表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
179/300

日常17




くたくただ…

詰め込まれた5講義分に勘違いでなければ

少々…レベルを上げたテストの解説


すっかり暗くなった外

その中をとぼとぼと遅い足取りで進む

夕食を済ませて、寮の自室へと漸く帰った







コンコン

「入るぞ?」


「お邪魔するよ?」



遠慮ぎみに開かれた扉

簡単に講義の復習をし、椅子にもたれた瞬間だった


侍従に見張らせてたのだろう、

…やはり、寮の前でビショップにすれ違ったのはそれだったか





「勝手にいつも入ってくるだろ、今更だ。

…二人してなにをそんなに遠慮してるんだ?」




「あー、だってな?」

「その、大丈夫だった?ごめんね?」


「気にするなって言ってるだろ」


そう言っても顔を合わせて…

座りもしない、いつまでも扉前でそわそわする悪友二人


…ちっ仕方ない




「詫び入れたいならその手にある甘味で十分だ。

さっさとベットに座れ、侍従が仕事できないだろ」


机の上を片付ける

結局兄上にも…そして今二人にもバレたし今更引き出しにいれていても意味がない、

保存食の入った瓶やインク

雑紙も元の位置、使いやすい場所に置く




明日書庫に行って返却する分を纏めておく

細かい時間を縫って読み進めておいてよかった、

昨日の晩、現実逃避するように読んで漸く全て見終わったのだ…


それと…実家で予習復習する基礎講義の教本、

安い方の筆記具を纏めて肩掛けに仕舞う

後は使用人部屋の方で少し入れれば荷物の準備は完成する


後数日の基礎講義は

筆記具と残り少ない紙に教本一冊

風呂敷で賄える…か




「オニキス…座ろう?」

「あ、ああ」


漸くか、

動く気配に俺も立ち上がりベットの方へ向かう




「俺も入れろ、横になりたいんだ」


少しずれたオニキスの隣

疲れて眠たそうだが、

仮にそんな雰囲気が出ていたとしても言葉には出さない、

そして寝ない


久方ぶりの気持ちのいい布地

まあ、昼間に初めて座ったがそれはそれ

寝転びはしていない

ベルベットの肌触りのいいクッションを枕にする

最高だ…




「オリゼ、ごめん」

「あ?それさっきも聞いた」

「でも…」


「何?人質になったのなら気にしなくていい。

そもそもあの状態の兄上に勝てはしないし、バレて罰を受けようとそれは元々俺が受けるのものだ」

「ごめんね…」


「そんなこと気にするなら、そもそもお前らとつるんでない。

で?オニキス甘味はなに?」

「…マロングラッセだ」


「ふっ、気が利いてる…俺の大好物だな?

我が儘言うならついでにダージリンも欲しいかな」


傍で控える侍従二人も立ち尽くして何してるんだか…

マロングラッセがオニキスからなら、

紅茶はラピスから。

ルークにちらりと視線をやる



「いいよ、それくらい。

ルーク、ついでに俺らのも淹れてきて?」

「畏まりました」


俺の視線にラピスも気付く

指示を出されたルークが部屋から出ていくのを眺め…

静かなもう一人に話しかけるか…手間がかかるな

本当…




「で、オニキス?」

「なんだ…」

「変な風に思うなよ?俺が良いって言ったら良いって分かってるだろ?」

「だが…流石に、な」


「なら明日、剣術付き合ってくれたらいいよ。

きちんと使用許可貰って来て。それでチャラ、良いね?」

「ああ…分かった」


「ラピスも分かった?」

「うん…ごめん」



まあ良いか

オニキスが復活すれば少なくとも話は進む

クッションをかき集め、背もたれにする

そこに埋もれながら暫く、もふもふにまみれて楽しんでいれば

ルークの声



運ばれた紅茶はテーブル

マロングラッセもテーブル

手が届かない

さてと、王様気分でも味わいますか…


「オニキス、一個取って」

「あ?ああ…

で、…何された?あの人のことだ、学園での生半可なものじゃないだろ?」

「されてない、される予定ではあるけど?

…うま、この味この味だよ」


半場横になりながら受けとり

一粒そのまま口に放り込めば…広がる渋味と栗の甘み

洋酒の風味が鼻を突き抜けていく



「…そうか、そりゃあ良かった。で、予定ってなんだ?」

「知らない、まあ多分学園と同じだと思うよ?

学園で受けるより多少の手心は加わるかもしれないけど。兄上は規律に準じる筈。まあ…想像してるくらいのもので収まる」


「…オリゼ、それは…

…それはかなりのものじゃないのか?」

「キツイけど、まあそれだけかな…私刑のほうがずっと怖い。

で、二人は食べないの?」




紅茶にも一口つけただけ、

他の茶請けにも手を伸ばさず食べていない悪友

これじゃあ侍従も肩を落とすのも仕方がない

何処と無く凹んでいる二人

それが全てではないだろうが一因であるのは間違いない


ま、放置しても大丈夫そうだ

そう思って

再びオニキスに向かって手を突きだし、おかわりを要求する

手にのせられたそれも口に放り込んで咀嚼する




「…私刑ってなんだ?」

「あー、知らない方がいいこともあるよ…オニキス」

「帰省するんだろ?」


「するよ…流石にね」

「この前の件、追及されないのか?」

「がっつりされるみたいだけど、それが?」

「…いや、な?」



「悪いけど、今回は来ないでね。

去年みたいに遊ぶ暇無さそうだから、来ても構えないし会えないからね?」

「…」


「オリゼ…遊びに行くのは駄目なの?」

「暇がない」


心配そうな顔をするオニキス

これはもしや…と思って釘を刺せば懸念は当たる。

ラピスも分かっている筈なのに聞いてくる、

心配してくれているのは分かるがこれはお前らが噛んで良い話ではない



「オニキス、それにラピスも。来るなよ?

手紙も送るな、返信は書かないしそもそも読む暇がない」

「それって…どういうこと?」


「ラピス?ああ…、きちんと休み明けには学園に戻ってくる。心配要らない、その後もお前らとつるむ気もあるから安心しろ」


「うん…」

「オニキス」

「ああ、分かった…行かない」





その返事を聞いて

手を突きだせば、

ソーサーごと紅茶を手渡してくるオニキス

一口

…青龍も上手いが、ルークも良い仕事する


ふわり

その上品な香りが立つ

適度な渋味とコク

琥珀色の色も、茶葉の全てを引き出した結果だ


もし時間があるなら、

紅茶を淹れる練習もしないと…

そう思いながらも

そんな上手に淹れられた紅茶の残りをごくごくと飲み干す

礼儀作法もあったものじゃないが

喉が渇いていたんだ…そして美味しいならなおさら進む

直ぐに空になったそれを突き返して、クッションに沈んだ





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ