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日常11




…震えているのは足先からも伝わってきた

崩れ落ちて床に丸まる弟に、

小刻みに動くそれを…

可愛いと思ってしまう



強制させたのは俺だが、

どんどんと力なく返ってくる返答は普段ならば天邪鬼で言わない台詞

気質は素直なくせに、口先や態度は突っぱねてばかりの拗らせた弟があそこまで従順だったのは

…やはりあの二人の友人のお陰でもあるだろう


無理矢理に本心を認めさせられた反動か、

…それとも俺が怒ったせいか

まあ、どちらも真っ直ぐな心根に、曲がった言動の弟には負荷が大きかっただろう


だがそこまでしてやらないと、

吐かないし、放置すれば更に勘違いして拗らせていく

本当に手の掛かる…




「青龍」


「はい、ここに」

「甘いものとココア、俺は普通でいい」


「…畏まりました」

「なにか?」


物言いたげな傍仕えに問えば、

ちらりと視線を弟に落とし、俺に微笑む


「…言いたければ言って良い」

「では…単に微笑ましいと」


「…青龍」

「10分程お時間をいただけると、好みの物がご用意できますが…いかがなさいますか?」

ますます笑みを深める傍仕えに

白旗をあげる

俺が弟を可愛がっているのは知っている



そしてここに来ることは予定として知っていた。

その上で俺が普段食べない夜食を用意しておけと指示したのは、

…オリゼの好みの物を用意しておけと言ったも同然

過去の経験から準備は万端であろうに…


10分、ね…

状況に応じて、

俺が選択するメニューを予測していたに違いない


仕事は出来るくせに…

敢えて口に出すとは本当に食えないやつ

…剣呑な目をやれば、会釈して出ていく始末

分かった上で言う

俺への確認ではなく、弟へ聞かせるための発言

大概…俺の家の人間はオリゼが可愛いくて仕方がない

使用人も俺の傍仕えを筆頭にファンが大勢いる…




だが…本人には全く…

逆に嫌われているとしか思われていないから皆報われていない

それもそれで面白い、弊害が無ければ…だが


その中でまだ…

辛うじて俺にはなついているが

少し絞めればこれだしな…


簡素な、絨毯も敷かない板張りのままの床

張り付くように顔を隠している

このまま俺が去ったら直ぐに立ち上がるだろうが、

それはしてやらない







「オリゼ」

「…は…い」


「ベットの方へおいで」

「…はい」


明らかに拒否の色が混じる声音


甘えるのが苦手

多分泣きそうなのを必死に堪えている、

その顔を見せたくないのだろう、昔みたいに甘えれば楽なのに…難儀な性格だ



もう既に言いたいことと、確認は済んでいる

が、この様子だと多分脅しはまだ有効だと思っていそうだ

…まあこのままにすれば楽ではあるが、

これ以上は弟にとって酷だろう…






もそもそと動く弟を見ながらも立ち上がり、

ベットの縁に座る

この簡素な…貧相とも言える部屋の内装

その中でベット周りだけ…調度品が違うせいで異様に浮いている


あの二人の友人が用意したんだろうな

簡素な机と椅子が一つではお茶もできない

そう考えて用意したのだろう…

その予想を証明するベット前にある丸テーブル、

それがお茶も雑談も出来るようにこの部屋の環境を

三人でたむろ出来るように是正している


悪いが、利用させてもらうよ





見ていれば

漸く立ち上がり、ベットに腰掛ける


俺の側にではなく、

…壁ギリギリの縁に座った弟。

その様子に溜め息が漏れたのは仕方ないと思った




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