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実習1




そして実習の初日

皆思い思いの服装と支給されたバックパックを背に集まっている


教授の説明を聞きながら、

周りのグループの装備や雰囲気を窺っていく




「これから7日間生き抜け。

小隊を組み、生き残りの残党の排除を戦場を模したものだ。実習とはいえ皆、心するように。

持ち込む物は自由としたが、基本的な食料と携帯品は持ったな?

バックパックは各々今、再確認しろ。

注意事項としては、故意に死傷、後遺症になる重傷を負わせたものは失格だけでなく学園の籍を永久に剥奪する。

続行不能と判断した場合、教授が回収に向かう。

その他の理由で棄権する場合、個人ではなくチームでの棄権となる。その際は携帯している煙筒を使え。

分かったな」


「「「「はい!」」」」







「なあ…オリゼ」

「なんでしょうか、オニキスさん」


「まあいいけどよ…二人が不思議そうな顔してるぞ?」

「説明しましたが?」


「いや…それはそうなんだが」


教授の指示通り、

自身のバックパックの確認をしていれば、

確かに不思議そうな顔をしている二人が覗き込んでいる


が、周りに他のグループがいる

聞かれる可能性を捨てきれない状況の今、詳しく説明するつもりはない



この実習の概容が発表されてから、

下調べと対策は練ってきた

グループを組んでからは、何度も作戦を擦り合わせた。

…稚拙ながら三人に戦略を伝えてきた筈だが。


まあ…

でもオニキスに言われるのも仕方がないか

少々、珍しいものも入れてあるし



「三人とも…後で御説明します」


視線に目を合わせ

言えば、頷きが三者とも同意が返ってくる





「分かった、オリゼ。

そろそろ刻限みたいだな…」

「っ…しょっと」


一連の確認を終えて仕舞い終える…

パンパンに膨れ上がった、そして外側にも色々とくくりつけたバックパックを肩に背負った



「オリゼ…行かないのか?」

「そうですね…」


そう言いつつもゆっくりと、急がない

先頭を筆頭に皆果敢に、張り切って山の方へ入っていく


最後尾に並ぶ俺は…ぽやーっとしているだけ

訝しげな三人に見られながらも、

皆の姿が森に消えていった後…最後に実習エリアに足を踏み入れた






「…なあ」

「オニキスさん、これ。見つけたら拾ってください」

「お…おう」



「あの…」

「えっと…カルサイトさん、これ見つけたら拾ってくれますか?」

「…いいよ?」


「あー」

「ああ、ジルコンさんは後続で周囲の確認をお願いします」

「…分か…った」




先頭で注意を払いながら進む

と言っても、教授陣が張り巡らせた魔方陣の壁が右手にある。

平坦で山の外周…平地と変わらない歩き心地だ


それに注意すべきは三方向のみで済む

実習の範囲内

その外周を、山に入りもせずただ進んでいくだけだからな



思った通り、他の人の気配はない。

皆、通例通りの隠れ易い場所の確保

殲滅…いや先手必勝に動くグループが多いだろうが

どちらも山の中で慣れない足場

…きっと疲れるに違いない



それにしても…後ろが静かだな

そんなに拾うものは難しい物じゃない筈だし

警戒もそこまで…

小声で話すくらいはしていい筈だけど?

もしやと思って

ちらりとうしろを窺う

うん、ちゃんとついてきてる



良い天気だ…

でも確か明日か明後日に雨になる予報だ

それが過ぎればまた天気も良くなる

それまでは安全圏で体力温存するべきだ



常に敵襲の警戒に緊張感を強いられ、慣れない野外での就寝

戦闘に、携帯食料や干し肉等の簡易な食事

それに雨が降れば体力も気力も失われる

ただでさえ、肌寒い

秋も終わりかけている

衣服が濡れれば注意も散漫になる


狙うとするならば、

そこからだ




方位磁石をちらりと確認する

そろそろかな…

水音もしてきたし


うん、思った通りの場所

これなら三日は過ごせる




「着きました。オニキスさんとカルサイトさんは警戒を

ジルコンさんは私を手伝ってくれませんか?」


「「「…」」」


「あれ?」

「オリゼ、設営終わったら話せよ?」

「分かっています」


「だそうだ…腑に落ちなくてもオリゼに従ってくれ」

頷きオニキスとジルコンが左右に散る



「それで、僕は何をすれば良いのかな?」

「ええ、周りの枝葉を集めてきてくれませんか?」

「うん…いいよ?」

「ありがとうございます」


さてと、

奥に見える滝

近くにテントを張れば、崖の落石

増水も怖い


少し離れた、

急斜面

土砂崩れが少し怖いが…大木が多くある

多少の雨ならば耐えうる筈


少し地面が高くになったこの場所

これなら斜面からの雨水で浸ることもない

ぬかるむこともなく、

快適に過ごせるだろう…




滝の水飛沫で見えにくいが、

崖の方から此方を覗き見ても分かりにくいようにする。

そうすれば…

この急斜面を必要もなく転がり落ちるようにして攻めては来ない



右は滝

その水流を泳いで攻めてくるには

流石に不利

滝壺に落ちれば命すら危うい…だからだれもそんな戦法は取らない



左は一本道

魔方陣、

実習の敷地内と外を分け隔てたそれが壁になって細い道幅

二人が肩を狭めなければ並べないほどの幅、

万が一攻めてきたとしてと一人一人相手取れるから対処がしやすい




余計な体力を使って、潜伏しやすいが例年使われてきた場所

頭の良い奴らにはとっくに調べがついている

そんな場所を確保した所で疲れきってしまう

知られている場所だから敵襲の可能性も跳ね上がる

…易々と寝てもいられない


そんな場所を無理して確保するより、

競争して疲弊して辿り着くよりもここの方がまだましだ


オニキスや他の二人は戦闘に向く方だ

左から攻められれば逃げ道はないが…その時はその時

それを見込んでここに野営地を設定した

それも皆には話して納得していたのに…


何を聞かれても支障はないが…

今更何を話せと言うんだろうな、オニキスは




さてと、その辺に転がっていた倒木を組み合わせて

岩の上に低い柵のあるベットのようなものを作り終えた



組立式のポールを立て、

それを覆うように側面と屋根も張り終える

茶と深緑の迷彩柄、勿論私物のシート

軽量薄型、防水性も良い…カモフラージュに最適な物だ



開けた前方は魔方陣の壁が見える


ベッドから少し離れた場所

そこに平たい手頃な石を持ってきて、

オニキスに松の葉

その下に拾ってもらった小枝を並べる

火付け石を鳴らし、火種を作る

それと残った枝を細い物からかき集め組んでいく


そして火はついた

ゆらゆらと炎が揺れる

掻き消されるような風は背後のシートもあってか吹き込んでこないが…


念のため夜も火を焚き続けることも雨になる可能性も考えて、

高く三角に組んだ木に予備で持ってきた迷彩柄のそれを二辺に被せる

勿論暖かい空気が、ベットの方へ来るようにだ

焚き火の光は多少漏れるが仕方ない

そこまで冷え込まないとは思うが…な

安全に安全を重ねたいが、体温低下よりはましだ





よし、

…出来た

魔力を一切使わなくても出来た!


魔力を使えばばれるからな。

例え微弱でも…確かその感知を得意とする人も俺らの学年は例年より多いと言っていた。

感知されてはここまで手を込めて三日ないし、四日間

ここでぬくぬくと過ごす予定が狂うのだ




「あの」

「ありがとうございます。大枝は張った屋根の上に、

木葉と細かい枝葉はこの木の枠に入れてくれますか?」


「いいよ?」


そう言って入れてくれたが…

少し足りないかな…


目で分かったのだろう、

目配せされる。

今度は二人で枯れ葉や木の枝をかき集め枠一杯、

屋根もまんべんなく覆えた




落ち葉のベット

踏みしめて、小枝を折る

その上から更にこんもりと落ち葉を敷き詰めて痛くないようにする

最後に残っていた枝を下の方に沈め、

上から寝転がって安全を確認する


「よし、もう良いですかね。

ここに寝袋をっと、カルサイトさんのもここに広げてください」


「うん…分かった」


二人分で良い

夜寝るのは同時に二人

一人はここで、もう一人は少し離れた野外で監視する

昼は見晴らしが良い

雨でなければ…一人でも事足りる



「二人を呼んできてくれますか?

そろそろ、同じ道を追随するグループの可能性も低くなりましたし…戻ってきたら二人に変わってここで見張りをお願いします」

「分かったよ、呼んでくる」


気の良いやつ

俺の指示に従ってくれる

確か…伯爵家の嫡男だった気がするが…

まあ、考えるのは実習が終わってからだ



「さて、水を沸かしてっと」

三角に組んだ木にフックをつけた

そこにコッヘルを掛けていれば…足音


カルサイトさんが伝えたようだ

見張りを交代する、その意図は…

休めと俺がオニキスに目配せ、寝袋の方に視線をずらしただけで済んだのだから


「…見事なもんだな」

「ありがとうございます」

「…」


「どうされました?」

「このために集めていたのか」

「ええ、火種に松やにが最適ですから。

火起こしに魔力を使わない為です」


テント内、あまった枝葉や松の葉、ついでに先程拾った松毬もネットで吊り下げている

「へえ…考えたな」

「知識はありましたから…ここ数日練習しました」


「合点がいった、オニキスが俺とカルが気に入るっていってたのは強ち間違いじゃねえな」

「だろ?」


「で、これは防寒の為か?」

「ええ…もう少しすれば火の熱と煙で虫も居なくなります、乾きます。

快適にとはいかないでしょうが…三日ないし、四日間はこれで我慢していただけますか?」


枯れ葉の上だ

近くに立っているカルサイトと、二人に向かって言えば

吹き出すオニキス



「分かってねえな、オリゼ。

野外での演習で、そんなことを気にするようなやつ俺が組むと思ってるのか?ましてここ一年野性味に溢れた友人と組ませるわけがないな」


「…左様で御座いますか」


納得するなら良い

それにそこまで言われたら、気も楽だ。

用意していた紅茶の茶葉を沸騰したお湯にそのまま淹れる

急須だの、なんだのは流石に嵩張って無理だ

ソーサーも無いが、

昔ながらのスタイルでいかせてもらう。


オニキス曰く、この二人は文句は言わないのだろうからな…





「で、二人の疑問はこれらをみれば少し解けたのだろうが、

その大きい荷物は食糧か?」

「勿論です。三日間ならばお腹一杯に、伸ばせば四日間普通に食べられます」



「で、雨があがればここを畳んで弱った敵を討ちに行くつもりか。

その頃には食糧は胃袋の中、その大きな荷物も俺らと変わらない位になる、

ジルコンやカルサイトが不安に思った機動力に影響は出ない…そう言うことだな?」

「ええ…その手筈です」


オニキスが質問する事に答えれば…二人とも頷き、納得している様子

これで…質問は終わりかな…

黄金色に染まった、お湯

それが入ったコッヘルを火から下げ

茶葉が入らないよう、上澄みを掬いシェラカップに注いでいく



三人に手渡していく

この人達にとっては茶葉の質も味も劣るだろうが…

人心地ついた様子で満足した


最後の一杯、

自分用のそれには底に残った茶葉が入ってしまったが

それでも普段よりは良い茶葉

良い味だ…

それを飲みながら

自身も一心地着いたのだった



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