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日常8



不味い、

いや味付けがなく、旨味もないそれを平らげた。

空になったコッヘルを洗い、

それにお湯を湧かし隣に向かう



熱湯を桶に入れ、柄杓で水瓶から水を注ぐ…

そうして出来たぬるま湯を浴び、石鹸で体を清めれば

汗と土にまみれた感覚が拭われていく

サッパリした…


乾燥魔法で体を乾かし、

髪を結わえながら更衣室を出れば…




「オリゼさん」

「…ビショップさんに、ルークさん…どうされましたか?」


「主人が後で部屋に伺うと仰られていました」

「同じく…話がある、部屋で待っていてほしいと伝言を預かりました」



「そうですか…承りました」


…隈が出来ているルークに

何か歯に物が挟まったかのように言いづらそうに言うビショップ





何か、ある

ルークが疲れているのは、ラピスに罰を受けたからかもしれない

だが…それではビショップの説明がつかない



そもそも、こんな事する必要はない

いつもなら入室許可もそこそこに部屋に来るじゃないか…

後でと言うことから緊急でも無さそうだ


…やはり

兄上か?

返事を返し部屋に戻りながら歩くも

後ろから付いてくる二人

この先に用があるとは思えない


つまりは…

俺が部屋に入ったらそこで待機するのだろう

俺が使用人通路側から、部屋から出ないようにするため

想像するに…

既に表通路は塞がれているかもしれない



何事もなくすんなりと部屋に入る

そう思ったのだろうが…

扉のノブに手をかけて動きを止める

…背後、息を詰める気配がする



「…私が了承しなければどうするおつもりでしたか?」


「説得しましたね」

「…頼む、だけだ」



  

「はあ…そもそも、態度が固すぎます。

私ごときに悟られてどうするのですか?子爵家の傍仕えあろうものが見習いに…」


甘い

対処するには間隔が空きすぎている

逃げようと思えば逃げられる状況

要のルークがこんな様子では…いやビショップもか

散々俺が抵抗するのを見てきた筈だ

一筋縄でいかないとは思わなかったのか?


まあいい

深い溜め息を置いて…

それだけ言い放って、部屋に入った






机周りを片付ける

質の悪いインクも紙も、瓶も全て引き出しに仕舞う

ラピスやオニキスに見られるのは…仕方がない

だが兄上に見られるのは勘弁だ


見咎められる程度の前回ラピス達と買いに行った物はまだ良い

既に例え悪友二人から聞き出していたとしても

おかしくはない

…だが、

これらは格が違いすぎる、今日買ってきた物は流石に…不味い

嗜められる事では済まない


貴族子息として疑われる

それも身内が…弟がそれをしていたならば

繕うくらい、隠すくらいしておかねば

引き出しが暴かれれば…諦めるしかないが


ガチャ…

鍵が空いていると思ったのだろう…

片付けが済んだ瞬間だった

間に合ってよかった

そう思いながら部屋をもう一度確認する


これで良い

妥協点には達している

今できる限りの事は…出来た筈だ



コンコン

「オリゼ?入れてくれ」

「何で鍵かけてるの?来るって言ったじゃない…」


「…少々お待ちを、すぐに開けます」

うん

明らかにおかしい

声のトーンも普段の雰囲気でもない



そんな切羽詰まったような悪友を迎え入れる訳でもなく

踵を返し…使用人部屋の方へ…

通用口に続く扉を開ければ



「…やはり、ですね」

先程からずっといたのだろう…

侍従二人が立ち塞がるように控えていた


「…申し訳ありませんが、部屋にお戻りいただけると幸いです」

「俺…いや、私からもお願いする」



「…お二方、入ってください。これ以上そこに居られても困ります」

そう言えば懸念を示す二人

ここで時間を浪費している暇はない


「…言い方を変えましょうか?

話し合いは長くなるでしょう。貴方方の主人が同席した場合ずっとそこで待機されては噂になります。主人の面目が立たなくなることを好ましく思わなければ入ってください。私の監視ならばこの使用人部屋からも出来ます」



「…分かりました」

「な…何時から気づいていた?」


「最初から、ですね。ルークさんは私が違和感を感じても指示に従うと思っていたようですが…甘い、本当に甘い。

もしもの時、どうするつもりでしたか?手抜かりないのが貴方の真骨頂でしょう?」


眉を下げるルークに一目やり、更に追い討ちをかける

確かに恩はあるのかもしれない

だが…俺相手に遠慮してどうする?

万が一ともなれば、主人になにかしら起きるのだろう事は想像している筈だ

動揺するビショップに構わず、

部屋に通し、鍵を閉める


「それは…」

「これは私のただの八つ当たりです、気にする必要はありませんし、これで恩はチャラになりました。今後、そのような遠慮は要りません」



何か言いかける

が、これ以上構っている暇はない

足早に反対側の扉へと向かう



「お待たせしました…どうぞお入りを」

扉を開ければ…

兄上とその後ろに気まずげな萎縮した悪友二人が立っていた




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