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実習5







「起きたらどうだ?」


「うっ…ジルコン、よくも…」

「寝れただろ、気を張りすぎなんだオリゼ」

「…飯、作ればいいんだろ?離せ」


「癇癪持ちだな、第8夫人は…くくっ」


まるで寝かしつけるように…

そして目が覚めた今も、頭を撫でてくる"夫役"の手

ちっ…何でこんな辱しめ…

馬鹿馬鹿しくて、気も抜けたのもジルコンの手の内

それも癪に触る…





「…最悪だ」


二度寝の誘惑に負けながらも…

やけ顔のその手を払い落とし起き上がった


雨はまだ降りしきっている

ドライトマトとニンニク

オイルサーディンの缶に入れ火にくべる


…この雨ならば匂いも広がらない。

小麦粉を練って簡易のパンを、

木の枝に巻き付けて焼く…

臭い消し代わり、気休めの林檎のチップス

紅茶はベリーのジャムを入れてロシアンティー




「アヒージョにパン、甘味か…くくっ」

「これ以上の贅沢を言うなよ、貴族の坊っちゃん共」

「オニキス、やっぱり面白いなこいつ」


「だろ?」

「何同意してるんだ、オニキス?

後数日間は携帯食糧のみになるかもしれない、文句言うなよ」


「とっくに他の奴等はその味気ない食事(携帯食糧)のみだろうよ…本当、俺の悪友は奇抜な手を考えるもんだ」




配分を配り…

黙々とがっつく皆を見て自分もありつく

旨い…

生気が保てているのは栄養面だけではない

簡易であろうときちんとした食事と寝床

気力を産み出すのは、

慣れない野外での生活上にはそれが欠かせない





「ね、僕ここのグループで良かった」

「カルサイト、それは終わってから言え。

早々に敗戦して俺を恨むかもしれないだろうが」


空になったシェラカップ

空き缶と枝

それを回収しながら答える


枝は火にくべる

空き缶も投げ入れ、油を焼き切る

水で洗っても落ちないからだ…





「…またなんか変なこと言ってる、ジルコン通訳して?」


「ああ…己の実力が無くて皆の足を引っ張る。

結果順位や結果が悪くなる可能性を危惧してる…そんなところだろ、なあオニキス?」

「御名答、ジルコン」



「おい、何で確認するのが本人である俺じゃなくオニキスなんだ?ジルコン」

「…答えないだろ?」

「賢明な判断、それも御名答だ。ジルコン」



「…もういい」


さっきから背中越しに聞こえる会話

介入するも袖にされる。

ったく、つるみやがって…オニキスもジルコンも


ちらりと後ろを見ればカルサイト…もか

うんうんじゃねえ…

府に落ちた顔を勝手にするな

何納得してるんだ?


ったく、

寝袋の権利を引き換えに皆の食事と片付けを請け負ったが…

シェラカップを手短に洗い済ませ…

…再び潜る

タオルケットには劣るが…外気の寒さとの差


暫し…

寝袋のぬくぬくを堪能した








……



夜明け…

ワッチが終わる。

交代だと言って空いた寝袋のスペース…

そこにぬくぬくと潜り眠りたい誘惑を捩じ伏せ、

もう一つの寝袋に寝ているオニキスも起こして退かした。



晴れた…んだったな

ここでの野営も終わりだ。

移動する事を考えれば、今から干さないと間に合わない

皆の汚れた衣服も着替えて貰う

手揉みして濯いでロープに干す

快適な衣服も、体調に影響する。



崖から見えないように、斜面よりにバケツを置いて

見張りを代わりがわりしながら清拭しているのを見ながら作業を進める。

一組だけは綺麗な服を残しておけと言ったこと、

それが今、活きている。


最悪、今戦闘になっても服をすぐに着れば…

見張りとこの立地を考えれば間に合うからだ。

全て服を洗って干していたら…

まあ、考えたくもない。


テントを解体

清拭で残ったバケツの水で軽く汚れを流し

同様に火に少し近い位置に縦に張って乾かす…

ベットのマットレス代わりの枯れ葉をくべて、

火力を上げた









……


「ねえ、オリゼ」

「…昼食作ってるんだが」


何か用があるのかと、

釣れない返答をすれば…答えれば

…落ちる沈黙

仕方なく振り返り、目で促す


「うん、それはわかるよ」

「はあ…ならなんだ?」



「干し鱈のスープに、簡易のパン…ドライフルーツの蒸しパンかな?それが昼食なのは分かるけど…それは?」

「保存食だ、あと数日間のな」



調理、火の加減に目をやりつつ

乾いた寝袋と服を仕舞う次いでにバックパックの中を整理…

残りの食糧を確認。


一旦全て取り出して

一人分ずつ小分けに…していれば声をかけてくるカルサイト 

皆もバックパックの整理だと

目線で指示を出せば各々干していた衣服も入れていく


主食の三食と行動食

万が一ばらけた時の為

チョコやナッツ、

残りの引いた珈琲豆や紅茶の茶葉

乾燥野菜に味噌

どれも軽く、荷物の負担にならないように考え抜いてきた品


一回分、

少量ずつ…前回同様に日付等を書いて

3人に手渡していく


「ねえ…携帯食糧のみって、オニキスに言ってなかった?」

「ああ、あれか…ジョークだ。それに作戦は伝えた筈、余力があれば敵を誘き寄せる位のメニューを作れる」



残り少ない

缶詰、

配合しておいた香辛料

干し肉に、乾燥野菜…小麦粉を一纏めにする

予備の食糧だ。


敵を誘導する為でもあるが、

皆の1食分

残りの実習期間の途中で振る舞う

鋭気を養うためだ





「…だって、ジルコン」

「ほう、余力がなくても…携帯食糧のみにはならなそうだな」

「ジルコン、オリゼの食と布団に関する欲は…いやこだわりを舐めてるだろ」


「あ?知らないが…まあ、そうなのか?」

「そうなの?」

「ああ…余念がないよな…」


オニキスがそう言えば、

打合せしたかのように一様に

何だか呆れた顔をして皆が見てくる…


解せぬ


万全の体調や栄養状態、

精神的にも快適に配慮しただけなのだか?



「オニキス、当然の戦略の1つに過ぎないだろ?

それと…カルサイトは寝袋も仕舞え」

「うん…」


興味を持ったとばかりの表情

…制止の言葉に悪どい笑みを向け、古傷を抉る言葉をオニキスは二人に伝え始めた


悪かったな、引きこもりで…

布団が温いのは良いことだろうが

食が美味であること

それを求めることも、舌の肥えた皆と同様の筈だ




暫く…蒸し上がった。

出来たのにも関わらず、俺が食べ終わっても俺を議題に話し込む3人に…

痺れ、いや堪忍袋の尾が切れた。


立ち上がり、

それを差し出して…

いや、正確には3人の口に突っ込んだ





「むぐっ…ん、何するの?もう…」

「熱!…後で覚えておけ、夫になんたる愚行だ?」


「くくっ、オリゼ今度手合わせしような」



「…はあ」


三者三様に恨み事

俺の方が言いたいわ…


そうこぼしながらも、

テントやベットの解体をしに背を向けた




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