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そうだ…

あいつと朝も一緒に食べるんだった


起きて、

その思考に辿り着けば気分が直ぐ様落ち込んでいく

着物を着たまま昨日は寝てしまった様だな

少し皺になったそれを脱いで、替わりに制服に着替える


気が重い…

扉越しに呼びに来たビショップ

すぐ行くと追い返し、身支度を手早く終わらせる


髪を…櫛梳ってから気づいた

身嗜みがなっていないと言われようが仕方な…

いや、どちらにせよ怒られるな

怒られるならば…その数は少ない方が好ましい



麻紐以外に何か結わえる物はあったか…

布切れは流石に駄目だ


…ならば答えは一つ

パラコード


バックパックから引きずり出してサバイバルナイフで切る

丁度良い長さのそれで髪を括る

…これでいい




書庫から借りた教本をすべて詰め込んだ

いつもより二倍ほどの重量か


肩掛けは肩に食い込んで、痛い…

昨日のラッセのせいで更にダメージがある上に、だ

仕方ない



一度、寮に戻る暇があるならば

昼飯をさっさと終えて

選択講義前までの間、予習復習に当てたい…


あの静かで落ち着く…

木造の選択講義棟は今では唯一、心安らぐ場所となっている


気乗りしない

ただ、動きは止めない



長い一日を思ってため息をつき…

オニキスの部屋に向かう為、部屋を後にした




滞りなく朝食は済んだ…

オニキスの疲れきった顔と、妖艶な笑みを浮かべるラッセ

少なくとも殺伐とは…していなかった


ぐったりとしたオニキスと教室に向かえば

やはり予習が足りない

復習もやはり充分ではなかった


仕方ない、か

理解が曖昧な部分は後でやろう…

講義の反省をしながら

食堂に向かう途中、書庫に続く道に入る





…居て欲しくはなかった

願いはやはり届かなかった様だ


入り口付近…

俺を認めたベリルがニコリと笑いかけてきた


「…返却と延長をお願いします」


「延長は選択講義の教本で宜しいですね」

「はい、後は…前回言われていた本と侍従の入門レベルの参考資料があれば借りたいです」


「畏まりました」

「それと…この教本の延長期間は長くできませんか?」


「規則ですので…残念ですが、できません」

少しだけ眉を潜めた…

その一瞬の表情の変化


「無理を言いました…すみません」


「いえ…では見繕って参りますので少々お待ちください」

「お願いします」




「…」

一度に借りられる本は10冊

…延長を含め、カウンターに並べられた本は確かに十冊ではある


…短くなったパラコードでは括りきれない

念のため持ってきた風呂敷

やはり、

持ってきて良かった…



揃ったであろう借りる本


ベリルのアイコンタクト

それに軽く頷き、右手をバックに入れ…風呂敷を手探りで取り出しながら向かう



「お待たせ致しました」

「…ありがとう、ございます」


手で指し示され、促されるままに

カウンター上の山

…手にとり一冊ずつ目を通していく




図鑑のような厚み…

色つきのイラストと薬効、利用法

民間療法…

加えて食用の調理、下処理の具体例

類似する野草の見分け方

様々な知識が…ここに銘記されている




古書

かび臭いような…それでいて落ち着く

しっとりと手に馴染む表紙を開けば…

厳格、原点とも言える侍従の仕事内容の数々


留意点、対処法

効率化の具体論

…これは分かりやすい

一見すれば気難しい指南書だが、読めばすぐに理解も実践にも移せる…

これなら出来る

…身につけられそうだ





うって変わって新品同様の薄い本

裏表紙から捲れば…

やはり最近出版されたハンドブックか…インクの匂いが鼻孔を擽る

簡潔な説明文

主な野草ならばこれ一冊携帯すれば

きっとすぐに採取も利用も出来るだろう



使い込まれた

民間療法、応急手当指南

野外における野草の活用と代用品


良本だ…

一般的に使われる医療品、医薬品の使用法

そしてその代用、代替え品足り得るもの

原料調達

簡易的な調合

…凄い

専門知識がなくても、備考欄を見れば補足が

これなら一々、分からない用語や言い回しを専門書から参照しなくても済む

これ一冊で大抵の対処は出来そうだ





続けて手に取っていくが…

どれも分かりやすい

外れがない


俺のレベルに合っている

借りた教本の内容、侍従入門書

それを鑑みて、

読む人間に合ったものを所蔵本の中から取捨選択する能力



「借りていきます」


「左様で…お眼鏡に叶ったようでなによりです」


さわやかに言われる…

推し量られた自身の知識、能力

それについて詮索しようと毒付いた思考は


…かき消されてしまった



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