調整33
「…ラピス様」
「此方に来なさい、ルーク」
「はい…」
「ルーク、どういうこと?」
「申し訳ありません」
「確かに勝手は許したよね、でもここまでは許可した覚えはない」
「…勝手をして…申し訳ありませんでした」
傍に来たルーク
ラピスに膝枕された俺の視界にもその姿が映る
「ルーク。もしや…もしや"勝手"に枷を外すことも含まれると汲んだとは言わないよね?そんな侍従に今後仕事を任せる気は更々ない。今までお疲れ様」
「御許しを…どうか」
「二度までは許すよ、
俺を心配して勝手なことをしたり…オリゼを庇ったことまではね。
ただ、主人の意を勝手に解釈して惚けるような侍従を持った覚えはない」
「…申し訳、ありません」
「で、どっち?解釈出来もしない無能なのか、命令違反をしたのか」
「…命令…違反です」
「そう…どちらにせよ罰は与えるけど…解雇する前にね」
「っ勿論…でございます…」
最早何時もの精彩さはない
項垂れて生気も失ったルーク
意地だろうか、矜持だろうか…
侍従としての姿勢は辛うじて保ってはいる
それが後数えるほどの時間であろうとも
未だ、ラピスの侍従である誉れ
とっくに解雇は決まっていると言われても、
それを体現している様は…見ていて痛々しい
「ラピス…」
「なに?オリゼ」
「…庇う訳じゃないが、お前に害が及ぶようなことルークはしないだろ…例え憚ったとしても、命令違反したとしても」
「…普通ならどんな理由であれ、それだけで解雇する」
「分かってる、二度許すのも特例だ。俺だって端くれとは言え侍従だ…嫌でも知ってるよ」
「ならなんで?」
「…俺に免じて許してやってくれ。
楽になることを優先して抵抗しなかった俺も悪い」
何が"上手く立ち回りますので"だ?
俺にラースから戻せと画策したのがばれているじゃないか…
朝、ラピスが起きる前に枷を繋ぎ直して憚ろうものなら…
三度目ならず過ちは四度となる。
多くても提言したことと、枷を外した事
この二度までだと、そう思っていた。
だから…安心していたのに
これじゃあ俺が思っていたのと前提が違いすぎる
馬鹿な真似しやがって…
「ふふふ…可笑しな事を言うね。
録に抵抗しなかった?出来なかったの間違いでしょう?」
「それでも、だ」
厳密に言えば…最終手段はある
魔力を爆発させれば、金属製でないこれ等を外すことはできる
自身の皮膚もズタズタにはなるのだろうが…
それが分かった上で
俺が自傷行為をしてまでしなかった理由
ルークを解雇するまでに至らすならば
爆発させていたと。
今からでも抵抗して見せようかと、爆発させるぞと…証明しようかとそれを含ませた上で
格好のつかない体勢で、ラピスを見上げ睨み付ける
「分かった…負けた、今回だけだよ?」
「感謝する、ラピス」
暫く見つめ合った末、
漸く根負けしたラピスから言質を取れた
俺が出来ることはここまでだ…
後は手前でなんとかやってくれと、目を閉じる
そもそも…許す気がなければ
こんな朝早くベットから起きては来ない
普通なら侍従が来るまでは横になっているはず
手間をかけさせないように…
それが普通であり、普段優しいラピスもそうしている筈だ
ルークにこれ以上は過ちを犯させないように
…何だかんだ、優しいし甘い
だから背を押した
本当に信頼を失っていれば
俺の言葉にも耳を貸すはずはない
解雇するといった時点で
罰も受けさせない
ここに留まることすら許可はしないだろう…
「で、まだ俺の侍従でいたい?」
「勿論です…御許し頂けるならば今後もどうか…どうか仕えさせて下さい」
二人のやり取りを聞きながら
全く足りていない睡眠時間を補填しようと、身体が眠気に包まれていった




