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殺陣2




チャキ…


「…ああ、勝負あったな。しっかし、手抜きしないお前とやれるなんて…思わなかった」


長い時間にも感じられた

だが、数十秒に満たないことを頭の何処かで分かっている

漸く退かれた剣先

オニキスが鞘に戻す音が鳴り響いた…




「…っ…は…ご満足…頂けましたか?」


「楽しかった、本当に…」


茶化すように敬語を使えば、

苦笑で返すオニキス…

なにか言いたげだが、

ただ苦笑を返す…


本気で剣を振るったのなんて記憶の限り、俺にはない

自分自身…

あの教授の荒療治がこんなに効くなんて…

凄く驚いているんだから…


何かあったのかと、

きっと心配と興味が入り交じった苦笑に

ただ…困った、苦い笑みで返すしか手段は残っていない




「二人とも…何見つめあってるの?」



「…ああ、何でもない」

「見つめあってなんてない、ラピス」



拗ねたか?

そう目配せした後、倒木の方に歩いていくオニキスに続いて俺も向かう






…疲れたな

オニキスとは逆側に、

ラピスを挟んで座り込んで…まだ荒い呼吸に自嘲する


体力がないのは問題だな

これから中学年になれば殿下の活動範囲、

学園の行事も増える…

自身の活動に加えて侍従の業務と金策、今まで通りの学業にも手抜かりなくやるには…



寝込む暇はない

体調を崩さないためにも


夜にでも走り込みでもするか…ここなら剣の練習も出来る

野草も摘める

灯り取りには…火の魔方陣に魔力を注ぎながらやれば

一石四鳥

教授の課題にも、将来のためにも…


「…っ冷た!!なにするんだ!」



首に冷たい感覚

先ほどの剣先の冷たさも忘れる間も無くそんなことをされれば

条件反射的に体が動いた


手で払ってしまった…

目の前に転がる銀製のカップ

冷やされたそれは、

オニキスにもだが…慣れない剣の相手を終えた

俺の為に準備してくれていたものに違いない



顔をしかめていると

転がったカップを拾い、

戻ってきたラピスが砂を払って水ですすいでいる…




「何考えてるの?オリゼ、そんな顔して」

「…悪い」


「とりあえず水、ほら飲んで」

「ああ…」


再度差し出されたそれ

今度こそ手でしっかりと受けとり、一気に煽る

喉が痛くなるほど呼吸が苦しかった、

熱をもった患部が冷やされるように…喉を通る冷水が楽にしてくれた



空になった

…それを返せば直ぐに注ぎ直し、突き返してくる


「…はい、おかわり要るでしょ?」





「…ラピス。手、大丈夫か?」


無言で受けとりながら、

今度は含むようにゆっくりと飲む

少し落ち着いて…漸く口を開いて、聞く


カップを払った

手は変に筋を違えていないかと





「大丈夫、ほら…

からかった僕も悪かったし気にしなくて良いよ?」


ちらりと目を向ければ手をヒラヒラとさせて…

気にしなくて良いなんて…



「悪い…オニキス、診てやってくれ」


そんなラピス越しに見えたオニキスに頼めば、

やはり…呆れた顔をしている


「ラピス、見せろ」

「…大丈夫なのに、ああ見えて結構オリゼは心配してくれるよね?」



俺に背を向け…オニキスにすんなりと手を差し出す

そのラピスに溜め息を一つ

それを既にカップを置いていたオニキスが

手を取って触診していく



「何も問題ない」

「でしょ?」


「…悪い」


怪我させたらと、

…その可能性があったことに謝った



「普段の天邪鬼は何処いったの?変なところで心配しすぎ。

…まあ気にするオリゼを僕は好きだけどさ、

ちゃんと反応したから問題ないんだよ?ね、オニキス」

「だな…」


そっぽを向いていれば…

二人で笑っている声が聞こえる

言われてみれば必要なかった、

ラピスの反射能力…スピードには俺は勝てない。

それを失念して、ただ心配してしまった…徒労だ


それも、

天邪鬼ではないと笑われる始末

ちっ、心配等しなきゃ良かった…



「…お前ら」

「なーに?オリゼ」


「何でもない」

一睨みして…

まだクスクスと楽しそうに笑っている悪友にカップを押し付けてから立ち上がった



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