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殺陣3




突き立てたままの剣

それを引き抜いて目を瞑る


元々は練習に来たんだ

外野は居るが…恥じらっていても仕方ない

拙くても、恥じて時間を無駄にするよりはいい

見られたとして今更だ


きっとラピスには…

気を抜いたオニキスにも容易に分かるくらい、

俺が手を払う速度は遅かったから反応出来たのだ

鈍っている…

彼処まで余裕を見せつけられるまで実力差が開いている…

昔は、

そこまでではなかったのに…




深く、ゆっくりと呼吸を整えていく

精神統一

風の音…周りの葉が擦れる音に気を向けていく

左から聞こえる二人の談笑を、雑念を

自然音として組み込んでいく








「ねえ、オニキス」

「…ん?なんだ」


「これって…思ったより良い兆候だよね?」

「確かに昔の姿に近いかもな…本当に、努力家だ」



急に立ち上がったオリゼを目で追えば、 

何をするかと思えば…



剣の練習を始めた

その様子を暫く

何の会話もなくただ眺めていた


そう言えば…練習すると言っていたな

ただ、こういう裏の努力を見せることは好まなかった筈だ


一緒にやろうと誘っても断固拒否された…

格好が悪いと、そう言って。

それが実らなかった時、

努力なんて何もしてこなかったからだと言い訳が立つ


確か…まだ脱け殻になる前のオリゼが

ニヤリと笑っていた顔を思い出す


何時だったか…そんなことを言っていたな…

心境の変化か?

何かあったのか…

そう…丁度思っていた時だった




ラピスの問いかけに

無心で…いや、集中して型の練習をしているオリゼから目を離した



「見せなかったよね、滅多に」

「ん?」


「知ってはいたけど…」

「ああ…言わないし見せないけどバレてるよな」


「バレてる?」


「そういう裏で努力すること。昔は俺らに負けると、暫く遊びに誘っても断ってきたよな?

何してるんだろうって…尾行してみれば書庫の机で何時間も」


「そうだねえ…休み前のテストだっけ?

ああ、僕に負けたんだったよね…算術」





「…俺は負けたけどな、苦手だとか言っておきながら上位だった」


ケラケラ笑うラピスに、

思わず…苦々しい顔になる。


講義についていくのがやっとだと…

講義後は必ず教授に質問しに行っているんだって、

分からないところを聞くのだと…


そうオリゼが言っていたから…

てっきり下位だと思ってしまった





「まあまあ…そう怒らないでよオニキス

あれは嘘をついてた訳じゃないの、分かってるでしょ?

書庫の件もそうだけど…さ」



「ちっ…分かってる。

ああ…そう言えば今年中等部に上がったのか…兄が居るだろ?

たまに顔を合わせれば…突き放して何とも思っていないように振る舞ってた」


「あー、居たね…

男爵の嫡男にも関わらず、初等部を首席で卒業したんだっけ?」

「そうそう…何時も背中を追っていたよな

本人はそんな素振りが筒抜けなのも…バレてないと思ってるだろうが…」





「ふふふ…確かにね!あれが可愛いんだけど…多分オリゼの兄さんも分かってるよね…

確か…"兄上が足元にも及ばないくらい俺の方が上に行く、俺を心配して見に来る暇なんて無いだろ、帰れ"だったっけ?」



「くくく…笑わせるなよ、ラピス!

あの時だろ?講義の暴発に巻き込まれて医務室に運び込まれたやつだろ?心配して俺らが見舞っていた時に来たんだったよな?」



「うん、何度か風紀の取締りで僕らがなんだっけ?

悪事の引き際を謝って事が露見して反省室に入れられたときも…

噂通りの冷徹さだったけど、

…オリゼを見る目はちゃんと温度があった」




「…あー、あの時はしくったよな」


遠い目に思わずなる

人だかりが出来、逃げられなくなった。

事態の収拾にか、誰かに呼ばれた風紀の世話になった…

そのなかにオリゼの兄もいた…

そりゃそうだよな、副委員長だったか

弟の名前が騒ぎの中にあれば…下に任せず駆けつけるだろうな



鬼の形相だった… 

俺らも他の委員に容赦なく事となりを聴取されてはいたが…


オリゼを問い質す兄である筈の副委員長の姿は…

修羅だと言っても過言ではなかった。


正直、俺の相手でなくてよかったと…その様子を見て心底思った

見ていたのを感じたのか、安堵を悟られたのか…

オリゼから目を離し俺の顔を見て、

何やら俺に対応していた委員を手で呼び寄せ指示を出す

…戻ってきた委員は使命感に溢れるように

そのまま引きずるようにして…

結果直ぐに反省室まで運ばれ、ぶちこまれた



もれなく、ラピスもオリゼも反省室行きになったのは

出てから確認はしたが…

オリゼはともかく、ラピスもなにかしらやられたようで…

互いに三人とも口をつぐんだ。

言葉にすれば…また起こると、不吉だとでも言うように


反省室での事については思い出したくないと、

なにもなかったと三人のなかでは今でも暗黙の了解の案件だ。





「うん…その後は上手くやれるようになったけどね。

で、オリゼは気付いてるのか知らないふりしてるのか分からないけど…医務室で横たわってる姿、それを見た時の焦り様は…噂は当てにならないね?」


「ああ…思わず二度見した。

オリゼは見もしなかったな…多分、兄の多忙さも知っててそうやって突き放したんだろ?内心では尊敬して背中を追って、裏で努力してるのにも関わらずな」


「うんうん、素直じゃないもんね…

僕らが面会はここまでって追い出された後、扉の前で聞き耳たててたら…ふふ」


「"兄上が見舞ってくれた…頑張らないと"…だったか?

それも嬉しそうに言ってたよなあ…」


「ちゃっかり本人にも聞かれてたしね?

俺らの後ろで聞き耳たててるんだもん…意外な一面にもほどがあるよね?」

「…ああ、目配せされて付いていけば、  

こんな弟だが宜しく頼むって…頭まで下げて…

あの時と同じ人間かと…あんな優しい顔もするんだなって思った」




「本当、それ。

オリゼは皆に想われてるよね…心配されてるとも言うけど」

「俺らを含めてな…」



目をオリゼに向け、

会話をやめたラピス


それに倣って未だに剣を振り続けている姿を二人して

また眺めることにした





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