表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
169/300

日常7




気が重い…

…食べる気が失せた

折角作ったが、温め直せば良い

晩飯に回そう


そう結論付けるやいなや

瓶とコッヘルを持ち、

部屋に戻る

机にそれを置くと代わりに剣を手に取った





気分…切り替えよう

練習しようとは思っていたし…

丁度良い


風呂敷をポケットに突っ込み

サバイバルナイフも剣と共にベルトへ差す

最後に水筒を握り部屋を後にした





木々に囲まれて、

いつもの開けた場所でひとしきり型の練習をした


…お陰で気分も晴れたが

ただ、こめかみを流れる汗が気持ち悪い

袖口で拭いながら

出掛け様に給湯室で汲んだ水筒の水を煽る



さてと…

風呂敷をポケットから取り出して倒木から立ち上がる


少なくなっていた蒲公英コーヒー

目につく物を採って

ただ、群生しているところは少なくとも一株は残す

次の年…そこに生えなくなってはただの環境破壊だ

自然の営みを利用させてもらっている

そう講義で習った…

種の保全

どの野草でも手当たり次第根こそぎ採るな


その教えは…

守らないと

風呂敷に摘んだそれは…少ないが仕方ない




風が汗を冷やしていく

ぶるり…

土を払い、立ち上がれば空はもう茜色

帰るか…

早く汗を流したい





そう思い、寮へと歩き始めれば

軽く減った腹が訴える


ふふっ…

軽い笑いが漏れる

現金な物だ

どんなときでも結局は生命維持のために体は動く

死にたいなど…結局は

自己を拗らせた戯言にしかならない




自殺願望…それを真にするにはやはり躊躇を覚える…

まだ俺は俺を諦めきれない。

それを自覚させられたのは周りに俺を想う奴等が居たからだ…



楔になった殿下…いやマルコ


支えるなんて、気障(きざ)な言葉など口にしない

代わりに…家業や裏人格まで持てるものを惜しみ無く引きずり出して迄、

…俺を留めようとする悪友二人


家名を残すだけはしてくれた両親

色眼鏡なく俺を見て…講義をする教授陣


酷い仕打ちをし続けた、侍従二人

ただ気まぐれかもしれない一回の恩に水に流したルークにビショップ…


不出来で、

失敗をしても見限らず指導してくれるアコヤ


あんな態度を取っても…

見限られても良いと、そう振る舞ってもいつも何処かで見守ってくれている兄上





俺が俺を見捨てようと

…その度に掬い上げる


鬼畜な所業だ

諦めるな

逃げさせない

そう…楽をさせてはくれないのだ

分かっている

それが想われているという事だと



だから…

応えられるだけは

今からでも俺が持てるだけの力で返していく

そう、木々の囁きに乗せて誓った






………


部屋に戻り、早速行水しようと…

が、

失念していた。

コッヘルは部屋を出る前と同じ

…謎の料理で満たされている


仕方ない

食べてから汗を流そう

温めている間に蒲公英も処理できる

残り少なくなった魔方陣を描き貯めた紙を1枚

半分入った蒲公英コーヒーの瓶を手に取った



コッヘルを火にかけてから、

風呂敷から取り出して土を洗い流す

サバイバルナイフで刻んでいく

前回と同じ

慣れたせいか…温めが終わる前に終わってしまった



次第に沸騰する

お湯に踊る具材…

頃合いか

火から下ろして部屋に引き揚る


湯気の立つ味のないそれを

…胃に流し込んだのだった



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ