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風邪を引かないように

肩までしっかりと整えながら返答を待つ



「…ルーク、オリゼの好きなもの知ってる?」


「美食家…であることは耳にしております」



「それもそうだけどね、惰眠が好きなことも知ってるよね?」


僕らがよく、オリゼを起こしに行ったり

迎えに行ったりするのは朝が弱い事と二度寝、三度寝…を止めない限り布団動こうとはしないからね…


ルークも頻繁に呼びに行かせていたね?

…今は、出来なくなったみたいだけど




懐かしそうに、

少し苦い顔をしながら思い出すように呟く主人



「…ええ、中々起きて来られませんでしたね」


急に何の話だろうか…

そう思いながら、過去の記憶を辿り答える


サイドテーブルの上のランプに火を入れる

小さいながらも、その温かな調光が主人のお気に入りだ



「特に、お気に入りなのは毛布とタオルケット

冗談で昔、オニキスと部屋から盗んだことがあったんだ」


「ええ」


「それも、燃やしたんだよね

…あの時はオリゼにムカついてさ。

ルークには嗜められたね、"名前呼んでも無視されるし、口を聞いてもくれなくなった!"って…

…オリゼに許して貰うには、どうしたら良いか聞いたらさ」



「…ええ、そんなこともありましたね」


靴を整え、衣服を畳みながら、

主人の話にクスリと笑いながらも耳を傾ける





「…何が言いたいのか、未だ分かっていないでしょ?

単に、思い出話をしたかったのもあるけどね」


「…お教え願えれば幸いです」


部屋を整え終え、

ベットサイドに膝をついて答えを乞う




  

「つまりは…タオルケットでもあれば、少しは安心して眠れるんじゃない?まあ、勝手は許さないけどね」



「…ラ…ピス様」


合点がいった。

いってしまった…


あの状態で寝るのは辛いであろうと心配するのならば、タオルケットでも掛けてこいと…

ただ、主人の意向は"なにもするな"

呼吸困難の場合にのみ、対処しろと言われている



「知ってるよ…

オリゼになにかしらお願いしてたのも、

ルークに心配や迷惑かけたのもね。

想像はつく、ラースになったまま僕が戻ってこないとでも思ったんでしょ?

僕を戻してってでも頼んだ?

オリゼがあんな風にラースをやり込めたから、ラースが逃げたんだよ…仕方なく表に戻ってきたけどさ。何かしらの意図は感じられたね、オリゼがああやって動くときは理由があるんだけど…それを利用したね?」



「…ご明察です」


「今まで負担かけたと思うならって、責めたんでしょ?俺を戻すことを交換条件に水に流すとでもオリゼに交渉した?

そして、それが俺にバレないとでも…思ったの?」


「っ…ラピス様」


「ねえ、思ったの?」



「…はい、恐れながら」


「お陰でオリゼに対して手加減できなくなった

ラースなら、まだ甘い。直情的に責めても、死に至る程度でなければ身体的な痛みにはあいつは強いしね

だから代わっていたのに…計画を崩したね?」


「…申し訳…ありません」




「その結果、オリゼは今の状態になったんだけど…

ルークの望みを叶えた犠牲にね?」


主人の意向にも背いたのは、

もう分かっているだろうけれど


そう付け加えられた





つまり…

この会話の流れが意図することは…

用意された答えは一つだけだ…


「…ラピス、様

私に更なる勝手を許しては頂けないでしょうか…

意に背いた罰は…後でまとめて受けさせてください」



「ふふふ…良いよ?

オリゼのために用意してあるやつ、出してやって。

多分、深いえんじ色のやつが良いと思う」


「…ありがとうございます」


「直って良い。

ルーク、明日の起床はいつも通りで。

部屋で朝食は取る、オニキスにもそう連絡しといて」





「畏まりました」


床に侍ったいた体を起こせば、

布団から出した手で追い払うような仕草

滅多にしない侍従への粗末な扱いに…許されていないことは自明だ




「お休みなさいませ、ラピス様」


部屋の電気を消し、

指示通りに部屋を辞した


いつもなら返ってくる…

就寝の挨拶と労いの言葉は勿論のこと、

…たった一言すら掛けては貰えなかった




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