何から聞きたい?」
「そうだな、オニキス…何故金に拘る?
オリゼの家の経営が苦しいとは聞いていない、それどころか繁栄してる。
この実習の追加食料を買うとしても端金だろ…」
「そうだね、
オリゼは俺は違うと否定するかもしれないけど…それを考慮したとしても僕らの小遣いは豊潤。
貴金属や高級な趣向品、それを買うことを視野にいれて当主達は準備してる…
それなのに保存食、
多少値は張ったとしても食べ物位…何故自費かと気にするの?」
「オリゼは馬鹿だからな…
1ルース位で半年やりくりするつもりだったんだよ」
「まさか…使い込んだのか?
自制心のある、食料配分をこの数日しっかりしてきた奴が?」
「うーん、オリゼが高額な物を買い占めたって調べはないけど…
もしかして僕の情報網に漏れがあったかなあ…んー」
「くくっ…ジルコン、
使い込むわけないだろ。実習が終わったらこいつの部屋見てみろよ…
簡素でものが言えなくなるぞ?」
「は?
あいつ、小遣い貰ってねえのか!?」
「前期はな…今は貰ってるらしい。
それと、カルサイト…情報網云々は知らないが漏れはないと思うぞ?
金があったとしても変わらない、
ここ最近の買い物でも変わらず可愛いもんだ」
…
米はおろか、
パンすら買う余裕すらなかった休み前の懐事情を明け透けなく言葉に紡いでいくオニキス
宝石ではなく、
装飾品に向かない小さな物や不純物のある珍しい形になった鉱石が好きなのだと…
趣味のキャンプ用具だって、
値のはる…実用性に欠ける子息向けの張りぼては買わない。
奮発して使う時、
それでも金額にして商家の子息位で収まるだろうと…
普段から金は使わないのだと、口を割っていく。
そして保存食は買った奴ではないと憶測で断定する有り様…
間違いではないが、
乾燥魔方陣を使ってどれも手製に用意したものだと言いやがる
そう、
間違いは言わない
だから否定はしないし、口は挟まない…
これはそもそも失態の償い…吊られる代わりだからだ。
体裁の悪い、
俺にとっては…だけでなく男爵家として知られて困ること…
誰彼に聞かれても良い話題ではない。
それでもオニキスはこの二人が悪用しないと他言を慎むと信じているらしい
…ならば、
俺は口を出す権利はない。
目的が、
俺への嫌がらせ
他意はない、
オニキスは虚栄心の高い俺が気にすると知っていて…それだけのために話題に上げたのだろうから…
…
長々…と
遂には二人の相槌が小さくなる迄
オニキスは話し続けた。
自費じゃ悪いなと、
他の食糧代金も後で払わないとね…
等と
妙に憐れんだ事を口々に出す二人の声が聞こえてくる
そこまでしておいて、
そのしんみりとした空気を払拭するように。
「オリゼ、堪えたか?」
「充分な…ラピスにも負けないくらい悪どくなったなオニキス」
「ラピスには負ける、
なあ…そろそろ仕舞った方がいいだろ?」
俺に会話に混ざるよう、促す声かけ。
振り替えれば溌剌とした笑みに、
手にはとっくに空になったシェラカップを差し出しながら言う…オニキス
確かに
もう片付けをして寝る準備をした方がいい…
立ち上がり、
オニキスから受け取りながら輪に入るように火元に座る
「確かにな、
で…俺の醜聞を露呈させて気は済んだか?」
「まあ、そう言うなよ
…これで気が済んだだろ?」
「それは俺の台詞だ…」
「オリゼが気にしてるのは知った上で購わせてやったんだが?」
「…悪かった、感謝に耐えない。
これで良いな…オニキス」
「…上出来、オリゼにしてはな」
「一口多いんだよ…おいお前ら何ショボくれてるんだ?
洗うからそれ寄越せ」
「あ。ああ…」
「うん、オリゼ…」
呆けている二人を稼働させて、
片付けていく。
その間には
また俺に関することを…
気にしているカルサイトとジルコンに向けて喜劇に仕立て上げる。
…わざとらしい演技と脚色付けて、だ。
俺が訂正するも、
更に脚色付けて面白可笑しくするオニキスに溜め息が漏れたのだった
……
最後の朝
七日間と言えども今日の正午で実習期間は終わる
携帯食糧を口に入れながら
珈琲を淹れる
…珈琲の香り、
早朝の澄んだ空気に広がっていく
出来上がったそれを手渡して…
軽い作戦会議か
「で、どうする?数が残ってるとは思わないが…どうせなら上の順位を目指したい」
「箔は欲しい」
「箔…10位以内なら白の上、赤の勲章だったね…」
「今生き残るグループが10以内でない可能性もある。
貰えるものなら貰っておきたいのは俺も同じだ…数を減らす事に異論はないな」
「身を潜めて時間までやり過ごすのも手だ。
ここまで生き残った胆力のある奴等…オニキスが言うように動くならば互いに数を減らしてくれる可能性も否めはしない」
「へえ…でも折角だし、
手応えのある相手ともう一戦位したいかなあ、僕は」
「まあな…カルサイトは誰が残ってると思うんだ?」
「J組のラピスラズリ位じゃない?策士でしょ…
後はD組の数グループかな…殿下の所を含めてね」
「ジルコンは?」
「同じ意見だ。あえて加えるなら…騎士伯の奴等。
クリスタル家の嫡男は確か持久戦の評価が高かった、追い詰められた獣程怖いものはないとな」
「なら、少し登って脇道に降りよう。
待ち伏せするには適した場所も多くある…リスクはあるが踏み込むのも楽しそうだ」
オニキスの好戦的な発言に二人が頷く
意気込んでいる…
いや、二人も本来はそう言う達なのか目には爛々とした闘気が宿っている。
まあ…このまま頂上まで登っても
拠点や野営地に適したところは少ない…特に今生き残っているグループが其所に居るとも思わないしな…
仕方ないと俺も同意を示すように…
出された荷物と設営したものを仕舞いに掛かったのだった




