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帰省12


PV15000達成(*´ω`*)

ブックマークも評価も3倍程増えました。

ありがとうございます!

これからもこの作品を少しでも楽しんでいただければと思っております(*´∀`)

頑張ります!(当社比)






暗い…

床に接した半身が水を吸って冷たい

お腹…空いた 



どれ程時間が経ったのか分からないが

扉が開くことは一度もない

このまま蟄居させられるのか…

そんなことはないと、そう思っていてもそう思えてくる


反省するまでと…父上が

いや、俺自身がそうしたとしても

どうであれ…

反省していないと父上が判断すればずっと…



怖い…

兄上が言う通りにしておけばよかった。

自ら手から溢れ、離したアメジストの原石は…

次男としての証しはもうこの手にはない



あれだけ諭されたのに…

兄上に心配をかけた

結局は優しい兄上…父上とぶつかっていないだろうか

俺に対して見せる顔も、

厳しいが裏にあるのは必ず俺に対する親愛


ここまでの事を

兄上が俺に出来る訳もない…

…いや、出来なくはないだろうがそれは本当に最終手段だろう



父上と母上にしても…

厳しいが、

それは俺が間違っているから…









またか…

目を開けても変わらない光景


お腹…空いたな

麻か、

濡れた服が締まって、貼り付いて身動きが取りにくい

遊びはあるが、体に支障がでない程度


…やはり格子の向こうは見えない

誰かの足音も、気配も期待することすら出来ない

光を通さない、

そのせいで暗闇がずっとこの空間を支配している


きっと父上の意図は

…母上がなにも口を出さなかった理由は

俺が天邪鬼だからだろう


屋敷の侍従をその手で痛め付けてまで…

俺が俺を蔑ろにした結果を見せつけられた

反省を促させられた

そして、甘やかす兄上を退けさせて…

その意思が反省が…揺らぐことのないようにここに入れたのか








気だるい…

目が覚めても、朝日は昇らない

暗いまま…朝か夜かも分からない



…水…

仕方ない


床を舐めるしかない、な

空腹で胃が痛い

声を出さずとも…水分を失った喉が痛い


少し湿る口内

開いた拍子に出た唾液で喉が慰められはする


空腹を誤魔化す迄の量はない

…辛いな

四人はちゃんと手当てを受けただろうか…

あのまま止められなければ…

焼き印がされれば

それを想像しただけで体が震えてくる


傷だらけの背中…

玄武の血が滴った掌…

鞭打たれても、

水をかけられても、

…何一つ抵抗などしなかった



それが見られていると、

父上が壁を取り払い…担当である情けない俺を認めれば…


皆…

どんな仕打ちを受けてもと

俺を守ろうとした…

ボロボロの体を意思だけで持ち直し、

口上すら…

ほぼ主人の父上に歯向かうような…物言いだった


ごめん

…皆

少しは…報いるから…










殺す…殺す殺す殺す


俺より才の無い兄が、長子と言うだけで嫡男か?

異論を呈しても皆、俺に賛同しない

父や周りに気を使いやがって…表立ってそう言わないだけ

心の内では

俺が次期当主に相応しい、そう思ってるはずだ


この男爵家のためだ

だから兄を排除しようとしただけ

邪魔立て等何故する?

静観していれば、お前らの希望通り俺が当主になる!


何故だ?

それなのにどうしてこうなった?

どうしてこんなところに閉じ込められないといけない!

俺に相応しいのはこんな地下牢ではない…

ここで終われなどするものか!


出せ!

静観すらせず、兄や父についた

裏切ったやつは全て殺してやる!


今すぐ俺をここから出せば、まだ間に合う

当主になれば全て上手く回して見せる

あの時、兄を切り捨てたその判断が正しかったと、

皆が口々に称賛するだろう

やはり俺が当主になってよかったと、

他の貴族達もこの男爵家の繁栄を見て羨むだろう!


ほら…

足音が聞こえる

誰かやはり俺の考えに賛同するやつが、

覚悟を決めて来たに違いない


…さあ、早く出せ

褒美をくれてやる…俺の才能と手腕でついてくるだけで甘美な思いをさせてや…




…ごめん、君が先に生まれればこんなことにはならなかったかな

ごめん、守ってやれなくて

ごめん、ごめんね…


こんな兄で…

いいよ…別れは済んだよ

うん、




止めろ、何してる

手を離せ…このゲスが!

許可なく使用人ごときが俺に触って良いわけがないだろうが!

刀?

まさか!

ここで俺を殺す気か?

この俺を?

なんで…俺の…っむぐっ




ザシュュ…


っ…

夢、か?

冷や汗と共に飛び起きた

…いや、飛び起きるのには失敗したが

俺を含め、誰も訂正等必要とはしないだろう



文献…

何代前かの嫡男か

それと優秀な次男

何処か頭に思い浮かべながら寝落ちしたのがいけなかった

憑依した、いや当人であるような夢だった


夢だ。

俺は…俺だ


兄…

違う…兄上を殺そうなんて思わない

俺は兄上より才能はない

当主になろうとも思わない


だから…



ギィ…

っ…そんな

なんで今扉が開く?

もしかして…


「オリゼ様?」


「嫌だ…ころさ…やだ…」

「オリゼ様!」


「ひっ…」

手が肩にかかる

殺される…刀で…首を、落とされる

嫌だ

兄上…父上…俺は

なにもしてない…あんなやつじゃない

やだ…やだ…



「オリゼ様…オリゼ様?」

「ひゅ…っ…はっ…」



「申し訳ありません…」

「うっ…」


首筋に痛みが…

そうか、殺された…か

遠退く意識に

暗く常の闇が手をこまねいてきた




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