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「ん?」


「…俺に…着けてくれないか」


「なにを?」


「ぐっ…口枷を…着けて欲しい」


「足りない」


万年筆を置き、紙面から漸く目を離す…

続く言葉を待つように、それを手に取り扱うラピス




「…購わせてくれ、お前を心配させたこと。

省みなかったこと…だから…お前の手で反省させてくれ

…っ…頼む」


軽く下げた頭



「良いねえ…可愛いよ、オリゼ」

「…」


「これはね…僕が試験的に作ったものなんだ

昨日の着用感を見て手を加えた…より効果的になるようにね」


「」

昨日とは違う

被されたそれ。


手際良く…それでいてゆっくりと着けられていく


その圧迫感、

じわりじわりと真綿で首を絞めるように追い詰める手法

対象が俺でなければ…

仕事の手腕が良いと、そう褒めても良いものだろう





「ん"…ふっ…」

「動かない。オリゼが望んだことでしょう?

なんで抵抗するのかな…ね?」


首を軽く触られ、

思わず身動ぎすればすぐに制止される

執拗に時間をかけて首のベルトを締める

その手は丁寧ながら動きを制限するもの…

酷いもんだ、

緩みを確認する指が引いて…

最後であろう金具が鳴る音がカチリとやけに耳についた





「さて、終わったよ…

あれ?もしかしてオリゼ…被虐的になってるの?

目が溶けてる…拘束感に酔った…いや、倒錯したのかな」




俺の心情を知ってか知らずか、上げさせられた顔を覗き込むように見てくる

物理的にも心理的にも答えられもしない

それが分かった上での質問




目を背ければ、


本当反抗的だなあとボソリと呟かれる

窺えば…気に触った様子はない

その口元は弧を描くように満足げだ



なんだって言うんだ…

俺がそんなに折れたのが嬉しいのか

こちとら疲労困憊だ

耐えきれず、目の前のソファーに顔を埋めるように倒れ込んだ


意外にもそれを咎める事はされなかった






「失礼します」


「ルーク、ありがとう」


暫くして…

間が良いのか良くないのか、ルークの入ってくる音


自意識過剰か

…視線が背中に刺さる気がする





「…スモークサーモンのパテとカナッペ、紅茶をご用意致しました」

「うん、良いね。暫く書類の続きやるから、構わずに退出してて良いよ」


「畏まりました」

紅茶の良い香りが立ち込める

その匂いを深く吸い込む



俺に構わず、

万年筆の紙を引っ掻く音が続く

時折途切れ

クラッカーを咀嚼する音と紅茶を注ぎ足す水音


心地良い生活音に耳をやっていると

微睡んでくる

…このまま寝てしまえば良い









「!…ぐっ…ぅ…」


「オリゼ、なに気をやってるの?

…もしかして反省もせずに寝ようとしてた?乗馬鞭でも用意すべきだったかな…ね、オリゼ?

ま、拷問じゃないし…匙加減としては、この辺で丁度良いと思っていたけど足りなかった?」




背中を叩かれる感覚に意識が覚醒する

それを宥めるように撫でる手に一度力を抜くも…

びくりと反射的に動く体


首のベルトに指を引っ掻けて後ろへと引っ張られる

殆ど緩みのないそれに

指一本分が差し込まれれば…

当然喉仏に食い込み、締め付けられる



呼吸が浅くなる

抵抗らしい抵抗も出来ない

体を引こうとしても、動きはしなかった



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