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日常18




暫く

もふもふと敷布とクッションに肌を擦り合わせゴロゴロしていると、

俺のくつろぎ様に悪友も侍従の二人も肩の力を漸く抜いたようだ




「オリゼ」

「んー?」


「負けたよ」

「ラピス?なにが?」

埋めた顔を上げて

振り返ってこちらを見ているラピスを見返す




「テスト」

「何言ってるんだ、二人とも俺より順位良かっただろ…遥かに」


「よく言うよ、ねえオニキス?」

「だな、剣術を抜けば大差ないんじゃないのか?」


「各講義の点数もまだ知らないのに?

順位が僅差でも点差が開いてるかもしれない。

それに、剣術を抜いたところでってそれも甘味した上での勝ち負けだろ…」



「そうだけど…」

「前年度、まあ前期は除いてだ…あんだけ大差あったのを縮めた上、僅差だ。実質お前の勝ちみたいなもんだろ?」



「…そういうのはいい。

俺が放棄して、腐って引きこもった間の…お前らの努力を帳消しにするような発言はするな」


オニキスの言葉が琴線に触れる

何言ってんだ?

サボっていた間の物を取り戻しただけ。

多少の無理はしたが、それも自身の怠慢のせい

勉学に励んだ時間も前年か、今年かの違いだけ

自らを棚に上げて俺を評価するなんて、

八百長も良いところだ




「ふふふ…オリゼらしいね?オニキス」

「ああ…そういうところ嫌いじゃない」


こちとら眉を潜めているってのに

何和気あいあいと急にし出すんだ…

てか、聞きそびれていたことがある






「ラピス」

「どうしたの?」


「ルークはどうした、ここに居るってことはやはり許してやったんだろ?」

「んー、まあね」


「なら良いが…どうせ手酷くしたんだろ?」

「甘かったと思うけど、ねえルーク?」


「…はい」


いやいや…

肯定しか選択肢がない問いだろうが…

そもそも、

そんな事がないことが分かっててこちとら聞いてるんだよ

どうみてもその時の事を思い出して縮こまってるじゃないか…

あの様子じゃ…不安もあるだろうしな

ラピスに本当に赦されたかって…


絶対不安定だろ、

取り繕って一見普段通りのルーク

すましてはいるが

何処と無くあの高飛車な自信もキレもない



「ラピス」

「…こういうところ、本当に鋭いよね。

人の機微って言うかさ…まあいいよ…

実家にも通達済、解雇はしないって確約も俺の手で再教育も済んだって見なしも得ているから大丈夫。」


「成る程、でラピス自身は?」

「…言わないとダメ?」


「駄目」

「…仕事に関することの罰は済んだし、二の鉄を踏むような馬鹿を傍に置いているつもりはない。その他の件は元から許してるよ?」


「なら良いんだけどな?…ラピス、紅茶おかわり」

「もう…良いけどさ、ルーク」


「はい」


給仕する姿を見ながら思う

これで本来の…

主従関係に戻ると。

一線を引いたルークに、それを知った上で見守るだけのラピス

その溝を埋めようと相互が動けば良いはず…

なのだが、この二人では変に遠慮しあっていて埒が明かない

そういう性格だしな…


何やってんだかな…

あの時から時間も経っている。

まあ俺にとってはこの状態の方が楽ではあるが

そのままって訳にもいかないだろ


何よりラピスには生き生きしていて欲しい

そしてルークにも…

…己の身に被害があることは承知の上でだ




「どうぞ、お召し上がり下さい」

「…どうも、良かったなルーク」


目線で直接サーブしろとラピスが言う

その指示通り、寝転ぶ俺に手渡してくるが…

事務的な敬語ではない

…少し感情の乗った言葉に苦笑する


俺にそんなに改まってくれなくても良い

あのつんけんなルークに慣れているせいか、

そんな態度をとられても居心地が悪い

まあ良かった…


これで安心して帰省出来る



家に帰れば社交界も挨拶回りもしない

手紙も書かない

この二人に接触する機会はない。


だからこそ、

ルークの件だけは解消しておかなければ

自身の案件に集中出来ない

そう思っていた…




「で、満足したの?オリゼ

僕らの心配してさ…するべきは自分のことじゃないの?」

「ったく…俺の傍仕えも丸め込んでくれたしな。

本当、無意識と言うか感覚に任せた行動には敬服するぞ、

なあ、ビショップ」

「主…そう、ですね」




「なんだ?皆して…」


事は終わったと

添えられた角砂糖をそのまま口に入れ、

一口、二口と紅茶を啜る

口内で崩れながら甘味を広げていく

それに集中していれば何やら好き勝手言ってくれている



「ふふふ…ありがとね、オリゼ」

「…何の事だか分からないな」

「オリゼのそう言うところ、僕は好きだけど?」


「ちっ…俺はただ顛末が気になっただけだ」

「ふーん?オリゼがどういう意図であれ、結果は結果。

それに感謝するのは僕の自由だよね?」

「言ってろ…」


「素直じゃないなあ…ねえオニキス」

「元からだろ?何今更言ってんだよラピス」

「それもそうだねー」



二つ目の角砂糖

紅茶によって滲み出す純粋な甘さに

二人の会話を放棄して無視することにした





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